第1話 序章

文字数 402文字



 そいつはいつもクラスの人気者だった。
 いつもニコニコ笑って、男子からも女子からも教師からも好かれていた。
 成績も良くて、スポーツもできて、でもそれを飾るようなところもなくて、同年代から見れば「大人っぽく」見えたし、大人から見れば「かわいらしく」見えた。
 でも、オレはコイツが気にいらなかった。
 全てが癪に障った。
 まるでそうすれば、世界から愛されるのだろう、とアピールしているように感じた。
 多分そう思ったのはオレだけだったのかもしれない。
 誰もそいつを悪く言わなかったし。ただの「やっかみ」と言うか、言いがかりだったのかもしれない。
 でもそう思ったんだ。
 ただの、大ウソつきにしか見えなかったんだ。
 だから癪に障った。
 こんなヤツに、なんでだまされてやるかよ、と。
 誰も彼も、お前の思い通りになると思うなよ、と。
 そいつを、天野そあらを、絶対泣かしてやると思った。


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