第88話 マッチ売りの少女売りの少女

文字数 1,561文字

マッチ売りの少女〜

マッチ売りの少女〜

マッチ売りの少女はいらんかね〜

マッチ売りの少女売りか

もうそんな季節なんだな

兄さんわかってる人だねえ

ひとりどうでえ


しくしく

どうかわたしを買ってください〜


うーん

どうしようかなあ

これからどんどん寒くなる

雪だってふらぁ

北風ぴゅうぴゅう吹く寒空の下

粗末な薄着

ボロの靴

手袋なんかあるわけねえ

かじかむ指先をはあはあしながら

道行く淑女紳士たちにこう言うんだ

「どうかマッチを買ってください」ってね

もちろんだれも買うわけねえ

マッチが売れなきゃ帰れねえ

帰ったところで待ってるのは冷たいスープにかたいパン

かっー!

不憫不憫

まったくこの世は理不尽さ

いいねえ

たまんねえな

ひーん

ひーん

お客さん

じつはこの娘が最後のひとりなんでさあ

買うなら今しかないよ?

よし

買った!

まいどあり!


わたしを買ってくれてありがとう


キミはマッチ売りの少女族かい?
はい

マッチ売りの少女族の末裔です

しかし

本当は違うのです

違う、というのは?
わたし

本当は未来から来たロボットだったんです

未来

ロボット


ある人物を抹殺して歴史を変える任務だったんですが

過去の世界にはすっぽんぽんで現れるため

すっぽんぽん
出現地点に運悪く暴漢たちがいまして
襲われた、と?
いえ

こちら殺戮ロボットなんで

返り討ちにしてくれようとしたところ

殺戮ロボット
そこへ赤信号を無視したトラックが

突っ込んできまして

赤信号

トラック

殺戮ロボットなんですが

攻撃力全振り

防御力ゼロだったもので

即死というか全壊しまして


全振り


気がついたら異世界に

人間の女の子として転生していまして


異世界

転生

それが人間としての初代のわたしです
初代
初代のわたしはもとが殺戮ロボットでしたので

心がなく

ただぼんやりとさまようばかり

しかし

人間であるがゆえ空腹に耐えきれず

倒れたところを

あるおかたに拾っていただきました

あるおかた
フェアディエン・ルモデラ様です
フェなんとか
彼は心優しい王でした

争いを好まず

平和な国家を望んでいました

ところが

フェアディエン様のお気持ちなど国民がわかるわけもなく

王国は堕落と傲慢の都となりました


あの

これいつまで続くのかな?

ラノベならまだプロローグですよ?
キミが登場するのは?
ラノベ換算で5巻のラストぐらいですね
長っ!

はしょって!

はあ

フェアディエン様はなんだかんだて魔王となり

神の国から火を盗みました

原子の火です

原子の火
初代のわたしは 

魔王フェアディエン様の妻となり

七人の子を生みました

すなわち

荒ぶる大海の王ネプトラーディ

静寂なる森林の姫ウタンラーディア 

常闇の

わー

とばしてとばして

ながきにわたりこの世界を支配した魔王フェアディエン様ですが

ついに忌まわしき勇者によって永劫の闇へと還りました

初代のわたしもまた勇者によって封印され

とばして!

とばして!

わたしの一族は魔王の直系として

罰をうけました

すなわち

神の国より盗んだ火を売るだけの貧しい一族です

しかし

もともとは原子の火

マッチ程度の大きさでも秘められた力は尋常ではなく

ごく稀に情けで買ってくれた人が

その扱いを間違い

地上は幾度となく汚染されました

危ないマッチだなあ
それは昔の話で

わが一族は最終的に

対消滅マッチまで開発しました

コレがそのレプリカです

本物はこの大陸ごと吹き飛ばしかねないので空気中には晒せません

そんな危険なものを売るの!?


はい

マッチ売りの少女なので

仕方ありません

それに

遺伝子に刻み込まれた

かつて殺戮ロボットだったころの

冷酷さもうっすらと残っていますので

ぶっちゃけ 

惑星ごと消したい

そんなキミがなぜあんな

マッチ売りの少女売りの少女の言いなりになってるんだ?

彼女こそ理不尽なる人類の勇者

その子孫なのです

だから

わたしの一族は逆らえないのです

そうか

わかった

じゃあ

さっそく


はい
マッチ売ってこい

全部売るまで帰ってくんなよ

がはははは

えー
※あぶないマッチは売れませんでした
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

男役1

その本体は果てを目指す無人観測宇宙船に搭載された人間の脳髄

108基の人工知能群が生み出す仮想世界で何億年も生きている

男役2

108基の人工知能群が生み出した仮想人格の一人

しかし、その魂は次元を超越した別世界でその身を呈して世界の秘密を解き明かそうとした英雄らしい

女役1 

宇宙船側の108基の人工知能群、その第百七番


女役2

12000年の時を超えて存在する文化伝承館の人工知能ガイド

地上側の108基の人工知能群が生み出している

転生者?

なんか知らんがたまにやってくるひと

転生者覚醒モード

高次元スライムと同一化した事実上完全無敵の転生者

転生を繰り返し、あるときは革命軍のリーダーだったがあまりの非情ぶりに地獄へおとされた

人工知能ちゃん(幼女)

すべての人工知能は彼女が作ったらしい

108基の人工知能群によって封印されていた

地の文

何言ってるのかさっばりわからんだろうが、こいつ、地の文なんだぜ?

いみわかんないよな……

魔王

人工知能群第九十九番

悪がなければ善や平和について思考できないため搭載されていた


ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色