第13話 冷たい秋雨の降る公園

文字数 2,247文字

雨がパラパラと降ってきた





すっかり暗くなってしまった







おれは塾に遅れてしまうな と足早に歩く








あれ?
こんな所に公園なんてあったっけかな。今まで気づかなかっただけか、、 。







雨が強くなってきた。



屋根付きのベンチに 一人の女が雨宿りか、
座っている。





大体、素敵過ぎる人がベンチに座っていても、近づいておしゃべりしてみたいと思っても、普通は緊張して 遠くから見るくらいしかできない。
人は それを ツンデレと言う。







しかし 今夜の俺は、何か不思議な力に引き寄せられるように 自分も雨宿りをした方が良いかもと、ふらっと 公園のベンチの方へ足が動く、寄り道をしてしまう。







長いストレートの黒髪、肌は陶器のようにきめ細かく青白くみずみずしく、丈の短い 黒いレースのワンピースをまとい、そこからちょうど肉付きの良いスラっとした足が見え、黒色にシルバーのバングルの付いたハイヒールを履いている。胸元の広く開いたデザインのワンピースからは、ふくよかな、品の良いこぼれるようなしなやかな身体が 妖艶に盛り上がりを見せている。雨に濡れた肌が一層 艶っぽさを増し、 俺はその女に釘付けになった。






女「 いやぁ....
雨降ってきちゃいましたね... 」




女は少し すねた表情で、空を見上げながら柔らかい声で言う。
俺は 綺麗な色白の女の伸びた首すじと上を向く唇に
見とれしまった。




そして予想外にもその女から
俺に声をかけてきたので
心臓のドキドキに拍車がかかった。
しかし平常心を失ってはいけないと、いつもそう思いながら生きてきた俺は、この時も 冷静を装った。





「そうですね.」




俺は返事をして
女の方をじっと見ると




横顔は形の整った鼻から口にかけて
美しいラインで
口角がキュッと引き締まってるが、
ぽってりとした柔らかそうで
感度の良さそうな唇に 真っ赤なルージュ。
どこか寂しそうな冷めたように見える
伏し目がちな目線。

まつ毛は長く、大きく濡れたように見える目も、肌も、公園の電灯に照らされて、煌めいていた。

さらに彼女の肌についた雨粒と同じ様に、触れられぬ彼女を自分も触ってみたいという思いが湧いてきた。
俺に触られた彼女の恍惚とした表情を想像した。彼女はとても官能的で、美しく握りたくなるような すらっとした手の指の先には、真っ赤なマニキュアが塗られている。
中学生の俺には少し刺激が強すぎるようで、
俺は たじろいだ。






ただ座っているだけの物腰なのに
ゾクッとするほどの色気に満ちた雰囲気のある人だった




そして何を考えているかわからなく
とてもミステリアスで
孤独な深い闇を抱えている様にも直感で感じた。 そばに居たら 守ってあげたいと
誰しもがそんな気分にさせられると思う





かなり雨に濡れてしまったらしくワンビースの裾が濡れてぐっしょりと腿にくっついて、透けて見えた





淫らだ。



いやいや、変なことを考えるのはよそう。








「 良かったらこれ、使ってください 」


俺はポケットからチェックのハンカチを出して、その女の人に差し出した





「これもよかったら」


さっきコンビニで買ったフィナンシェとマドレーヌが少しだけ潰れて出てきた。






女が微笑む







女「 ありがとうございます やさしんですね.. 秋の雨は濡れると寒くて.. 風邪をひきそう.. 」




女は肩をすぼめて、寂しげな表情をする。




女「 .......あなた.. 仲良しだった人が急にいなくなっちゃって、、、 すごく 寂しい思いしたこと ある..? 」







女が突然、前置きもなく質問してきた。
俺は答えた。



「う、、ん、まだそういうことは、ないかな、、、」























女「 そう。ないの..。 わたしは、 あるの。 私は、その日から ずっと、 心に穴が空いちゃって、、 色々試すんだけど、 ずっと 埋まらないの。この気持ち、、 あなたに、 分かる...? 」
























「 そうですか、、急にいなくなっちゃうのは、寂しいかもなぁ 」









女「 そうでしょ?! わかるのね。 わかってくれる、、? 私の 気持ち。」




「 全部は分かってあげられていないのかもしれないけれど、 分かりますよ。」





女「..うれしい。」











女 ( ───決めた。


私が王座についたあかつきには、この男を私の横につかせよう。)









すると雨雲がみるみるうちに、風に流され、土砂降りの雨がサッと止み、空に満月と星が顔を出した。


まるで誰かが空を操っているかのような気味の悪いほど不思議な天気だ



女「 あなた お名前はなんておっしゃるの?
見ず知らずの私に親切にして下さり ありがとうございました。ぜひお礼をさせて いただきたいの」






女は俺の目をじっとみつめながら話す







女は近づいてきて 俺の肩に 両腕をまわす。
女が前のめりに寄りかかってきて、顎を俺の肩に乗せる。柔らかいものがあたって、女の息づかいが耳にかかると、中学生の俺は どうしたらいいか わからなくて 立ち尽くすしか できなかった。






おれは次の展開がどうなるのか
淫らな想像したからか 目眩がしてきた。







思春期の多感な時期だ、仕方がない。













女の声が遠のく
俺の意識が薄れていく...















───満月の夜にその女と目を合わせると 元々の精神も肉体も破壊され、全てを 妖魔に支配されてしまう───
















「オレノ ナマエハ ツキシマ マサル」







女「月嶋... わたしのそばに、ずっといてもいいのよ。」







月嶋君「 ハイ」










月嶋君の白目が、灰色と赤色のマーブル色に、黒目はゴールド色に変わり果てた。










つづく
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