第99話 嘘エピソードをつくろう！
文字数 1,451文字
きさまからな
というか
わざわざ嘘のエピソードじゃなくても
いいんじゃないの？
なんでもかんでも嘘扱い！
だったら！
嘘でいいじゃん
むかし近所のドラッグストアでバイトしていたんだ
個人経営の小さい店でね
いまはもうない
よし
続けろ
見かけない女子高生が二人来たんだ
見かけないといっても
制服はK市の有名高校だとすぐわかる
その二人がレジのぼくにこういうんだ
と
すごいなそれ
ぼくがうろたえちゃって
あとほんとに学園祭で配るのかどうかも疑っちゃったんで
店の主人を呼んじゃった
まあ
そうだよな
女子高生二人は
さすが有名校だ
学園祭でエイズ防止の小冊子と一緒に避妊具を配布するといった目的を理路整然と説明するんだ
なんかこう
頭のいい人たちは考えることが違うんだなと思った
それ嘘なんだろ？
女子高生から避妊具もらうとか
その学園祭すげえな
あの店では避妊具は三箱で1000円だったんだ
安いからよく売れたよ
近所の知っているおばさんが買っていったりするから
なんかこう
ねえ
それ
あの女子高生二人
ほんとに学園祭で配るために買ったのかなあ
ていうか
そのエピソード
嘘なんだろ？
きっと嘘だよ
じゃあ
次の嘘エピソード
中学のときね
ぼくは吹奏楽部だったんだ
音楽室は校舎裏の別棟にある
そこは
芸術棟と呼んでいたけど
一階は理科室と家庭科室だった
部活に行こうとしたら
芸術棟の前に女子部員たちが集まって
なんかキャーキャー騒いでいるんだ
「ちょっと！ これなんとかしてよ！」
と芸術棟の玄関を指さすんだ
言動はそのときの女子部員たちを参考にしてるんだっけ
ぼくはただ一人の男子部員だったからね
いいようにこき使われていたよ
女子に押されて芸術棟の玄関に入るとな
どーん！と
牛の生首があるんだよ
すげえデカくてね
一輪車で通じるかな
土木作業で使うアレに乗せられてた
全体はビニールに包まれていた
でも
そのビニールの角には
血が溜まっていてね
生々しかった
一輪車いっぱいのデカい生首だ
ぼくでも気持ち悪くて近づけなかった
頭ではわかっていても
じっさいに目にすると無理だよあんなの
思い出してもなんかこうぞわぞわする
嘘エピソードだよな？
「牛の首」ってだけで
みんなニヤニヤして信じなかったから
その牛の首はなんのためにあったのさ？
普通に理科で使うためだって
そのときの騒ぎは
顧問の音楽教師と件の理科教師が怒鳴り合いの喧嘩をしてなんとなくおさまった
名前は忘れたけど
理科教師はハゲオヤジだった
嘘エピソードだよな？
どうでもいいエピソードなんだから
どっちでもいいよね
嘘といいながら事実を話すパターンか
今回は？
最初の話は避妊具の数が30箱というのが嘘
本当はもっと多かった
二番目の話ではぼくが唯一の男子部員と言うのが嘘
じっさいはぼく以外に四人いた
