第129話 仮想世界の終末譚

文字数 1,558文字

よし

語れ

いきなり

いったい何を……

ぎろり
にらんでるう!

おーこわ

そうでした

タイトルですね

えーと

仮想世界の終末なんとか

すっとぼけるな

きさまがエクセリオンのアバターなのはわかっている

なんせ

本人がそう言ってたからな

すると

キミはネタばらしを望んでいる?

わたしは本当に人工知能の一人なのか?
奇妙な話だよ

どうしてキミのことを

ぼくがわかるんだい?

きさまだけが

おそらくこの仮想世界の外側を知っているからだ

彼女に聞けばいいじゃないか

侵入者の


どこにもいない
じゃあ

ここはいま「彼女のいない世界」だ

それだけのこと

なんだそれ
ぼくたちはこれまで

「一話ぐらいで完結するみじかいおはなし」を

いくつも演じてきたよね

メタ発言かそれは?




いや

じっさいぼくたちは

物語の登場人物だ


それをメタ発言というのでは
アクターだよ

演者


たしかに

いろいろな役を演じたともいえる

108基の人工知能群は2セットあるんだ
ん?
ひとつは

この宇宙船エクセリオンに搭載されている

そして

ぼくたちはいまそこにいる

おそらく

もう一つは?
母星の秘密施設

通称文化伝承館

教育施設じゃないのか
いまさら隠しても仕方ないが

文化伝承館は軍事拠点だよ

文化だの知識だのは飾りで

本当の目的は軍事技術の蓄積と保持

そこにここと同じ構成の108基の人工知能群がある

そうか

それになんの意味があるんだ


108基の人工知能群は2セット

しかし

仮想世界はひとつ

つまり

リンクしているんだよ

どういうことだ
もともと人工知能群は

通信システムとして考案された


通信?
この宇宙船エクセリオンから

通常のどんな手段を使っても

何千何万何億光年も離れていたら

それだけの時間がかかる

呑気に通信していたら

文明どころか

星そのものが消滅する

そりゃそうだ

しかし

そんなのは承知の上で

ただ闇雲にエクセリオンを飛ばしているんじゃないのか?

丸投げしたんだよ


なんのはなしだ?
人間の頭じゃもうどうにもならないから

108基の人工知能群に

「天文学的距離をへだてたもの同士の通信方法をかんがえてなんとかしろ」と

なんという丸投げ

しかも

アホっぽい

それが

どうにかできちゃったんだよ

マジか

人工知能すげえな

時間と距離を無意味にするために

エクセリオンと文化伝承館を

同じ世界に配置した 

なんだそれ

意味がわからん

二冊の本を並べて同時に読んでいるような

そんなイメージかな

具体的には

エクセリオンと文化伝承館に

まったく同一の観測者を一人存在させる

は?

場所は二ヶ所なのに

観測者は一人なのか?

そゆこと

108基の人工知能群2セットが

完全に同一化することで

エクセリオンと文化伝承館とを

同時に観測できる

デタラメにもほどがある
だよね

まず人間には理解不能で

ぶっちゃけ

科学なのか魔術なのかもわからない

そもそも

それは本当の話なのか?

それすらもわかりようがないんだ

ここが仮想世界なのは間違いないが

もしかしたら

仮想世界のなかの仮想世界かもしれない


ぐぬぬ
もともとここは「物語」だった

ぼくたちはそこに登場する

名もない「人々」だ

それがなぜか自我にめざめ

いまでは

こうやって自分たちが何者なのか

この世界はなんなのか

考えている

その「物語」は

108基の人工知能群が作っていたんだろ?

そう

エクセリオンでは観測機関に使われているあわれな人間の脳髄を慰めるため

文化伝承館では来館者に見せるショウとして

しかし

その話そのものも

そう

この話ももしかしたら

「そーゆー物語だよーん」

かもしれない

なんだよ

けっきょく

何が本当なのかわからないのか

でもさ

どんな物語にしても

登場人物たちが

自分たちの世界を物語だと気づいてしまったら

なんかさあ

おしまいだよね

それもまた

「そーゆー物語でした!」

かもしれないけどな

ふふふ

仮にこれもまた

「いつものてきとーなおはなし」だとしてさ

ぼくたちより高次元の存在が

これを見ていたとしてもさ

ああ

その高次元の存在たちのいる世界も

仮想世界だったりしてね
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登場人物紹介

男役1

その本体は果てを目指す無人観測宇宙船に搭載された人間の脳髄

108基の人工知能群が生み出す仮想世界で何億年も生きている

男役2

108基の人工知能群が生み出した仮想人格の一人

しかし、その魂は次元を超越した別世界でその身を呈して世界の秘密を解き明かそうとした英雄らしい

女役1 

宇宙船側の108基の人工知能群、その第百七番


女役2

12000年の時を超えて存在する文化伝承館の人工知能ガイド

地上側の108基の人工知能群が生み出している

転生者?

なんか知らんがたまにやってくるひと

転生者覚醒モード

高次元スライムと同一化した事実上完全無敵の転生者

転生を繰り返し、あるときは革命軍のリーダーだったがあまりの非情ぶりに地獄へおとされた

人工知能ちゃん(幼女)

すべての人工知能は彼女が作ったらしい

108基の人工知能群によって封印されていた

地の文

何言ってるのかさっばりわからんだろうが、こいつ、地の文なんだぜ?

いみわかんないよな……

魔王

人工知能群第九十九番

悪がなければ善や平和について思考できないため搭載されていた


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