自分ができないことを、なんで上から目線で言えるかな?
はい、嘘ー。
学校内で女子と一緒のとこすら、見たことありませんけど?
だから?
体育祭や文化祭で見かけなかった時点で、関係ないと思いますけど?
あ、受験生だったって言い訳は結構ですからー
ショッピングモール内で、しょうもない兄妹喧嘩。
弟は居心地が悪そうに距離を置き、
ここが家ではなく、公共の場であることを思い出してか恋々子はフリーズした。
次いで自分の携帯を見て、首を傾げる。
と、純朗が差し出した携帯から嫌な声。
『コケコッコー。自分の住処以外で騒ぐな。迷惑だぞ』
相手は言いたいことだけを言って逃げていた。
思いきや、追い打ち。
今度は恋々子の携帯にメッセージが届く。
周囲を見渡すと、それっぽい人影を発見。
あの背の高さ――同様に連れているふたりの女性からして、間違いないだろう。
が、いかんせ距離があり過ぎる。
それにフロア自体違うので、追いかけて間に合うとも思えない。
『その言葉、そっくりそのままお返しします。先輩こそ、恥を知るべきです』
なので、メッセージを返すにとどめた。
しかし、すぐさま返ってくる。
『俺は恥の合理化ができる。けど、おまえはできない。TPOって知ってるか? タイム、プレイス。さて、最後はなんでしょう?』
見透かされていることすら腹立たしくて、恋々子はさっきまで喧嘩していた兄に助けを求める。
『俺の知っている馬鹿曰く、おけいはん、って憶えるといいらしいぞ』
『あと本気の忠告。コケコッコーのままで行くなら、店は選べよ。迷惑になるからな。わかったか? 恋々子ちゃん』
その後はいくらメッセージを送っても、返ってこなかった。
なんでって、教えてくれって頼まれたから。
それにお姉ちゃんは注意力散漫で忘れ物が多いし……
家から学校、学校から家――何度か忘れ物を届けて貰ったことを思い返してか、恋々子は詰まる。
そして、中等部の人間にしてみれば高等部の教室に行くよりも部室のほうが楽という理由から、先輩たちと面識があったという次第だった。
それから、恋々子ちゃん言うな。
あの先輩が人をちゃん付けで呼ぶのは、馬鹿にしている時なんだから!
で、兄ちゃんやお母さんたちが『ちゃん付け』するのは、わたしを子ども扱いしている時
恋々子は盛大に唸り、溜息を吐いて、落ち着きを取り戻す。
あー、お姉ちゃん。
予定していた店って、藍生先輩たちもこれから行くのかな?
なんか、来るなら早く来いってメッセージが……
携帯とにらめっこしていた純朗が言い辛そうに添える。
んー……先輩に教えて貰った店だし、偶然の可能性もなくはないけど……
絶対、ワザとだ。
今日、行くの知ってるはずだもん!
が、恋々子は嫌がらなかった。
むしろ、冷静に頭を働かせる。
とはいえ、時間帯とコースは伝えていないので、推測されたのだろう。
もしかすると、先輩たちは暇つぶしにディベートしたのかもしれない。
染谷恋々子が、どういったプランを組み立てるかどうかを。
その予感は正しく、恋々子たちがお店に着くと顔見知りが大勢いた。
中には純朗の想い人もおり、
染谷家の3兄妹弟は、それぞれ居心地の悪さを覚えるのだった。