第15話 刑事の動き

文字数 4,572文字

本間 「 それでですね、コンビニの店員の話によると、月嶋優の顔写真を見せたところ、月嶋君が、あの消えた日、コンビニに寄ったって言うんです。店内の防犯カメラ確認させてもらいまして、確かに月嶋優が夕方17時過ぎ頃、写っていました。」












柳林「ふむ。」









本間「月嶋君は、ポカリスエットと、フィナンシェとマドレーヌを購入してます。そして、コンビニから100m位したところで、そのポカリスエットの入ったビニール袋が、転がり落ちているのが発見されています。」















柳林「ふむ」














本間「しかし、フィナンシェとマドレーヌは見つかっておりません」











柳林「そうか、、、消えた フィナンシェと マドレーヌと 月嶋君か、、」











本間「はい、そうです。消えた フィナンシェと マドレーヌと 月嶋君です、、」











二人は、まるで『 部屋と ワイシャツ 私 』という歌のタイトルを言うように、つぶやきます。。























柳林「また消えたのか。。」










柳林 ( これは現実世界の事だけでは 解決のできない なにか 俺らの手には負えない 大きな時の力によって起きている事件なのかもしれない




こんな事言うの 自分でも馬鹿げていると思うが
稀に 神隠しのような 世にも奇妙な事件が出てくる



それでも刑事というものは 証拠探しや事情聴取を重ねる... )












───────────────




カランコロン







ゆみママ「あら~ やっだぁんっ、いらっしゃい♡ 善ちゃん、 善ちゃん、お久しぶりじゃなぁ~い。会いたかったぁん.. ♡ 善ちゃん、全然来ないんだもん。んぅ..ん。」







ここは 柳林が昔から通う スナックゆみ だ。
事件の解決に詰まったり 家の愚痴やら 事件解決して嬉しい日も ママに話を聞いて貰いに 柳林はこの店のドアをたたく。




ママは金髪に近い明るめの髪の色に ふんわりとパーマをかけていて、着物の時もあれば、洋服の時もある。今夜は着物だ。紺色の生地に白色とピンク色の蝶の柄の入った着物だ。
メイクも若い人のトレンドを取り入れて、古ぼけないように気を使っている。
控えめで 来てくれるお客さんのことを 大事にしてくれる 優しいママだ。天然でボケた発言もあるが、そこがまた可愛らしい。






店内は、ママの好きな季節の花々がいつも スワロフスキーの花瓶に飾られていて カウンターはウッディーな落ち着いた作りで、ステンドグラスのランプが置いてあり、壁にはママの好きな ピエールオーギュスト・ルノアールの抽象画が飾られている。ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏
会、舟遊びをする人々の昼食、可愛いイレーヌ、ポン・ヌフ・パリなどが飾られてある。もちろん複製だが、天才の描く色合いと人達の心情、動作や表情が穏やかに描かれていて心が癒される。そしてアンティークで でも気取りすぎず、どこか家庭的な感じもある店だ。






ママは、丸の内の1号館に昔、ルノアールの展覧会が開催されて、それを見に行ったらしく、その時 本物の絵を見て興奮して感動した話をしだすと誰も止められなかった。ポン・ヌフ・パリは、人々の晴れ晴れとした様子が細やかに、巧みに描かれていて、ママはつい、ポールと赤いロープで仕切られたエリアに 顔を突き出して見いていたら、警備の人に近づきすぎだと注意されてしまった。その話をママはする。それだけ魅力的で吸い込まれちゃったのよ と。






柳林が ニコニコして 片手をよっ。って挙げて店に入ってくる






柳林「いやいや、ここんとこ、忙しかったんだよ汗。俺もママのところに来たかったんだけど、、来れなかったんだ。やっと来れたよ」







柳林は、ホッとした表情で カウンター席についた。柳林の席は、決まっていつも奥から3番目の席だ。






ゆみママ「善ちゃん、始めは生ビール? 2杯目はいつもの麦焼酎水割りでいい..?」







ママは、柳林のボトルキープしてる酒をいくつかカウンターに並べ出した







ゆみママ「あっら~ やだー、『富士山』のボトルも善ちゃんまだ封空いてないよぉ 今夜は 2杯目はこれかしらね。 ボトル入れたまんま、ほんとしばらく来てなかったのね。」








ゆみママが あったかいおしぼりと 冷え冷えの生ビールを出す









「はい どうぞ」








柳林が手をふき、生ビールをぐいぐいっと美味そうに飲む







柳林「はぁ~ ママの入れてくれるビールはうまい」







満足気な表情で、柳林の目がほそーくなる。








ゆみママ「 ありがとう 善ちゃん。ねぇ最近はどうなの...? 」







柳林「未解決の児童行方不明の事件が なかなかの難解事件でね、、ちょっと凹み気味で 。
_(┐「ε:)_パタリなんてね 」








柳林は 話が重くならないように おどけた顔して、お通しの 三葉が上に飾られた厚揚げ豆腐の和風あんかけを 食べながら話す










ゆみママ「...そうなの... 大変ね.. 」







柳林「目撃情報も少なくて、どうして子供たちが消えたのか、、 街のあちらこちらに防犯カメラがあるんだけど、それをくまなく確認したんだが、例えば不審な車に乗せられたとか 連れ去られたとか 子供達だけで電車に乗って他の街へ行ったとか、、何も映ってないんだ」







ゆみママ「テレビのニュースやワイドショーで いまだに ずーっと毎日やってるわよ 、、そうなんだぁ、、なんだか やっかいね、、」









「元気だして、善ちゃん。 あんまり無理しないでね。ほらもうお年もお年だし、善ちゃん、体を大事にしないと。。もう頑張りすぎなくていいのよ。。」









柳林「あー、俺も、そう思うよ。体が資本だからね。 」







柳林がビールを飲み終えると
いいタイミングで ママが未開封だった純米大吟醸のボトルを開け、冷酒をだす
柳林とママは阿吽の呼吸だ。








空いたビールのグラスをほっそりとした艶っぽい手で静かに下げる








柳林「あっ どうも」







「美味いねぇ... この穏やかで、ふくらみのある味わい、たまんないね、名前も良いよね、富士山ってさ。俺もあんな風に、みんなを安心させられる揺るぎないどっしりとした存在になってみたいよぉ」







ママ「このお酒、美味しいわよね。スペインで最近、賞を受賞したらしいのよ。すごいわよね。造り手が丹精込めてお酒作りをなさっているのね。それが人々に伝わったのね。 そういう気持ち私も見習いたいわ。なかなか誰にでもできる事ではないのだけれど。。

善ちゃんもいつもまじめだもの、今までいくつもの難解事件を解決してきたから、きっと今回も上手く行きそうな気がするわ。 それにしても子供達 いったいどこに行っちゃったのかしらね..














カランコロン








ママ「いらっしゃい、、あら? 太陽くん。こんばんは。こんな遅い時間にどうしたの?」









思春期真っ只中、と言った男の子が、入ってきた。 白字のローマ字で、open seaと書かれたデザインの黒色のTシャツを着ている。








大海原「こんばんは。ゆみさん。
俺、、刑事さんに会いたくて、、」








ママ「お梅さんから聞いたのね。内緒って言ったのにな、、」








大海原「俺、良介ちゃんと竜之進ちゃんとまさるちゃんとけいいっちゃんとおんなじクラスで、、4人が急にいなくなっちゃって、、俺、心配で、、。





最近の落ち込んでる俺を見て、「太陽、トップシークレットだよ。極秘情報だ。」と言って、ママのところに時々刑事さん来るってウチのばあちゃんがこっそり教えてくれて、、。





夜の方がいるんじゃないかと思って、ばあちゃんに言ってちょっとだけここに来たんだ。お母さんに送ってもらいました。また連絡すれば迎えに来てくれるって。刑事さんと会えてよかった。。。」








ママ「そうだったのね、太陽くん。 刑事さん今夜ちょうど久々に来たのよ。タイミングいいわよ。よかったわね。



善ちゃん、太陽くんはね、ほらこの前会ったでしょ? お梅さんのお孫さんなのよ。」








柳林「あーぁ、 あのおばあちゃんには、この前助けて貰ったんだよな。こんばんは。太陽くん。
そうなんだね。内藤良介君と同じクラスなんだね。君も友達4人も急にいなくなっちゃって、辛いね。」







大海原「はい、 こんばんは。初めまして。俺、S中の1年の大海原太陽と言います。刑事さんにあの4人を見つけ出して欲しいです。刑事さんは、今まで難しい事件も解決してきたって、有名です。」







柳林「ありがとう。太陽くん、君の気持ち、おじさん、受けとったよ。頑張って捜索するからね。








大海原「ありがとうございます °(っ´ω`c)°」










ママ「はい、どうぞ。サービスよ」








大海原がズボンのポケットから1000円を出し、ママに渡そうとする。







大海原「おかあさんにお金持たされたから、ちゃんと払いますよ。」







ママ「いいわよ。私も子供たちが見つかって 欲しいし、太陽くんも元気にいて欲しいから。大人になったら 出世払いしてね♡」








大海原「はい!ありがとうございます!」







大海原はオレンジジュースを一気に美味そうに飲み干すと




大海原「夜遅いし、、刑事さんに気持ちも伝えることできたし、俺、お母さんに連絡して迎えに来てもらいます! 刑事さんがここに時々来てること、誰にも言いませんから。男と男の約束です」








柳林「あぁ。ありがとうね。 」




ママ「うん。太陽くん。いい子ね。お母さんとお梅さんにもよろしく伝えてね」





迎えが来ると 太陽くんは帰って行った。









カランコロン














そしてママと柳林はまた2人になった






「...太陽君もほんとに優しくていい子なのよ。太陽なんて月とは正反対のところにいて、切なさなんてなーんにもあの子からは感じられないんだけどね笑、名前の通り 太陽みたいにいつも 、、、。穏やかな海を照らしてる。プランクトンや微生物に日光を浴びさせて、海の生き物を元気にさせて、その微生物を小魚が食べて、小魚が中くらいのお魚に食べられて、中くらいのお魚が大きいマグロとかクジラとかに食べられて、、、海の生態系を守ってるみたく、あの子がいると、みんなが温かい気持ちになり、元気をもらえる感じよ。そんなおおらかな子なの。 ねっ、友達も大事にするわよね、こんなところまで来て、善ちゃんに気持ちを伝えに来るなんて。。」










ママはボトルの一つを指さして、






ママ「ねぇ、、善ちゃん。子供たち....このボトルに書いてある「魔王」みたく、魔王みたいな存在に どこか違う世界へ連れ去られていたりしちゃってたりしてして、、

やっだ~あん♡ それじゃぁ、まるで ファンタジーね 。わたしっておバカね。笑」





柳林がクスッと笑う
「ママの言う通り、違う世界にいるなんてこともあるのかも しれないねぇ..」




ママ「...善ちゃんが笑ってくれてよかった。
事件の話してる時はいつも難しい真面目な顔してるから、、少しでも気持ちを休めてね。 善ちゃん。」





柳林「ママ、ありがとね、またくるよ」





柳林はジャンパーをひょいっと羽織ると、ほいじゃまたっといったポーズで、片手を上げて、店から出て行った。





カランコロン..


















秋の夜風に吹かれて、商店街を歩きながら、柳林は少し火照った頬を冷ました。





「どうしちまったかな.. おれの経験と知識 まったく ヒック 今回 ヒック 役に立たねぇ 勘も働かねぇ ヒック ..」







助けたい 子供たちと その家族を。
結果がなかなか出てこなくても 粘り強く地道に
自分のやるべき使命に向かって 動こう



と柳林は、また決意を決めたのだった。













今夜も綺麗な月が出ている










つづく
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