第16話 メンズファッション

文字数 764文字

男性がオシャレと思われるには3つの方法があるんだってさ
 ショッピングモールに着くなり、恋々子は説明する。

ひとつは常に流行を追い求め、迎合する。

いわゆる、モードファッション

 そうすれば本人の容姿に関係なく、評価する人が一定数現れる。

次に、ならではのセンス。

自分の個性を活かしたり、他人には思いつかない組み合わせを見出すこと。

最近じゃ1ジャンルになってるっぽいけどサロン系とか

 もっとも、それなりの才能が必要である。

そして、最後が普遍的なファッションでクラシックやカジュアル

女子の間じゃ当然なんだけど、世界観を決めて統一するの
 ガーリー、フェミニン、コンサバ、キレカジ、モード、ストリート――恋々子は呪文のように羅列する。

一応、男性にもそういうジャンルはあるみたいだけど、あまり聞かないから止めたほうが無難かな。

兄ちゃんみたいなタイプだと、頑張ってる感が半端ないから

ほっとけ
じゃぁ、カジュアル?
結局、カジュアルか

 ジャンルとしては今と変わらない。

 無地のTシャツにジーンズとスニーカー。

ノンノンノン
 短い指を振りながら、恋々子は舌を鳴らす。

カジュアルは無難ゆえに被りやすく――

他の人と比較されやすいから、止めたほうがいいってさ

 その言い草からして、これまた『先輩』の助言なのだろう。
並べられると『素材』の質がバレちゃうから、折角のオシャレが他人の引き立て役で終わっちゃうの
あー……
……ほっとけ!

 だが、晴朗太にもわからなくはなかった。

 どうしたってカジュアルは被りやすいし、似たようなファッションになりがち。

じゃぁ、兄ちゃんみたいなのはどうすればいいの?
(みたいとはなんだ、みたいとは……)
 殴ってやりたいが、ここまで大人げない態度を取ってきた手前、晴朗太は我慢する。

クラシック。

誰が着ても格好良く見える、無敵のスーツを意識すべし!

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登場人物紹介

晴朗太《せいろうた》、染谷家長男で大学1年生。

ブライダルのバイトに勤しむ、真面目で優しい性格。

ただその一方で甘くもあり、妹の我儘を助長させる要因を作っている。

苦肉の策で妹に頭を下げ、現在はオシャレを勉強中。

恋々子(こここ)、染谷家長女で高校2年生。

私立高校を一芸入試で突破し、部活動はディベート部。

我儘で自由気ままであるものの、弟のことは溺愛している。

それでも、一番大好きなのは自分自身の模様。

純朗《すみあき》、染谷家次男で中学2年生。

思春期の少年の割には素直で大人しい。

姉の教えのおかげで、年齢にそぐわないオシャレを身に付けている。


空条 日菜子(くうじょうひなこ)、20歳

晴朗太の想い人で同じバイト先の先輩

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