第23話 格好つけるのは男の特権
文字数 1,942文字
呼びに行くのを面倒くさがってか、恋々子は大声を出した。
人が行きかう街道の真っただ中、
藍生先輩のご指名。
癒しキャラとして、同行して欲しいんだってさ
先輩たちの中に莉子ひとりだと気を遣うだろ?
だから、おまえも来い
……本当ですか?
会長と副会長は知りませんけど、ディベート部の人たちなら気を遣わせることはないと思いますけど?
もち、弄る。
つか、弄ってやらないとおまえだんまりで喋らないだろ?
このチャンスを活かすよりも、自分のプライドを優先させたいならそれもいいがな。
その身長で人目に触れる立場になるつもりなら、恥の合理化くらいできたほうがいいぞ
莉子と並んだら、嫌でも弄られる。
おまえだけでなく、莉子もな。
そんな時、彼女のフォローもしないでただ自分を慰める気か?
虐めてねぇよ、ただの忠告だ忠告。
コンプレックスを気にしている姿は醜いか可愛いのどっちかだ。
そいつが非凡なら安心を与えるが、そうでなければ付け入る隙にしかならねえってな
確かにそうかも。
でも、大丈夫。
純くんの場合は、もちろん可愛くて安心感を与えるほうだから
おまえは知らんかもしれんが男の嫉妬、競争心も中々に醜いぞ。
年下に絡む男は特に最悪だ。
で、ウチは中高一貫だからその手のクズもそれなりに多い
結局、同年代の人間と恋愛できない奴が年下や年上に手を出す。
つまり、良くも悪くも同年代から弾き出された人間だ。
問題があってしかり、だろ?
簡単な話だ。
年上はおまえの我儘を許せる。年下は許容せざるを得ない。
けど、同年代は無理だ。
実際、おまえ同学年に疎まれてんだろ?
疎まれてませんっ!
ちょっと女子から嫉妬されて、男子から引かれてるだけです!
……そりゃまぁ、そうですけど。
そんなの当たり前じゃないですか!
そう、当たり前だ。
同年代は対等ゆえに、自由に振舞う傾向が強い。
結果、どうしたって揉め事が多くなる。
そして、それを避けようと年上や年下とはまた違った気の遣い方をする
あぁ、そうだ。
そして、そこで切磋琢磨できなかった人間が年上か年下に逃げる。
すなわち、対等な人間を素直に認められなかった連中だ
それは違います!
恋愛は理屈じゃないんですよ?
それに成長速度は人それぞれです。個体差を無視して語れません
ディベートにおいて感情的な言い分は認められないが、使いどころを間違えなければ強力な武器になる。
とはいえ、マニュアルに拘る人間には絶対に使えない。
……というか、おれを放ってディベートを始めないでください
ここで純朗が口を挟む。
正確には、やっと挟む隙ができた。
はい。だからこそ、おれも同席できるんですよね?
だから、お礼を言っておきます
純朗、格好つけんのは男の特権だぜ?
隙あらば、おおいに恰好つけろ
ちゃんと返してくださいよ?
できれば、お土産も持たせて♪
了解、ココ。
つか、いつまで兄貴を放っとくつもりだ?
ずっと、こっち見てるぞ
ひでー、妹だ。
でも、許してくれんだろ?
じゃないと、おまえがここまで我儘に育つわけないもんな
そうか?
一緒に暮らしてなくても、ウチの義妹たちは俺の影響受けてるんだが
そりゃ、藍生先輩は質の悪い猛毒ですからね。
ウチと一緒にしないでください
とはいえ、無意識の内に歩幅は揃っていた。
それは染みついた習性のように――
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