第４７話　順番

「能力高いよね」
ぼくは大和くんに対して同意する。

「そうなんですか？」
高崎くんが僕たちに尋ねる。
天才中学生ヒカルちゃんの仕事の仕方を僕たちは解説していた。

「そうだね。優先順位を決めるということが知的作業においてはかなり大事なんだ」
ぼくは説明した。知的生産をする僕たちエンジニアにとって大事なのは自分の時間を無駄にしないこと、時間単位で大きな成果を出すこと。並行してやっていることが終わる時間を予測して先読みして動く事が大事だ。

「簡単にできることから試して、精度を高める順番で計画を組んでますね。彼女は。できる人少ないんですよね」
大和くんがヒカルちゃんの作業手順について説明した。
当たり前にように見えるがこれができる人はすくない。

「いきなり難しいことをやらないことが大事なんだ。もともと用意してある正面顔認識だけでも、今回だったら捉えられるかもしれないからね」
ぼくは高崎くんに説明した。
むずかしいことを1年かけてなにも出ませんでした、となるより、簡単な事を全部やってからむずかしいことに取り掛かった方が良い。
驚くほど短い時間で作れるかもしれないしその間にノウハウを得る。

「正面以外で顔を認識するのは難しいんですか？」
高崎くんが僕らに技術的な質問をする。
技術的な難易度は技術者以外が把握するのはむずかしい。

「原理的にはそんなことないよ。正面と同じだけデータがあればいい」
ぼくが説明する。
結局やることとしては同じだ。
教師になるデータを集めて判別する。

「なるほど、基本まっすぐ写真に写ることが多いから少ないんですね」
高崎くんが理解する。
今までぼくらとブレストしてきているので理解力が高くなっているようだ。
写真というのは基本的にはまっすぐ映るようにするからだ。

「そう、その通り」
ぼくが頷く。

「しっかり用意できれば原理的には全く同じだ」
ぼくは説明する。そう、仕組みは一緒だがそもそもデータの量が違うという話になってくる。

「たしかに、横顔ってそんなに見ないから人でも難しいかもしれないですね」
高崎くんが想像しながら理解する。

「そうなんだ」
ぼくが頷く。

「一旦今日はこれで終わりにしようかな？」
ヒカルちゃんがそう言った。人工知能プログラミングはコンピュータが作業している間待つというのも大事な仕事になってくる。

「うん、そうするといい。後は勝手にクラウドでやってくれる」
ぼくが頷く。彼女が今できることは終わったと言えるだろう。

「うん、横顔のやり方を調べてみる」
ヒカルちゃんがいう。そう、コンピュータが計算している間、次にやるべきことを調べておくというのが大事だ。だんどりがすべて。

「参考にしたら良い記事を送っておくよ」
大和くんがヒカルちゃんに言う。彼のことだ、話をきいてる間にもうピックアップは終わっているだろう。たぶん今URLのリンクを送るところだ。

「助かるんだよ！大和さん！」
ヒカルちゃんは喜ぶ。

「すっかり仲良しですね！」
高崎くんが二人を見て微笑む。

「天才同士通じるものがあるんだろう」
ぼくが呟いた。