第56話 クムクム

文字数 1,221文字

「先生ゲームにも詳しいんですね」
高崎くんが、ゲーミフィケーションの話を聞いて、そう言った。今は割と硬い仕事、警察との共同研究をしているからなかなかそう言うイメージがなかったらしい。

「そうだね。昔作ったことあったからね」
僕は答える。そう昔ゲームを作ったことがあったからだ。そして、データサイエンスとゲームは結構相性が良く、ソーシャルゲームが流行した時にかなり流行って、そこからデータサイエンティストがたくさん生まれたとも言える。

「へー、先生がゲーム作ってたんですね」
高崎くんが聞いて驚いている。
最近はずっとデータの話ばかりしているので高崎くんからはピンと来なかったらしい。

「え?ななちゃんしらないの??」
ヒカルちゃんは不思議そうに聞く。
まるで当たり前のことを知らないかのように、ヒカルちゃんが高崎くんに聞く。そしてゴソゴソとスマートフォンを取り出す。

「え?」
高崎くんが聞く。その雰囲気を見て、当たり前のことを知らないのだろうかねと考え始めているようだった。

「これだよ??」
ヒカルちゃんが自分のスマホでゲームを立ち上げて高崎くんに見せた。そして、楽しそうにプレイしている。結構最近もプレイしているようだった。


「クムクム!私も結構やった!友達に誘われて!それがどうしたの??」
高崎くんはゲームをみてテンションが上げる。これは10年まえにリリースされて、スマートフォン時代のソーシャルゲームの代表と言われ、いまだにプレイヤーがいるパズルゲームだ。

「それ佐鳥先生が作ったんだよ!」
ヒカルちゃんが説明する。
そう、そのゲームは僕が立ち上げたゲームだった。

「1人で作ったわけじゃないから、それは言い過ぎだけどね」
僕は補足する。今のゲームは大規模になっているからなかなか一人で全部作るということは難しいし、チームで作っているものをどこまで自分が作ったと言えるのか難しいところだ。

「そのゲームは3人で立ち上げて、その会社は上場してるんですよ」
大和くんは言う。彼もその時からの知り合いだからよく知っていた。そう、大学の友達三人でゲームを作り、友達はお金を集めわずか数年で上場させた。

「え??」
高崎くんは驚いている。

「そうだね。僕はその後大学の先生になったけど、学生の時に作ったクムクムが流行ったんだよね」
僕は言う。そう、大学院生ぐらいの時に友達と作ったゲームに人気が出た。

「え?先生大金持ちなんですか?」
高崎くんが率直に聞く。

「いやー、多分今も株は持ってるけど確認してないね。大学の給料だけで充分だし」
僕は答える。株のことはあまり気にしていなかった。そこに時間を取られるよりは研究に時間を使いたいと常に考えている。

「えーーー!!!」
高崎くんが驚く。隣にいる人物が億万長者だとわかったらそういうリアクションをするかもしれない。

「いやいや、昔の話だよ??」
僕は答える。
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