第184話 125

文字数 801文字

 関白殿が、黒戸よりお出になるので、女房が隙間がないくらい坐りお迎えしているところ、(道隆)「やあやあ、素晴らしい女房の方々がおられることよ。この老人をどのようにお笑いになるのだろう」と言って、分けるようにお出でになるので、戸口の近い女房たちが、色々な袖口を見せながら、御簾を引き上げたところ、権大納言が、御沓を取って、関白に履かせたまう、とても物々しく美しい様子で、下襲の裾を長く引いて、所せましと言う感じでいらっしゃる。なんと、めでたいことか、大納言ほどの人に沓をお取らせになるほどの身分なのだと、目を見張る。山の井の大納言や、その御次の方々に身内でない方々が、黒いものを引き散らしたように、藤壺の塀のもとから登花殿の前まで、ひざまづいて並んでいらっしゃるのに、関白殿は細くて上品な姿で御刀をつくろい直されながら、少し立ち止まっておられたが、中宮の大夫様は、戸の前にお立ちになっておられ、ひざまづかれないだろうと思っていたが、少し歩みでられたとき、すぐにひざまづかれたのは、どんなにか前世の行いが良かった結果ではないだろうか、と思われ、甚だしく素晴らしいことである。中納言の女房が、命日ということで、真面目にお勤めを行っておられるので、(清少)「その数珠をお貸しください。私もお勤めして素晴らしといわれる身になりたいものです」と、借りたいといって、集まって笑ったりしたのだが、ほんとうに賞賛するほどの雰囲気でした。中宮がこれをお聞きになって(宮)「仏にでもなったならば、これよりもっと優っているでしょうに」と言われて、お笑いになったので、またも素晴らしいことだと思われ拝見したところです。大夫殿がひざまづかれたのを、かえすがえすお聞かせすると、(宮)「例のあなたがおもっている人」と、お笑いになったが、ましてや、この後の大夫殿の御有様をご覧になっていたならば、もっともであると思われたことでしょう。
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