第10話 バレちゃった?
文字数 1,506文字
晴朗太のお化粧生活は中々に大変だった。
恋々子の指摘通り、気づかぬ内に顔に触れる癖があるようで何度も何度も鏡を見る羽目に。
結果、そこで身だしなみを整えることにも繋がり――他人からの視線を意識する癖が身についてきた。
予想以上に他人は自分を見ておらず、接近する相手もいなかったのですぐさま杞憂に終わる。
あとは単純な時間。
朝起きて、学校に行くまでに必要な作業が増えたので、早起きを余儀なくされた。
幸いにも今日の披露宴会場は広く、周囲に人はいない。
スタッフの多くは人材派遣なので、披露宴の終了――片付けが落ち着く頃には、いなくなってしまうからだ。
そして派遣ではない僅かなスタッフたちは、それぞれ仲の良いグループで固まっていた。
しかも、それらは日常ではあり得ない光量なので自分では気づけなかった。
一方、先輩は軽かった。
実際、忙しい時は殺伐とする披露宴において彼女は皆の癒しとなる存在でもあった。
――つまり、仕事もできる。
特に観察眼に優れており社員や後輩、果ては部署をを問わず周囲のミスに気付いてはカバーをしていた。
突然、先輩は訊いてきた。
中学から大学までエスカレーター式。
ちなみに、純朗もその予定である。
対して、恋々子は中学受験を失敗しており、高校から外部入学していた。
もっとも、内心では好きな先輩に褒められて嬉しかった。
中学受験をした身からすれば、一芸で受かった人間など許せるはずがない。しかも、それが同じ神香原の名前を背負うなんてあり得なかった。
晴朗太の気持ちを察してか、先輩は話題を変えた。
高校生の妹に教わっているのは、さすがに恥ずかしくて言えなかった。