第20話 青春してやがんな
文字数 2,115文字
オシャレな回転ドアを通って3人は店内に入る。
高い天井には豪奢なシャンデリアがぶら下がっており、茶色を基調とした店内を温かな光で照らしていた。
晴朗太と純朗がぎこちなく待つ中、恋々子は精一杯背伸びして、店内にいるお客の顔を見渡す。
と案の定、知っている顔の数が6人。
あちらも目礼するだけだったので、恋々子は大人びた態度で返す。
少し離れてはいるが、目の届く距離。
晴朗太はスルーできず、指さし声にだす。
が、恋々子はスルーを推奨する。
わざわざ釘を刺さされた手前、大人しくするほかなかった。
中高一貫組とは別の生徒会なのでさほど絡みはしなかったものの、何度か壇上で拝見した記憶がある。
とても言い争いができる店内ではなかったので、晴朗太は素直だった。
上等なソファ席に脚の高い椅子が供えられたカウンター席。
見た感じ、学生と呼べる顔ぶれはなく大人たちが談笑している。
その為、本来なら晴朗太たちは目立っていたかもしれない。
だが、先に似たような顔ぶれが多く揃っていたからか誰も気に留めない。
しかも、その内のひとりが金髪の外国人なのでなおさらだ。
藍生ともうひとりも揃って大学生に見える。
ジャケット、襟付きのシャツ、スラックス、ローファーと似たような感じだが、自分なんかとは着こなしが違う。
これがオシャレかと晴朗太は圧倒されながらも、
内心で吐き捨てる。
藍生と同席している女子3人が美人だったからだ。しかもその内のひとりは明らかに外国人で、金色の長い髪が遠目からも眩しい。
そんな本物の美人と同席していながら、他の女子たちも色褪せていない。
居心地の悪さというか緊張感こそ感じられるも、卑屈な気配はない。
積極的に口も動いており、ただの置物ではないことが遠目からでもわかった。
それぞれが食事を堪能しデザート。
兄と弟はコースに含まれている小さなパフェだが、恋々子は追加料金を払ってのデセールなので、これまた豪奢だった。
単品で2千円を超えるだけあると、晴朗太も認めざるを得ない。
スープを注げるような深皿に白桃が丸ごと1個。
ナイフを入れると、中からバニラアイスとフランボワーズのソースが溢れでてくる。
他にも桃の冷製スープにかき氷のような氷菓。
そして、飾りの飴細工と知っているデザートを超越していた。
それでも、コースの締めに食べたいと思える量ではない。
恋々子は余裕のようだが、晴朗太は小さなパフェで充分だった。