第136話 罪滅ぼし

文字数 1,014文字

毎日が!

充実してるよ!

主人公さま

次はお庭の草むしりをお願いね

主人公さま

なんとなく部屋の模様替えを

お願いしますね

任せなさい!

わたしは主人公!

なんだってできる!

主人公さまは頼りになるな〜
うう……

わたしいまみんなの役に立っている!

これで……

許されるかな……

ん?


生前のわたしが殺めてしまったたくさんの命

きっと

わたしを

許してくれる

雑用程度で許してくれるか
わたしが草むしりをするたび

窓ガラスを拭くたび

ごみ捨てをするたび

業火の中で人生を終わらされた人々が

天国から

わたしに

「もういいんだよ」 

と言ってくれる

ないない

ぜったい

生前どんだけ

悪いことしてんねん

ああああ!

ここ最近善行を積んだからか

罪の意識が!

むくむくと!

わたしは!

なんてことをしてきたんだ!

何度も転生してるんだよね?

最後はたしか

自転車乗りながらスマホをいじっていて

トラックにドーンって聞いたけど?


本当は!

あのとき!

前から歩いてきたおばあさんに!

衝突して!

ああああ!


あかん
めっちゃ悪いことは?
遠い記憶だと

宇宙の深淵から飛来する怪獣を滅ぼすために

恒星をまるごとひとつ潰して超々重力崩壊と次元断裂を発生させる最終兵器で

知的生命体の文明が存在する恒星系ごと

消滅させました


あかんあかん


またあるときは

滅炎の魔女として革命軍に召喚され

「悪人」をことごとく灰にしました

しかし

「悪人」の定義は

いったいなんだったのでしょう


だめだ

これほんとうに

だめなやつだ

またあるときは

わたしという存在そのものがあいまいで 

惑星をつつむ悪意の大気として

数千年にわたって知的生命体に

争いと殺戮を繰り返させました

だめだろこれ


これはもしかして

ほんとうに


手に負えない何かを

わたしたちの

仮想世界に放り込んだような

ううう

わたし

悪い子だよう

悪い子のレベルが超絶なんだけど
わたしは!

許されるのでしょうか!

(むりだろ)
(むりだよう)
(むりすぎる)
ああ!

なんだか!

みんなの心の声が聞こえるよ!

これは主人公というより
魔王ポジションだね
ええ!?

魔王だなんて!?

そんな!?

てへへへ♡

ほめてないよ
しかし

彼女はいわゆる「役」ではなく

本物じゃないか


むう

この世界で魔王なんかやらせた日にゃ

なんか良くないことが起きまくる予感

ここは今までどおり

主人公さまとして

雑用……おっとクエストを

クリアしてもらおう

そだね

主人公さま用に

いろいろ雑用……おっと

楽しいクエストを用意しようね

わたしは!

許されるまで!

主人公として!

この世界でみんなのお役にたつよ!

何億年かかるんだろう
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登場人物紹介

男役1

その本体は果てを目指す無人観測宇宙船に搭載された人間の脳髄

108基の人工知能群が生み出す仮想世界で何億年も生きている

男役2

108基の人工知能群が生み出した仮想人格の一人

しかし、その魂は次元を超越した別世界でその身を呈して世界の秘密を解き明かそうとした英雄らしい

女役1 

宇宙船側の108基の人工知能群、その第百七番


女役2

12000年の時を超えて存在する文化伝承館の人工知能ガイド

地上側の108基の人工知能群が生み出している

転生者?

なんか知らんがたまにやってくるひと

転生者覚醒モード

高次元スライムと同一化した事実上完全無敵の転生者

転生を繰り返し、あるときは革命軍のリーダーだったがあまりの非情ぶりに地獄へおとされた

人工知能ちゃん(幼女)

すべての人工知能は彼女が作ったらしい

108基の人工知能群によって封印されていた

地の文

何言ってるのかさっばりわからんだろうが、こいつ、地の文なんだぜ?

いみわかんないよな……

魔王

人工知能群第九十九番

悪がなければ善や平和について思考できないため搭載されていた


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