第121話 七三3 内裏の局
文字数 388文字
まして臨時の祭りの調楽などの時は、いみじう面白い。主殿寮の官人が長き松明を高くともして、寒そうに頚を引っこませ行くので、松明の先はぶっつかりそうになる、楽器を吹き、笛を吹きたてて、心ことに思いたるに、君たちの、当日の装束をして立ち止まり、もの言いなどするのを、供の随身どもが、前駆の忍びやに短かく、おのが君たちの先払いに追いたるも、音楽にまじりて常に似ず面白く聞こえる。
なほ遣戸を開けながら帰るを待つに、君たちの声にて、「荒田に生うるとみ草の花」と歌いたるが、このたびは今すこし面白く聞こえるのに、いかなる真面目な人なのか。さっさと歩み出でぬる人もあれば、それを笑うひともあるのを、(君たち)「しばしや。『どうして、さっさと、世を捨てて急ぎたまう』とあり」など言えども、気分でも悪いのか、倒れぬばかりり、もしや人などに追い捕らえると見ゆるまで、あわてて出づるもあめり。
なほ遣戸を開けながら帰るを待つに、君たちの声にて、「荒田に生うるとみ草の花」と歌いたるが、このたびは今すこし面白く聞こえるのに、いかなる真面目な人なのか。さっさと歩み出でぬる人もあれば、それを笑うひともあるのを、(君たち)「しばしや。『どうして、さっさと、世を捨てて急ぎたまう』とあり」など言えども、気分でも悪いのか、倒れぬばかりり、もしや人などに追い捕らえると見ゆるまで、あわてて出づるもあめり。