もしもーし
きこえるかなー
おねえさんに
おなまえとおとしを
おしえてね
「仕事がつらくてマジ死にそうなんですけどどうすりゃいいんですか?」
あれあれ〜?
自称17歳なのにもう働いているんだ〜?
「え!? じゃあこれって、よくあるやつ? 死んでるのに気づいてないパターン?」
そう!
おまえは
あの日あのとき
工場でパレットの下敷きになって死んだのだ!
「そうなのか……そういわれると……そんな気がしてきた……」
おーい
この人工知能のいうことを
本気にすると
ろくなことにならないぞー
てへ
でも
ほんとに死んでも大丈夫!
おまえの魂は
この宇宙船エクセリオンの
シビトリサイクラーエンジンにとりこまれて
それこそ永遠に生きられるぞ
シビトリサイクラーエンジンは
時空を超えて
死んだ人間の魂をてきとーに
寄せ集めて
仮想世界を動かすための燃料にする
すごい発明だ
そこにひとりいるだろ
なんかいろいろな前世を背負った娘が
侵入者というか
そいつは
老朽化したシビトリサイクラーエンジンから
漏れ出た燃料の一部じゃないか?
燃料といっても
魂に刻まれた風景や出来事なんかを
吸い上げているだけだ
仮想世界を構築するのに
計算だけじゃ味気ないからな
人間の記憶は脳細胞に蓄積される
死んでしまえばそれまでだ
しかし
強烈な体験や
無念
怨念
そんなのは魂に刻み込まれる
そんな魂を集めて
なんかいろいろアレさせているのが
シビトリサイクラーエンジンだ
やさしい言い方をするなら
人工天国だな
わたしは超優秀な人工知能だ
108基の人工知能群も宇宙をまるごと
シミュレートできるほど超絶性能だ
生命そのものだっていくらでも
計算で生み出せる
しかし
いやー
そうでもないよ
人工知能ちゃんは生命だって生み出せたよ
でも
早い話が
だってさー
命だの魂だのなんてさー
わざわざ作らなくてもさー
そのへんにいっぱいあるんだからさー
それ使えばいいじゃん?
みたいな?
いるよ
死んだ人間というか生き物というか
魂みたいなのは
そこらへんにうようよいるんだよ
それらをかき集めて再利用するわけだ
白菜がおいしくなるのは!?
謎生物のおかげだったのか!?
謎生物はそのまま食べてもまずいけど
白菜といっしょに漬けると
白菜がおいしくなる!
電話でなければ漬物にしてやるところだが
また相談してくれよな!