第18話 自由人の不自由

文字数 892文字


 人生に特別な意味を持とうとするから、人は疲れるんだ。

 だから“俺”は何も期待しない。

 流れるままに。 

 適当に。

 それがKの人生論。

 だから彼はよく石に躓く……。


「まあ、そんなワケだから俺は今月中に“50万”を作らなきゃいけないんだ」

「……」

 僕は普通に奴が何を言ってるのかさっぱり解らなかった。

「なんの話だ? えっ、50……50がなんだって?」

「だから50万。50万が必要なの俺は。って一回で解れよそのくらいの話」

 近所のファミレスでほんの2分前に、しかも約ひと月振りに再会をした友人はそんな悲しいことを平気で言う。

「そ、そうか……が、頑張れよ」

 どんな発言を期待してるのか解らなかったので僕は取り敢えずそう言っておいた。

 すると奴は「いや、頑張らねえ」と、聞いた瞬間にムカっとくる反論をしてくる。

「絶対に頑張らねえ。ってかお前、理由も知らないくせに適当なこと言ってんなよ。なんで俺が50万もの大金を払ってやらなきゃいけねんだよ」

 正直、この辺りで暴力を振るっても法的に許されるかなとも考えたが、念には念を入れてもう少し泳がせてみようと判断した。

「ってか、まずよ、説明うんぬんよりも、ここの払いは誰か? それを決める方が大事じゃね?」

 ……僕は、そんなのは僕の奢りでいいよ。と少し冷ややかな口調で言った。

「オッケ。ナイス太っ腹。さすが友。じゃあ俺も遠慮しないで……いや、つってもやっぱ多少は遠慮するけどな。ま、8割、そうだな8割くらいのレベルで注文する事にすっからよ。残りの2割はアレだ。アレ……あっ、そこのウェイトレスのお姉さん、注文してもいい? ついでに電話番号も。あっ、ダメ? あっ、そう。でもよダメって言えば俺はメルアドがダメなんだよな。だって俺の学生の時の英語の評価ったらよ……いや数学と科学もアレなんだけど……って、アレ? 俺は何の話してるんだ? あ、ああ注文、注文な。もう少し待っててくれよ、これから考えるから」

 彼がどれだけ適当なのかを集約したような“独り言”。僕とウェイトレスはもちろんただただ冷ややかな視線を向けるしかなかった。

〈次項に続く〉
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