第7話 温子

文字数 2,467文字

ゥォーーーーオッ

S中~~~~~~~ッ、

ファイ オーッ!
ファイ オーッ!
ファイ オーッ!









「はーーーい、しゅうごーーー!」







ランニングしていたサッカー部員達が、顧問の周りに集まる。





顧問「えーっ、今週末のE中との練習試合が迫ってきました。あぃ、みんな集中して練習できてます。えーっ、あと数日、ドリブル パス回し 2対2のグループ練習 ランニング 筋トレして えぃっ、仕上げていきましょう。えぃっ、当日まで怪我をしないようにな。 1人でも欠けてしまうと戦力が弱まる。サッカーはチームプレイだ。えーっ、1人では何も出来ない。えぃっ、みんなここまで頑張ってきてる。あと少しだ。あーぃ、みんなで声掛けあって、ラストスパート気合い入れてこう。えぃっ、今日はこれで解散!」




そう顧問が話終えると、よく日に焼けた
生徒たちが全員で挨拶をします。






「ありがとうございました!!!」









輪羽(わう)君「ふぅ~ おつかれさま。終わったね。なかなか 今日はみんないい動きで来た気がするよ。 この調子で 練習試合勝っちゃいたいよね」


チームメイト龍野(たつの)「そうだね。ここまでやってきた練習の成果出したいな。 顧問って、なんでいつも、えーっ、えぃっ、て言うんだろうね。俺、それが気になっちゃって、顧問が言ってること全く内容入ってこない笑」

輪羽「わかる、わかる笑」
「えーっ、おまぃら、えぃっ、よくやって
ます」

顧問の真似をする輪羽君。










輪羽君は 家に帰るために いちょう並木の綺麗な道を龍野くんと一緒に歩いて帰っていた。




通学路だ。
中学生の通学路にしては 洒落た風景の通り道で、輪羽君は好きな子ができる度に、一緒に帰ろうと この黄色いじゅうたんを見せたくて、綺麗と言わせたくて、誘うのだった。


この通りを歩くと 女の子は大概 好感触で そして輪羽君は女の子と付き合いだし、気が利く性格なため、だいたい2~3か月は交際が続いた。



しかし輪羽君は、女の子と同じくらいサッカーの事も好きだったため、サッカーにのめり込むと、彼女とのやり取りが億劫になってきてしまうこともしばしばあり、すると「輪羽君、サッカー頑張ってね。応援してるよ。」と女の子から言われて、お別れの時が来るのである。




輪羽君「あーぁ こうなったら、もう俺サッカーのマネージャーと付き合うしかないかなぁ笑 そしたらサッカーのめり込んでも いつも近くにいてくれるし。でもうちのマネージャー色気がないんだよねぇ笑」



龍野くんと話していると



横から温子(あつこ)がやってきて、輪羽くんの太ももをつねった。




温子「全部聞こえてるよぉ~ん」




輪羽君「いたたたたた、、、 あっこちゃん、あっ 聞こえてた?笑 ジョークジョーク笑 かわいいし マネージメントもしてくれるし、助かってるよぉ~」




富永温子(とみなが あつこ)は輪羽君の中学のサッカー部のマネージャーだ。 綺麗な容姿には似つかわしくなく、男っぽい性格をしている ショートカットで顎のラインと細めのうなじ周りがさっぱりとしていて、美しく 喋らなければ かなりモテると思われる。



富永温子は 部員達の間では、世話好きの温情のあるお母ちゃんといった存在で、明るくて、優しくて、気がついたら温子さんがユニホームの洗濯やら試合結果やそれぞれ選手の弱点、強化ポイントなどの記録を、やってくれてあると言った感じで、みんなの知らぬ間にさりげなく部員達のサポートをしている縁下の力持ち的な気配り屋さんなのだ。






いちょうの並木道を過ぎると 龍野くんとは、ここでお別れだ、分かれ道になる




輪羽君「じゃぁね、また明日! 夜は家でお互い体幹トレーニングやろっな」


龍野君「あぁ、輪羽君、また明日も朝メールするね。」


輪羽「おぅ。待ってるよ。ありがとー。『おはようございます。よろしくお願いします』ってお馴染みのやつ。 龍野君から朝メール貰うとなんかほっとするんだよね、今日も始まった!って感じで。また明日~!」




そんなこんなの、安定したコミニュケーションを取り合うS中サッカー部なのです。




輪羽君は、、 (そういえば、クラスメイトの大海原(おおうなばら)君 °(´ω`*)° に 鬼滅の刀とルパンのマンガ本借りてるから、そろそろ返さないとなぁ) なんて思っていた。









温子と輪羽君は2人っきりになった





温子「ついにあと3日後だね。みんなここまでよく練習頑張ってきたよね。」





輪羽君「うん、そうだね、 コーチが鬼になっても、必死について行ってるよね、みんな。 コーチのこと信頼してるんだよ。あの人のやり方にみんなついて行きたい、そしてコーチに優勝の景色を見せてあげたいって、思ってるんだよ。」







温子「輪羽君」





輪羽君「なに?」







温子「今度の試合が終わったら 私と付き合ってください」






それは青天の霹靂だった






突然 青い稲光が シュシュシュンッと輪羽くんの頭上に落ちてきたような衝撃だった






告白だよな、、これって。





告白ってもっと モジモジと言い出すのに勇気いるから時間かかったり、表情だって赤くなったり 照れたり うつむき加減でするもんじゃないの、、?




温子のやつ、淡々と まるで 「いただきます」と食事の挨拶みたいに 言うじゃんか。




あれ?聞き間違いか、、
今度の試合終わったら私と食事に行ってください だったか、、?




そんなことを輪羽君が考えていると





温子が「返事はいますぐじゃなくていいよ、待ってるよ」







輪羽くん「、、、わかったよ、 」






少しだけ気まずい空気が二人の間に流れた






その時です







温子の目の前で
輪羽君の姿がパッと消えたのです




輪羽君が 今の今まで持っていたサッカーボールが 空中から地面に落ちて







ストォン...トォン..

トォン..トォン... トォン..

コロコロ








と転がり温子の足元に止まりました。










温子「、、、え?」













つづく
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