第8話 捜索本部

文字数 3,299文字

静岡県 児童5名 行方不明 特別捜索本部




内藤 良介 13歳 男児
米澤 竜之進 13歳 男児
輪羽 敬一 13歳 男児
月嶋 優 13歳 男児
高美ほのか 7歳 女児





本間「ないとう りょうすけ 13歳 男児、 よねざわ りゅうのしん 13歳 男児、わう けいぴいしゃ..いや、けいいち13歳 男児、つきしま まさる 13歳 男児、そして、、はいび..あっちがう、たかみ ほのか 7歳 女児、以上が今回 消息不明の児童5名です」



柳林「大丈夫か..本間。」

本間「さーせん、ちょっと寝不足で..」


柳林「連日の捜査で疲れ出てきてるな..お前も休める時休めよ」

本間「あざます」



本間「図書館の前の公園のベンチで 男子中学生と小学生低学年の女の子が話をしていたのをみたと 言う目撃情報が新たに今日入りました」




柳林「なるほど、2人は一緒にいたということか。 内藤くんの母親に聞いたところ、図書館に向かっていたということだったのだが、2人は別々に図書館にいたわけではなく、会っていたんだ。」




柳林「他に有力な情報はないのか?」



本間「はい、米澤くんの母親の話では、失踪する前に おにぎり専門店にこれから行くと嬉しそうに電話で話していたというのです。生きることが辛くて 思い悩んでいるような人が おにぎりを食べたいと思わないでしょうから、 自害の可能性は極めて低くなります。」




柳林「ふむ」




こう会話しているのは、今までいくつもの難解事件を解決してきた定年まじかの敏腕刑事の柳林善次郎(やなぎばやしぜんじろう)と今年入ってきたばかりの新米刑事 本間典健(ほんまのりたけ)だ。




今回の事件に 敏腕刑事の柳林も 頭を抱えていた。とにかく 目撃情報が少なすぎる 消えた子供5人の行方を わずかな情報を繋ぎ合わせて 導きたいのだが、なんせ 点となるものが 少ない。





日が経つにつれ、生存確率も低くなっていくし御家族の気持ちを思うと 早く見つけ出してあげたいという任務と責任と感情に駆られる。




時間が経てば経つほど、情報は古くなり、見つけ辛くなっていく。時間との戦い。 ただ焦りと苛立ちだけが増えてしまい、それではいけないと冷静さを保つ柳林である。





柳林「 本間、コーヒーでも飲むか?」




本間「あ、ありがとうございます いただきます」




本間「柳林さん、先日の横浜・関内、くまさんわんちゃん事件、やっと落ち着いて、ほっとしましたね。おつかれさまでした。」




柳林「あぁ。本間もよく調査したな。経験を増やし、知識を増やして、そうやって少しずつ自分の武器にしていくんだ。若い時は俺も、情報収集、聞き取り、証拠探し そんなもんに明け暮れた」





本間は 最近は、やみくもに 手当り次第 当時周辺にいた人達に 質問したり話をしている。 今自分が出来ることは それくらいだ。長年の勘なんぞ ないし、
弾をたくさん撃てば、なにか当たるだろうと必死になって 探した。
この令和の時代に珍しい熱血な若者だ。




柳林も本間も並行して、いくつもの案件を抱えている。




柳林「...それにしても、どこに消えたんだ」





本間「子供達だけで秘密基地などに篭って家出もしくは夏休み最後の冒険に出ている可能性も考えたのですが、、食事や風呂のことを考えると、やはり誰か近くに大人がいる可能性が高いと。 家出と誘拐と両方の可能性を考えて捜査しています。中学生達は非行に走っているかもしれませんので更生保護観察委員の酒井さんにも声をかけてあります。」



柳林「酒井さんか....酒井さんなら安心だな。 心に傷を負って閉ざしてしまい、大人にナイフを向ける子供たちの心に 寄り添ってくれるから人だからな。そんなナイフは必要ないんだと。君は変われる。1番大事なのは 人を思いやる心なんだと。俺も昔、世話になった..笑」





──────
人は変われる。せっかくこの世に生まれてきたんだ。自分のために家族のために人のために世のために わずかでいいんだ、何か 人を思いやる行いをしていけば、それが必ず時間はかかっても自分にもその思いやりが返ってくる。見返りは求めずにやるんだ。辛い時もあるよな。ムカつく時もあるよな。そんな時は休んでいいんだ。俺は少なくともお前の味方だ。そして生きろ。死んだら家族や友人は悲しむ。命を大事にして人のため自分のために生きろ。自分を理解して貰えない時は離れればいい。お前が真っ当に生きていれば、おまえの存在を認めてくれる場所や人なんて、いっくらでもあるし、いる。狭い空間の中しか目に見えてなくて、まだお前はそういう人に出会っていないだけ。神は見てくれている。それで余裕なんぞものが出て来たら、良き友を作って、笑って過ごすんだ。大丈夫だぁ。

少年時代、ちょっとヤンチャしていた柳林も 当時、親身になってくれた保護観察委員に諭され、今はりっぱに人のために自分のために生きている。
──────





柳林「4人の中学生は友人という繋がりがあるのだが、小学生に関しては、この子達とどのような関係なのか?」




本間「高美ほのかさん 小学2年生。母親のなつみさんと話をしたのですが、3ヶ月くらい前に 狩野川の土手をほのかさんと歩いていた時 中学生4人と 好きな絵本の話で 交流があったらしいんです。」



柳林「 本間!! それをなんで早く言わない! 有力情報だぞ 」




本間「すす、すみません。情報収集にばかり気が向いていて、報告が遅れました」




柳林「集めるだけ集めて、報告が遅れるってどういう事だ?! ふざけてるのか。。 一刻も早く救出したいんだよ。気をつけろ。」


本間「はい、以後気をつけます」


柳林は捜査には熱い本意気だ。
叱咤激励され、本間は成長していく。
そして柳林は、でもいつまでもぐじゅぐじゅと怒っていたりはしない、長い時間は要せず、知らぬ間に優しい柳林に戻る


柳林「あと、、刑事の名誉にも関わってくる。俺はそんなことは考えたくはないが、上の天下りが結果ばかりを急いで求めてきて、うるさい。何かしらこちらも報告をしなければならない。めんどうな話だ。失踪者を見つけ出したい被害者を助けたい、警察も初めはそう真心から始まったものなのに、組織が大きくなればなるほど、人の気持ちなどはおざなりになり、明確に目に見える結果数字だけが重要視されてくる、それが結局御家族やご本人の求めてることに繋がって来るから、間違ってはいないのだが。。。しかし、情報を手に入れるまでの過程が、たとえば辛い状況下の中情報を喋る人の気持ちや 時間や 体力など、組織が大きいとどうしても軽視されがちになってくる。 刑事も自営業で自分のペースで出来ないものか。。なぁっ? 本間 、そう思わないか。笑 」


本間「はい、自営業のこじんまりとした刑事屋。いいっすね。いなくなった猫の捜索とか、そのくらいしかできないかもしれませんが笑 それって刑事じゃないか..違う職業になるのかな..でも、猫の捜索だって、飼い主からしてみたら大事な猫を探し出して欲しいということなのだから、人に必要とされる立派な仕事ですよね。」


柳林「そうだな。 本間。それも大事な仕事だ。

事件は大きな事件になればなるほど、大きな力がないと、多くの捜査する人間も必要だし、費用もかかる、、 寄らば大樹の陰でな、やはり この家業は 組織が大きければ、解決も早くなるという事だ。

それにしても、、、 ということは少女も含め 5人は全員顔見知りの友達だと言うことだ。」







内線が鳴る ピピピピピ







「はい、 柳林だ」


事務員「柳林さん 来客者がお見えです。そちらに通しますか?」


柳林「はい、そうしてくれ 頼みます」






柳林と本間の前に現れたのは、






女子中学生だ




ショートカットの快活なボーイッシュな女の子
顔立ちは中学生にしては大人っぽく美人だ





「はじめまして、わたし富永温子と言います。
刑事さん、 信じて貰えないかも知しないけれど、、、輪羽君は 私の目の前で 消えたんです」





本間は目を丸くして驚く、





柳林は こりゃ 大変なやっかいな事件になりそうだな また頭痛が増すな と頭を掻き、
眉間に皺を寄せた。










つづく
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