第83話 三角関数

文字数 1,275文字

「CGとかは三角関数の集合体ですね」
大和くんがいう。
彼が今やっている歩様認証はCGの技術もふんだんに使っている。
なので毎日三角関数の恩恵を受けている状態だ。

「そうだね。今だとVtuberとかだね」
僕が言う。その自動音声のキャラクターをダンスさせるモーションエディタとか
3Dキャラクターが歌って踊っているのを見ているだけで我々は十分三角関数の恩恵を受けている。
音楽やCGを見た時点で三角関数から逃げるのは難しい。

「あっ!知ってます!」
高崎くんが言う。
今流行りのVtuberだ。
かなり流行っていて、一回の生放送で何百万円というお金が送られるらしい。

「そう、ダンスを踊るCGとかね、ひたすら角度を把握してるからね」
僕が説明する。
CGの場合つねに三次元の角度を計算しているので一番わかりやすく使っていると言えるだろう。
今回の大和くんの歩様認証はそれを画像から取り出すというもう一歩進んだものになっている。

「そうなんですね」
高崎くんがうなずく。
なんとなくわかったけれども、自分で触ったことはないのでピンとこないような感じだった。
確かに、学校で習うような、三角関数の受験問題がそのまま役にたつかと言うとそうではないかもしれないが、原理は知っていないといけない。

「微分もサインコサインも役に立つんですね」
高崎くんが言う。
ふだんの生活だとそういう人に会うのはむずかしいが、ここにいたんだな、という顔をしている。

「めちゃくちゃ役に立つよ」
僕が言う。

「めちゃくちゃ役に立つんだよ!」
ヒカルちゃんが言う。

「めちゃくちゃ役に立ちますよ!」
大和くんが言う。

「べ、勉強になりますね・・・」
高崎くんが理系軍団の圧をうけて声が小さくなる。
特にこのメンバーは毎日使う人間だった。
さすがに毎日そういう計算をしている人はほとんどいないといえる。

「レコメンドだってコサイン近似使うんだよ」
ヒカルちゃんが言う。
ECショップなどに使われるレコメンドもいろいろな方式があるけれどもシンプルなものだと、コサイン近似という手法を使われていることがある。

「コサイン近似・・・?」
高崎くんがちんぷんかんぷんだ、という雰囲気を出しながら言う。
簡単に言うと似たような行動をしている人を探すというところになる。

「ユーザー毎にベクトル空間に配置して類似度を出して一番似てる人を探すんだね!!」
ヒカルちゃんがコサイン近似についてさらに説明した。
似たような人を探すために使う手法だった。

「そうそう」
僕はうなずく。
ヒカルちゃんはちゃんと勉強しているようだった。
今だとフレームワークが進んでいて、いろんな手法を同時に試してどの精度が今回のデータにたいして有効なのかまでわかってしまうので、わからなくてもできてしまうところがあるのだが、彼女はちゃんと調べたようだった。

「ほ、ほう・・・」
高崎くんがまた普段ださないような声をだした。

「とにかくいろんなところで使われてるということだね」
僕は笑った。
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