第３７話　クラウドサーバ

「えー！これ自由に使っていいの？」
ヒカルちゃんが早速うちの研究室に遊びにきて、大きな声で喜びの声をあげた。僕らは彼女に設備の説明をした。

「いいよもちろん」
僕は答える。研究をやるには十分な設備が必要だ。最近のIT会社はいくつものモニター、最上の椅子、高さの変わる机、フリードリンクが与えられるのは当たり前のことだった。

「え？こんなにモニターいるんですか？？一個で良くないですか」
高崎くんが素直な疑問を口にした。確かにスマホの小さい画面だけでほとんどのことをこなしている彼女からしたら、当然の疑問だった。

「色々並列でやるからね」
そう、僕らは並列にいろんなことをする。そのスイッチコストを最小限にするには、大きな複数モニタは必須だった。

「呟きが投稿される30秒の間に他のことしたいからね」
僕が言う。ITエンジニアあるあるだった。

「仕事じゃない！！」
高崎くんが僕に突っ込む。

「大和くん！ヒカルちゃんにクラウドサーバーの使い方教えてあげて！」
僕はうちの研究生の大和くんを呼んでお願いした。

「あ、はいわかりました」
彼はさっと立ち上がり準備を始めた。

「クラウドサーバーってなんですか？」
高崎くんは僕らに聞いた。話題になっている単語だから聞いたことぐらいはあったと思うけれど、実際にどう言う役割なのかを一般の人が理解するのは難しい。

「うん、いい質問だね。ヒカルちゃんはあの実装自分のパソコンでやったんでしょう？」
僕は高崎くんに答えつつ、ヒカルちゃんに聞いた。

「そうなんだよ！クローリングしてる間なにもできないから寝る前にセットしてやるの」
ヒカルちゃんが答える。クローリングと言うのは自動で色々なサイトを回ってデータを集めることだが、ここまで高崎くんに説明すると大変なのであえて説明はしなかった。

「だろうね。次からはクラウドでやっていいよ。サーバー代は気にしなくていい。結果をウェブとして出力するとかやってもいい」
僕はヒカルちゃんに合わせて答えた。彼女が自分のPCでやっているのは、余計なお金がかからない部分が大きい。自分のPCで全てやれば、基本的にはそれ以上のお金はかからない。

「それは便利！佐鳥せんせい大好き！！」
ヒカルちゃんは今まで我慢していたことを解決されたことを理解し喜んだ。

「ありがとう」
僕は微笑む。

「むー、謎の言語でいちゃいちゃするのやめてください！！」
高崎くんが抗議を始めた。
いちゃいちゃはしていないと思うけれども・・・。

「まあ、簡単に言うと自分のパソコンで、データ集めたり、処理したりするより、他のパソコンでやったほうが色々便利ってことなんだよね」
僕は簡単に説明した。彼女にエンジニアになって欲しいわけではないので、この特別犯罪研究室を円滑に進めるために知って欲しい最低限のことに絞って説明した。

「そう！凄く早い！！なんでもできる！」
ヒカルちゃんは喜ぶ。

「思いついたことなんでもやっていいよ！その中から研究に使えそうなことも探そう」
僕はヒカルちゃんに言った。