第55話 おれおれ詐欺

文字数 2,122文字

というように

折り鶴一羽ごとに1円の収入が得られます

ここまでの説明はご理解いただけましたか?

正直

あまり魅力がないですね

一羽1円だと

1000羽折ってやっと1000円ですよ


おっしゃる通りです

しかし

これはあくまでも自分で折る場合の話です

と言いますと?
誰が折ったのか

こちらでは一切問いません

いやいやいや

他人に折ってもらうなんて

そっちのほうがむずかしいよ

ぼくには無理だ

さらに言いますと

折る必要もありません

は?
こちらの用意した千羽鶴折り紙を

500円で購入していただければ

1000羽折ったとみなし

1000円を支払います

おかしい

それじゃそちらが損をするだけだ


わたくしどもは

善意のマッチングを行うサービスです

マッチング?
千羽鶴よりお金を! 

と叫ばれるような時代です

じっさい

千羽鶴では心しか伝わりません

最近は聞かなくなったけどね
だからといって

お金のない

たとえばこどもたちは

黙っているしかないのか

それも悲しいではありませんか

心は大切だよなあ


また

企業は寄付金としてポンとお金さえ出せばいいのか

そこに心はあるのか

気持ちというか企業イメージというか

どんなんだろうね

家庭の不用品やゴミを

ここぞとばかりに送りつける例も

まったくないわけではありません

つまり

どういうこと?

協賛していただける企業や団体は

わたくしどもにおくられてきた

千羽鶴の数に応じて寄付金を決めます

具体的には

千羽鶴ワンセットにつき10万円

千羽鶴が多ければ多いほど

寄付金が増える、と

これによって

寄付する金額の理由にもなりますし

いくら寄付すればよいのか考える必要もなくなります


世間から責められがちな千羽鶴が

寄付金にかわるというシステムか

そしてわたくしどもは寄付金とはべつに

キャンペーンの参加費や広告費などから

利益を得ます


さっきの折り紙を売るのは?
はやい話が千羽鶴の水増し用です

万が一千羽鶴が集まらなかった場合でも

こちらは販売した折り紙の枚数を

千羽鶴としてカウントします


ああ

そういうことか

わたくしどもとしては

折り紙を買うことであなたが得るお金も

寄付していただきたいところですが

そこは明言いたしません

ああ

察した

なるほどね

じっさいに千羽鶴を折られたときは

その分もべつにお支払いいたします

つまり

折り紙を500円で買っていただければ1000円

さらにそれを折り鶴にすれば一羽1円

そして

これはまだ申し上げておりませんが

千羽鶴完成で5000円をお支払いいたします


ええ!?

そんなうまい話があるの!?

冷静に考えてください

それだけの労力に見合うかどうか

そんなにおいしい話ではありませんよ?

いや

でも折り紙を買うだけでもいいんだろ?

折り紙10セットを5000円で買えば

一万円が戻ってくるんだろ?

これじゃみんなが買うんじゃないか?

そこなんですがね

これは誰でも参加できるわけではないのです


え?
あなたは運がいい

抽選はランダム

あなたは当選したので

このキャンペーンに参加する権利を得ました

そうなの?
ただし、キャンペーンの趣旨を理解して

参加費をいただければの話です

ええ……
わたくしどもは善意のマッチングです

一部の人の利益のために活動するわけではないのです


うーん

ちなみに

参加費はおいくら?

一口一万円です

その一口で折り紙を20セットまで購入できます

ん?

元がとれるような

ええ、まあ

そのあたりはようするに形式だけですからね

大きな声では言えませんが

ふふふ

ちょっと考えさせてもらってもいい?
申し訳ないのですが

こちらの用意した折り紙の在庫の都合上

参加いただけるのは計算上

あと数人なんですよ

もしかしたら

すでに埋まっているかもしれません

……確認してみましょうか?

ああ

うん

いちおう

それでは少しお待ちください

…………あ

すみませ〜ん

定員いっぱいでした

ほんと

ごめんなさい……

もう少し早ければ……

はあ

そうですか


ほんと申し訳ないことです

貴重なお時間をいただいたのに


いえいえ

興味深いシステムでしたよ

そんなご丁寧に……あ

あれ?

ちょっと待ってください!

ええと

これは……いいのかな?


ん?


ひとり分だけ空きがあるような……

どうかな……

あ!

ありました!

ええ!

なんでだろう?

誰か間違えていたのかな?


はあ
えと、どうしましょう?

一口だけなら空きがある……のかな?

あるなあ……

いますぐ決めていただければ確保できますが

ええ……

ああ……

じゃあ

とりあえずその一口を

ありがとうございます!

それではご入金なんですが

銀行振込

コンビニ払い

あと

この場で現金払い

現金払いなら振込手数料分がお得になりますが

じゃあ

ここで払います

はい

一万円

はい

確かに

本当にありがとうございます

それではこちらが折り紙セットの購入申込書になります

こちらはご入金から最短で翌日の発送になります


はーい
あとこちらは完成した千羽鶴の送付先と

あなたへお支払するための金融機関を登録していただく用紙になります


はいはい
それと

来月から大々的にキャンペーン展開しますので

それまではSNS等での発言は控えてもらえると助かります

あー

はいはい

本日はお忙しいところ

ありがとうございました

それでは

失礼したします

どうも

がんばってください


はーい
…………帰ったか
…………いいのかな?

とりあえず

もとを取るために折り紙セットを購入するか……

その後、入金しても折り紙が届くことはなかったとさ。
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登場人物紹介

男役1

その本体は果てを目指す無人観測宇宙船に搭載された人間の脳髄

108基の人工知能群が生み出す仮想世界で何億年も生きている

男役2

108基の人工知能群が生み出した仮想人格の一人

しかし、その魂は次元を超越した別世界でその身を呈して世界の秘密を解き明かそうとした英雄らしい

女役1 

宇宙船側の108基の人工知能群、その第百七番


女役2

12000年の時を超えて存在する文化伝承館の人工知能ガイド

地上側の108基の人工知能群が生み出している

転生者?

なんか知らんがたまにやってくるひと

転生者覚醒モード

高次元スライムと同一化した事実上完全無敵の転生者

転生を繰り返し、あるときは革命軍のリーダーだったがあまりの非情ぶりに地獄へおとされた

人工知能ちゃん(幼女)

すべての人工知能は彼女が作ったらしい

108基の人工知能群によって封印されていた

地の文

何言ってるのかさっばりわからんだろうが、こいつ、地の文なんだぜ?

いみわかんないよな……

魔王

人工知能群第九十九番

悪がなければ善や平和について思考できないため搭載されていた


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