第7話 笑顔のいい女

文字数 915文字

 いい女の条件ってなんだろうか?


「えげッ! そんな簡単な事も知らずに21年間も生きてきたの? そんなの決まってるじゃない」

 と、すかさず答えた彼女の名前はEさんこと、よ(ヨ)っぴ。

「容姿よ容姿。綺麗な顔と、艶めかしいスタイル。女は美人と呼ばれれば、それだけでいい女なの」

 いつも爆発してる頑固な癖毛。私服にジャージ。おっきな足。

「つまり、私とは正反対な女ね」

 バリバリと煎餅を食べながら、肩幅と大差のない腹をがははと豪快に揺らす。

「ま、まあ、確かにそれが一番解りやすい答えかもな」

 容赦のない台詞に思われるかもしれないが、目に見える同情は格差の証明と言ったのは彼女の方。友達であることに、偽りは必要ない。と。

 だから僕も……僕の仲間たちもよっぴに虚言を吐くことはない。何故なら僕たちは皆、よっぴが大好きだからだ。

 がははと大きな口を開けて、誰よりもいい顔をして笑うよっぴが。

「てことでね、ハイッ! 私ことよっぴは本日、またフラレてしまいました。相手は会社の先輩でした。以上、今年四度目の緊急報告おわり。ハイ」

 突然の悲報。だけど電話で呼び出された時点で気付いていた僕が驚くことはなかった。

「……そっか。ってか、今年でもう四度目だっけ? 相変わらず春の来ない女だな、よっぴは」

「ええ。年中冬眠女ですから私は。熊ですから。ガオー! ですから」

 がははははは。

 本当は知っているんだ。僕が帰ったあとで、いっぱいいっぱい泣く事を。だから、今日は“僕”が呼ばれたのだから。

 よっぴが男にフラレた時、でんちゃんが呼ばれたらやけ酒を飲んで暴れて、S渡辺には説教をしてもらう。
 
 知ってるんだよ、よっぴ。皆とっくに知ってるんだよ。そんなことくらい。

「……ダイエットとか、してみれば」

 僕は言う。いつもの台詞を。よっぴのいつもの強さを確認したいから。

「それは嫌。だって美を求めると、性格まで美しくしなければいけないから。話し方、態度、笑い方。デブでブスだけど、今の私が自然の私だから」

 誰の前でも大きな口を開けて笑っていたい。

 がはははは。

 うん。デブでブスだけど、誰よりもいい笑顔。

 偽らない女。そんなよっぴが、やっぱり僕は大好きだ。











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