第７０話　２０００人

「できたんだよ！」
ヒカルちゃんがあたらしいアルゴリズム。
つまり口を隠していても人物を抜き出すアルゴリズムの完成を告げた。
コンピュータたちが時間をかけて計算してくれた。

「お、やったね」
僕はうなずく。
順調に進んでいるようだった。
彼女はわからないことは自分で調べて進めていく。

「やったんだよ！」
ヒカルちゃんが完成を喜ぶ。
そしてそれを僕に見せる。
大量の画像がパラパラと流れていく。

「これがまた500人だね。これも警察の皆さんにお任せしよう」
僕が言う。
またしっかりと認識できる数が増えていた。
ここまでできればあとは警察のみなさんの力による。

「2000人聞き込みするだけで、4人見つかるなら安いものですね！ 」
高崎くんがケロッと言う。
2000人に聞き込みのために外を回るなんて体力のない僕からは想像もつかないことだけれども普段やっている人数から比べたら大したことないと高崎くんの笑顔が語っていた。

「うん、そう思う。あとは、歩様認証だね！」
僕が言う。
さらに先読みして僕らはつぎの仕事に取り掛かる。
そうこれが大本番、ここからが面白いところだ。

「準備できてます！」
大和くんは言った。そうここからは彼の仕事だ。
いままではヒカルちゃんの力に大きく頼っていたが、ここからはほかに誰も試している人の少ない、研究の領域になってくるからだ。
先読みして準備していた。聞いてはいないが、ここしばらくは寝ていなかったんじゃないかと想像する。

「待ってたんだよ！」
ヒカルちゃんもテンションを上げる。

「よし、最後の大仕事頑張ろうか！」
僕はみんなに言う。

「わたしも調べてきたんだよ！」
ヒカルちゃんが言う。
彼女に与えられる予定のタスクは人が歩行している映像を抜き出すこと、それを大和くんに渡して歩様認証をかけてもらうこと。
それをやるのに最新のディープラーニング技術を使う必要があった。それを大和くんからの少しのヒントでどんどん進めていく。

「お、色々わかった？」
僕が聞く。
さすがだった。
ほとんど何も教えていないのにもかかわらずどんどんと進んでいく。

「人を抜き出すのはフレームワークを使うと結構簡単みたいなんだよ！途中で一部が隠れても追い続けてくれるみたいなんだよ！」
ヒカルちゃんが調べた成果についていってくれた。
最新技術に驚いているようだった。
こうやってどんどん難しい最新技術が誰でも使えるように公開されていく。

「うん、そうなんだよね。めちゃくちゃ進化してるんだよね」
僕が言う。
このあたりの技術はここ10年でめちゃくちゃ進化した。
特にニーズがあるところだからスマホメーカーから大量の研究開発費が注がれていた。
そうしてスマホの開発キットに最初から組み込まれている。

「これで抜き出して、大和さんに渡せばいいんだね！」
ヒカルちゃんが言う。彼女は完全に理解していた。そしてそのための準備も多分終わっている。

「うん！そうだね！」
大和くんが答える。

「わかったんだよ！まかせて！！」
ヒカルちゃんは言った。