──その2
文字数 807文字
「──ま、俺も“うろ覚え”だけどな。なんせ俺もおまえらと同じように“奴の認識はブタ”だからな。ま、あれだ。コクられた手前、一応名前くらいはな。“全く必要のねえ無駄な知識だけど一応”な」
ぎゃっはっは! と笑いながら彼はもう一度よっぴの名を発した。
ブタ……ブデブ……よっぴ。
最悪な偶然。僕たちの斜め後ろに、よっぴを振った男がいる。
「やめとけよ、でん」
「なんだコラ、なにをやめろって?」
でんちゃんの目は既に獰猛な光を宿していた。
「おまえのやろうとしてる全てだ」
見据えるS渡辺の瞳もまた力強い。
「コラ、“クソガキ”。てめーごときに俺の呼吸を止める権利があんのか? おう、コラ」
でんちゃんのスイッチが完璧に切り替わった。ケンカばんちょー。昔から「クソガキ」はその合図。
「屁理屈はどうでもいい」
「奇遇だな。俺も面倒なことはどうでもいいんだ」
そう言うと、でんちゃんは立ち上がる。ぶっとい腕に力を漲らせながら。
だがその刹那、ピシャッ。S渡辺がコップの水をでんちゃんの顔面にぶっかけた。
「巻き込むな、でん」
更にS渡辺はでんちゃんが怒鳴り声を張り上げるより早くこう続けた。
「──おまえの勝手な行動で俺たちまで巻き込むな」
「なに言ってんだテメー? さっきからよ、おうコラ」
前髪から雫を垂らしながらも鋭い牙を剥くでんちゃん。力強く握られた拳が徐々にもちあがっていく。
「あ、あの……お客さま……」
いいタイミングで現われた店員。僕はこの殺伐とした空気を消し去るように料理をテーブルに並べるのを手伝い、二人の間にささやかながらも隔てを作った。
ちなみにどのタイミングで述べようか迷ったが、さっきの水、でんちゃんの隣の僕にも物凄く掛かってますから。と、敢えてここで言わせてもらおう。
だから嫌なんだシリアスモードは。咄嗟の冗句で話の腰が折れてしまうから余計な気を遣う。
まあ、それは余談なのだけど……。
《次項に続く》
ぎゃっはっは! と笑いながら彼はもう一度よっぴの名を発した。
ブタ……ブデブ……よっぴ。
最悪な偶然。僕たちの斜め後ろに、よっぴを振った男がいる。
「やめとけよ、でん」
「なんだコラ、なにをやめろって?」
でんちゃんの目は既に獰猛な光を宿していた。
「おまえのやろうとしてる全てだ」
見据えるS渡辺の瞳もまた力強い。
「コラ、“クソガキ”。てめーごときに俺の呼吸を止める権利があんのか? おう、コラ」
でんちゃんのスイッチが完璧に切り替わった。ケンカばんちょー。昔から「クソガキ」はその合図。
「屁理屈はどうでもいい」
「奇遇だな。俺も面倒なことはどうでもいいんだ」
そう言うと、でんちゃんは立ち上がる。ぶっとい腕に力を漲らせながら。
だがその刹那、ピシャッ。S渡辺がコップの水をでんちゃんの顔面にぶっかけた。
「巻き込むな、でん」
更にS渡辺はでんちゃんが怒鳴り声を張り上げるより早くこう続けた。
「──おまえの勝手な行動で俺たちまで巻き込むな」
「なに言ってんだテメー? さっきからよ、おうコラ」
前髪から雫を垂らしながらも鋭い牙を剥くでんちゃん。力強く握られた拳が徐々にもちあがっていく。
「あ、あの……お客さま……」
いいタイミングで現われた店員。僕はこの殺伐とした空気を消し去るように料理をテーブルに並べるのを手伝い、二人の間にささやかながらも隔てを作った。
ちなみにどのタイミングで述べようか迷ったが、さっきの水、でんちゃんの隣の僕にも物凄く掛かってますから。と、敢えてここで言わせてもらおう。
だから嫌なんだシリアスモードは。咄嗟の冗句で話の腰が折れてしまうから余計な気を遣う。
まあ、それは余談なのだけど……。
《次項に続く》