第7話 歴史を紡ぐ者たち

文字数 7,533文字

「開拓者ギルドマスター、バクファ・ネイバーだ。此度の軍事作戦の指揮を任ぜられた。よろしく頼む!」

 急迫する“黒竜”討伐のための作戦会議は、熊のような体躯から発せられた迫力ある声で始まった。その隣には王国騎士団長が一人、シュリクライゼ・フレイミアの姿もある。

 会場に使われているのは時計塔地下の中心。決して広いとは言い難く、周囲には避難所として利用している一般人も居る状況だった。開拓者クランから数十名の代表者と、同じ程度の数の王国騎士たちがバグファさんら中心メンバーを囲うように並んでいる。

「現在、王国軍【青の騎士団】が“黒竜”を抑えている。彼らの伝令からの情報も含めて、これからの行動指針を伝える!」

 全員の注目を一身に浴びる中、バグファさんは膨れ上がった胸を張りながら言った。

「ここまでに集まった竜の情報について確認する。竜は高い飛行能力と、体内器官から炎を吐き出し巨大な爆発を巻き起こす力を持っている。また、その巨体に見合ったパワーがあり、腕の一振りで建造物を破壊することも可能である」

 この場に居る誰もが神妙な顔をしてバグファさんを見つめる。これだけでも多くの実力者が手を焼く化け物であることは間違いない。しかし黒竜には、それ以上に厄介な特性が備わってる。

「――そして何より、どのような攻撃も無力化するという性質がある。先の攻撃では【青の騎士団】による“複合魔術”を完全に無力化した。それに関しては、ギルドマスターである俺も確認している」

 地下避難所は一斉にざわついた。戦いの状況を知っているのであろう開拓者や騎士たちはまだしも、一般人にとっては衝撃的かつ絶望的な事実だろう。バグファさんは誰かの不安を掻き立てることも構わずに続けた。

「竜を討伐するためには、この性質の攻略が必要不可欠である。制限付きの力か、はたまたもっと別の力かはわからないが、竜は未知の生物。あらゆる手段を用いて弱点を模索し、何としてでも討伐せねばならない!」

 バグファさんが話し終えると、脇に控えていたシュリが歩み出る。キリッとした表情は作られたように微動だにせず、造形品じみた美しい騎士の所作で、全体に向けて話し出した。

「住民の避難については僕から。王都に住んでいる人間の多くは地下避難所、もしくは各地領主の邸宅等を利用し半数以上が避難を済ませています。しかし依然として竜の猛威は変わらず、さらに王都郊外から来た者の報告に寄ると、ルディナ王国を取り囲むように“動く死者”なる意思疎通のできない者たちが見境なく人々を襲っているようです」

 さらなる悪報に避難民も、戦う者たちすらも驚きを口にする。これは俺たちが持って来た情報だ。王都も大変だろうが、民間人を守るという点では“動く死者”たちの凶悪性も見逃せない。シュリは淡々と話を続けた。

「つまり全戦力を黒竜に投じることはできません。既に王国騎士団【鋼猫】は、各地にて民間人の保護へ向かっています。限られた戦力ですので、それぞれの立ち回りが重要になるでしょう」

「フレイミア殿の言う通りだ。民間への被害を最小限に抑えることを第一に考え、かつ黒竜を討伐する。速やかに討伐できない場合でも、奴を王都からある程度離さなくては国の中枢が崩壊してしまう。事態は一刻を争うということを常に頭に入れておいてくれ」

 シュリの報告を受け、バグファさんが注意事項を促した。守る人々や土地を失っては本末転倒。【青の騎士団】の陽動作戦もこのためであるはずだ。

 話が一段落したところで、一人の男が手を挙げた。開拓者と思しい粗野な身なりで「発言、良いっすか」と軽い口調を飛ばす。多くの視線が移る中、開拓者の男はふてぶてしく言った。

「ギルドマスター。オレたちにとって肝心なのは『誰が黒竜の相手をするか』。それだけっすよ」

 たくさんの人間の顔が曇る。しかし開拓者の男はそんなことも構わずに言葉を続けた。

「開拓者にとっちゃ、名を揚げるまたと無い機会っすよ。新しい“ルディナの英雄”になったなら、これからの人生をどれだけ楽しく過ごせることか」

 ニヤつきながら言った開拓者に対し、今度は王国騎士の一人が怒鳴った。

「事はそう単純ではない。一国の存亡が懸かっている時に我欲に溺れるな。例えお前が黒竜を倒しても、讃える民が居なければ“英雄”などと呼ばれはせんぞ!」

「国民を守るのは王国騎士の仕事だろ。だったらオレたちゃ、あの竜と戦う権利があるはずだ」

 開拓者たちと王国騎士たちが向かい合い、互いに睨みを利かせ始めてしまう。対立関係が目に見える形になり危険な雰囲気が漂った。その内に、騎士の一人が再び声を荒らげる。

「開拓者の荒い戦闘で、市民を巻き込んだらどうするつもりだ。それに貴様らに任せても黒竜を倒せる保証は無いだろう!」

「……そりゃあどういう意味だぁ、騎士さんよ。オレたちの実力が信用できねぇってのか? 実戦経験じゃ確実にオレたちの方が上だぞ」

「何だと!?

 売り言葉に買い言葉の応酬。不毛な言い争いはお互いの組織の人々さえもヒートアップさせて、取っ組み合いの喧嘩にまで発展しかけていた。

「おい! 今は味方同士で争いをしている場合じゃねぇだろう!」

 バクファさんの声もまともに届かない。開拓者と騎士団の確執は昔から存在するものだ。国を発展させる者たちと国の秩序を守る者たち。どちらも戦いに身を置く者同士、役割を分けることで諍いを防いできた。しかし王都という場所に敵が現れたことで、野心とプライドがせめぎ合っている。

 このままでは連携どころか内部分裂しかねない。確執が修復困難になってしまう│(すんで)のところで、一際耳を刺す声を放つ者が居た。

「――静まれッ」

 ぶるっ、と空気が震えた気がした。深く重たい鈍の如き声色を発したのは、その頭に権威の象徴たる冠をしたルディナ王だった。

 圧倒するような王の雰囲気によって会場は静けさを取り戻す。この場にいる誰もの視線を浴びる中、ルディナ王は嗄れた声を張って語り出した。

「開拓者それぞれに野心があろう。それは構わぬ。古来より我々王国と開拓者ギルドは、│(いにしえ)より良き隣人として手を取り合ってきた。互いに利があることを知り、開拓者たちの武勲と、それらがもたらす平和を“秩序”に変えて守ってきた。ルディナ王国の歴史は、そうして紡がれてきたものだ」

 突然過去を持ち出したルディナ王に対し、怪訝そうな顔や疑問符を浮かべる者たちばかりだった。正直に言うと俺もその一人である。しかしルディナ王は周囲の反応なんて気にも留めず、言葉を連ね続けた。

「しかし歴史は既に過去のものとなっている。もたらされた平和が確執を生み、力の誇示や立場による考え方に縛られている。あまつさえ、守るべきものを蔑ろにしてまで」

 そう言って、ルディナ王は最初に意見を飛ばした開拓者に体を向けた。開拓者の男はびくっと肩を揺らす。

「貴様。名を何という」

「な、なんですか。突然」

「名を、何という」

 男は蛇に睨まれた蛙のように固まりながら、口だけを動かした。

「カワードです」

「開拓者カワード。仲間は居るのか?」

「え、ええ。居ます」

 僅かに沈黙が流れた。誰もが額に冷や汗を浮かべる中、シュリだけが表情を変えることなく王を見ている。そしてルディナ王の射殺すような視線は、途端に優しげな眼差しになった。

「それで良い。ここに居るということは、背中に危機に晒したくない者が居るということだ」

 ルディナ王は再び眉間に皺を作って表情を険しくすると、ここに居る大勢の人たちと目を合わせるように地下室を見渡した。

「人は守るべき信念を抱えて、初めて強くなれる。ここに居る者たちは皆それを知っていよう。何故ならば、一人ひとりがこの国を支える強者なのだから」

 思い出したように身を跳ねさせた人が何人も居た。開拓者も騎士も、戦士とは数えられない俺やマイですら。震えたのは体ではなく、大切な者を思い遣るための気持ちだ。竜を倒すことばかりを考えていて、どこかで「支える」ことを忘れてしまっていたのである。

「刃を振るう相手を間違えるな。守るべき人間を見定めよ。此度の“天災”には個の力は通用せぬ。ルディナ王国が持つ全ての戦力にて迎え撃たねば、間違いなく国は滅びる」

 一国の主が予見するにはあまりにも不吉だ。実際、この会議が聞こえた避難民の中には涙を浮かべる者も居た。誰もが不安で、今を懸命に生きようとしている。未来には絶望の星ばかりが見えているとしても、夜はいつか巡ると僅かな期待を無理やり押し広げて。

 王はそんな民の希望を本物にしようと、誰よりも透き通る声で言った。

「――しかしこの国は負けぬ。紡がれてきた信念はどのような力をも超える。かつて一人の開拓者が、百を超える王国騎士の(たましい)を砕いたように」

 その言葉で、俺の脳裏には一人の老剣士の顔が浮かんだ。ルディナ王の後ろ姿が頼もしい背広と重なる。一国の王に「憧れ」とまで言わしめた“ギルドの伝説”は、今も多くの人々の心で生き続けていた。

 彼は国王という立場でありながら、騎士や開拓者といった立場を誰よりも踏み倒している。他ならぬ王自身がそれを証明することで、ここに居る全員が団結すべき戦士の一人だということを実感させた。

「奮い立て! まだ何も奪われておらぬ。一人で適わぬ敵も、信念を束ねれば超えられぬ壁は無い!」

 ルディナ王は当たり前にやってくる朝日を告げるが如く声を張り上げた。最盛期はとうに超えた背中であるはずなのに、バグファさんやシュリよりも誇り高くそびえ立っている。

「ここはあらゆる脅威を斬り崩す強国、ルディナ王国――その刃は貴様らの中にある!」

 地下を震わせるほどの迫力が会議の場を支配した。国民も騎士団も、戦果を気にしていた開拓者すらも押し黙っている。しかしすぐに、会場のどこからか雄叫びが聞こえた。それを合図にして賛辞の嵐が巻き起こる。

 不安に顔を曇らせていた国民さえ、瞳には僅かな希望を宿していた。他の誰でもない『王』が宣言したことでこの国の指針は決まった。そして誰もがその意思に従うことを最善だと思った――思わされた。

「凄いな……ガルシアンが入れ込む理由がよくわかったよ。うっかり宮廷呪術士に志願しちゃいそうだ」

 一国の主として相応しいカリスマだ。素晴らしい演説で会議の場を制圧したルディナ王は、視線を使って進行を再びギルドマスターに委ねる。受け取ったバグファさんは、王に負けじと声を張り上げた。

「作戦を伝える! 現在交戦中の【青の騎士団】に代わり、開拓者ギルドの精鋭たちで陽動を引き継ぐ。王国騎士たちは消耗した騎士と共に、国民を西へ避難させてくれ。周囲の安全が確保でき次第、奴を王都から引き摺り出す。良いか、これはこの国の命運を賭けた総力戦だ!」

 王によって束ねられた剣たちは、それぞれの思惑を内に秘めてバグファさんの言葉に耳を傾けている。

「勝つぞ、ルディナ王国!」

 王の意向を受け取った時と同じか、それ以上の気合いが会場を埋め尽くす。もしかするとルディナ王国は、歴史上初めて、本当の意味で一つになったのかもしれない。


 それぞれが行動を始めた後、俺とマイはバグファさんの元へ急ぎ指示を仰ぐ。

「バグファさん。俺たちはどうしますか」

「竜を抑えていた【青の騎士団】の元へ行き、騎士団長クロム・ガルシアンから話を聞いてくれ。そこまでは俺が護衛する」

「わかりました」

 ふた回りは大きな体ととともに時計塔の外へ出る。黒竜はさっきよりも作戦本部から引き離されており、騎士たちの陽動がうまく機能していることがわかった。

 俺たちは大きく迂回しながら黒竜を横切っていく。大小入り混じる揺れは作戦会議の時からずっと止まない。今度は先んじて本部から出ていた何十人という数の開拓者たちが、活躍していた【青の騎士団】に代わり既に黒竜の煽動を図ろうとしている。

「ルディナ王のおかげで、開拓者たちも作戦に従事してくれている。俺も見習わねぇとな」

 バグファさんは道中にそう呟いていた。まだ若い彼にとって、野心ある荒くれ者たちは手に余る存在だと感じているのだろう。そんな中でもバグファさんのカリスマは開拓者たちを従わせるだけの力がある。騎士との確執が無ければ、彼が指揮を執るのだって造作もなかったはずなのだ。彼もまたこの国の重鎮であることは間違いなかった。

 やがて青い剣の紀章を付けた【青の騎士団】と思しき騎士たちの集団が見えてきた。さすがに戦線を長時間担っていただけあって消耗も激しい様子だ。しかし俺が現れたと気づくや、絶え絶えの息ながら大声を出し始める。

「おい! “不死殺し”が来たぞ!」

「よお英雄サマ! 愛しの恋人は大事にしているんだろうな!?

 酔っ払った開拓者みたいな絡み方をしてくる【青の騎士団】の面々。戦いで疲れているはずなのにからかいの声は止まず、マイまで顔を赤くするものだから苦い顔で押し黙る他無かった。

「なんだ。随分と人気者だな、ルミー・エンゼ」

「やめてください……事故だったんです、何もかも……」

 バグファさんが困惑するのは当然だ。一年前の事件の詳細について【青の騎士団】の団員たちは外部にこそ口を噤んでいるようだったが、俺たちが王都を出ると言って見送られた時には、いつか呪ってやろうかと思えるほどイジり倒されたのだ。

 まさか“封し鳥”に魂を閉じ込められていた人たち全員に、好きな人への告白を聞かれていただなんて想像できるはずもなかった。羞恥心が膨れ上がって、とうとう顔を伏せようとしたら、そんな戯れ言たちを一喝する声が飛んだ。

「浮かれるな貴様らァ!」

 空気を圧迫するような叱責に、辺りに居た騎士たちが軒並み姿勢を正す。ばっ、と揃った動きは、今日初めて彼らを“騎士”だと思わせてくれた。

 ガチャガチャとぶ厚い鎧の揺らす、バグファさんに負けず劣らずの図体をした男。紺色の鎧の胸には【青の騎士団】を表す青い剣の紀章が光り、この国の矛であることを誇らしげに示している。出会った時よりはマシな――それでも眉間に皺ができているが――険しい表情で俺たちを見下ろす山吹色の瞳。王国騎士団が一つ【青の騎士団】団長クロム・ガルシアンだ。

「久しいな、支援者」

「ガルシアン。あんたの部下たちをどうにかしてくれ」

「ふん。これも一年前の褒賞だと思っておくが良い」

「勘弁してくれよ……」

 王国騎士団と接触することはあまり無いが、もしも今後も付き合いがあるのなら確実に話のネタにされるだろう。絶対に酒の席だけは一緒になるものかと決意していると、バグファさんが言った。

「ガルシアン騎士団長。彼らを預けます」

「うむ。承った」

 この二人が並ぶと、多くの命を預かっている者同士の頼もしさと、野獣の縄張り争いを目撃してしまったような恐怖が一緒になって襲ってくる。鬼面かと思うくらい険しい表情の二人は、傍目からは不倶戴天の関係ではないかと疑ってしまうほどだろう。しかし両者の性格を知っている身からすると、どちらも誰かのために必死であるだけだった。

 バグファさんが去り、汗を拭ったガルシアンはいの一番にこんなことを尋ねてきた。

「“魔女の痣”については何かわかったのか」

「いいや、全然だ」

 突然過ぎる質問に答えると、ガルシアンは舌打ちしそうな勢いで捲し立てた。

「奴には単純な防御力を超える異質な何かがある。“封し鳥”の時のように、その何かを解き明かさねば勝機はなかろう」

 そこまで言われて、彼の懸念を察する。

「今回もあれが関係している……その可能性を捨てられないってことか」

「ああ。お前から見てどうだ?」

 可能性があるか否かと問われれば、正直あんなものとは二度と関わりたくないせいで否定したくもなる。ガルシアンなんて一時は魂を奪われた当事者なのに、彼の辞書には恐怖という感情が無いのだろうか。しかしながらその図太さが今は有難かった。

「関与はわからない。ただ、状況はどこか似ている。警戒しておくべきことだとは思うよ」

 冷静さや最悪の想定を忘れたくなる気を引き締め、右手にある白い手袋をぎゅっとはめ直す。今回の“黒竜”も“不死の悪魔”のような遠いおとぎ話の具現化。歴史学者かつ非現実的なことが嫌いなガルシアンからすれば“封し鳥”と同じくまともに取り合いたくない相手だろう。彼は今度こそ「ちっ」と舌打ちを挟んでから言った。

「まあ良い。さっさとあの面妖な力の攻略法を探すぞ」

「わかった。呪術でどうにかできる範囲なら、どうにかするよ」

「大した自信だな。足元を救われるなよ」

 変わらない嫌味な言い方はともかく油断して良い状況ではないことは確かである。彼の隣では気が抜けなくて、さすが騎士団長という立場にある人間は格があるなと思わされた。

 ガルシアンは別の用事に立ちかけて、思い出したように言った。

「それと、マイ・セアル。少し待て」

「は、はい」

 名指しで呼ばれたマイは未だにガルシアンに対して緊張の面持ちだ。それもそのはず、ガルシアンは“不死鳥事件”の後にマイがお礼をしたいと言っても「時間が惜しい」とまったく取り合おうとしなかったのだから。

 言い振りからして用件は彼女だけにあるようなので、俺は少し離れて席を外した。遠くから見守っていると、二言三言話した後に、マイがぶんぶんとかぶりを振っている。会話はたったそれだけだったようで、小さな歩幅がぱたぱたと俺の元へと戻って来た。

「何話してたの?」

「一年前に王都で色々言われたこと、悪かったって謝ってくれました。あと、私の見る目は間違っていなかった、とも」

 なんと、一年前に時間が惜しいと言ったのは事実だったのか。てっきり気まずいだけだと思っていたが、義理深い性格にブレはなかったようである。

「そっか。マイにもガルシアンの不器用さが伝わって何より……」

「――ギャゲアァァッ!」

 奇怪な叫びの主は黒竜だった。突如として上空を向き、大きく口を開けている。あたかも深呼吸のように多くの空気を取り込んでいるようだ。すると、ぐるぐると何かが蠢くような音がする。音の所在は竜の腹の中だった。漠然と嫌な予感が過ぎった瞬間、ガルシアンが血相を変えて太い声を叫ばせた。

「全員、屈めッ」

 言われるがまま、俺はマイを覆うように地面へと伏す。首だけを僅かに上げていたことで、黒竜が高らかに上を向いたのが見えた。勢いよく振り下ろされる大きな顎が地上スレスレまで落ちて来て、口内が真っ赤に閃いた。

 その瞬間、王都を焼き尽くした炎が再び放たれる。視界が白く染まるほどの爆発が再び巻き起こり、音と熱が意識すら刈り取ろうとしていた。
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