第25話 初めての美容サロンwithフェイシャルエステ

文字数 1,976文字

 メンズエステに行く前に、晴朗太は予行練習――簡易エステも受けられる美容サロンに来ていた。
すいません、予約していた染谷ですけど――
 これまで来たこともないオシャレなお店。

 匂いも良く、店員さんも奇麗である。

はい。

染谷恋々子さんのご紹介で間違いありませんか?

はい、そうです
 そう言って、晴朗太は妹から渡されていた紹介カードを提示する。

ありがとうございます。

それでは、まずはこちらにご記入お願いします

(しかし、こういう店はこんなアンケートみたいなのを書かないといけないのか)

 正直、自分の髪質をなんて説明すればいいかわからない。

 更には、使用しているシャンプーや整髪剤。

 アレルギー反応などなど、不明な点は多いものの晴朗太は空欄を埋めていく。

それでは、ご案内いたします

(場違い感が半端ない……客も店員さんも奇麗すぎる)

 案内が終わるまで、晴朗太は落ち着きなくきょろきょろしていた。

本日、担当させていただく瀬尾です。

よろしくおねがいしますね

え、あ……はい
本日はどのようにしましょうか?

 そうして、やっと慣れた台詞。

 今までは適当に、全体的に数センチ切ってくださいと頼んでいたが今日は違った。

こういう感じにセットしたいんですけど?
 妹の恋々子が見つけてくれた写真である。

 イケメン過ぎないモデルのおかげで、晴朗太は堂々と提示できた。

拝見いたしますね。

これだと前髪は切らないで整える程度になりますけど、よろしいですか?

はい。

あんまり、こういうことに詳しくないんで細かいところはお任せします

わかりました。

では、はじめちゃいますねー

(店員のタメ口はないと思ってたけど、これは悪くないな)
 女友達と喋っている感があって、晴朗太は満足していた。
ココちゃんとすみくんのお兄さんなんですよね?
えっと、はい
ふたりとも、私が担当させていただいてるんですよー

そうなんですか

(……会話が続かん)

 せっかく共通の話題があるのに、晴朗太は気の利いた台詞が何も言えなかった。

でも、ココちゃんにお兄さんがいるなんて知らなかったなー

はは、そうですか

(ココのやつ、マジで隠してやがったのか……!)

 ここを紹介する時もしつこく、
いやだけど……ほんとうは嫌なんだけど……
 繰り返していた意味を晴朗太は痛感する。
えっと、妹はふつうに来たんですか?

ううん、ココちゃんはクーちゃんの紹介でしたよ


へー

(なんだ、ココも友達の紹介なのか)

まぁ、そのクーちゃんも紹介で……お兄さんも神香原の生徒だったら知ってるかな?

藍生羽央くん。

もとは彼の紹介なんです

へー、男性でも来る人はいるんですね……

(あのガキ、こんな所に来るだけでなく紹介できる女がいるなんて)

男性も来ますよ。

まぁ、羽央くんは小学生の時に紹介されて来たんで珍しいですけど


小学生……

(あいつマジでなんなんだよ)

しかも家政婦さんの紹介だったんで驚きました。

一応知ってはいたけど、本当に家政婦さんっているんだなーって

それは驚き、ですね

(家政婦ってメイドか? あの野郎マジでなんなんだよ……)

それも高校生の女の子がやってたんでほんともうびっくりでした

ははは……

(JKメイドとか実在したのか?)

(というか、なんでよく知りもしないあの男の話題なんだ……)

 晴朗太がそんなことを思っている内にカットは終了。

眉を整えますねー
シャンプーしますよー
ドライヤーが終わったら、フェイシャルエステに行きましょう
(……まさに極楽)

 奇麗な女性に接近され、髪を優しく洗ってもらい晴朗太は満足だった。

 フェイシャルエステは何やら蒸気を当てられたり、美容マスクをつけるだけ。

 資格の問題か、肌への直接的なお触りはなかった。

こちらローズヒップティーです。

ビタミンCの爆弾とも言われていて、お肌にもいいんですよ

(ドリンクサービスまであるなんて)

 飲み終えると、最終チェック。

 細かな毛先などを整えられて、スタイリング。

ふだん整髪料は何を使っています?
えっ、いや……特になにも

じゃぁ、初めてですか? 

私が選んじゃってもいいです?

はい、お願いします

(なんかいいな、この感じ)

色々あるけどワックスが無難かな?

量はこのくらいでーこうして……

(ドライヤーの時も思ったけど、無理だな。覚えられんぞ、こんなの……)

はい、完成です。

どうですか?

大丈夫です、ありがとうございます

(再現は難しそうだけど、カッコいいじゃん俺)

それじゃ、最後にマッサージをさせていただきます

あ、はい

(マジか? おっおっおー、肩を揉まれるのがここまで気持ちよいとは)

 肩と首を少しマッサージして貰っただけなのに、晴朗太は身体のコリがすべてなくなったような気がした。

お疲れさまでしたー

これにて終了です

ありがとうございました
 そのままお会計を終えて、晴朗太は思う。
(今回は初回やら紹介プランで安かったけど……まぁ値段ぶんの価値はあるかな)
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登場人物紹介

晴朗太《せいろうた》、染谷家長男で大学1年生。

ブライダルのバイトに勤しむ、真面目で優しい性格。

ただその一方で甘くもあり、妹の我儘を助長させる要因を作っている。

苦肉の策で妹に頭を下げ、現在はオシャレを勉強中。

恋々子(こここ)、染谷家長女で高校2年生。

私立高校を一芸入試で突破し、部活動はディベート部。

我儘で自由気ままであるものの、弟のことは溺愛している。

それでも、一番大好きなのは自分自身の模様。

純朗《すみあき》、染谷家次男で中学2年生。

思春期の少年の割には素直で大人しい。

姉の教えのおかげで、年齢にそぐわないオシャレを身に付けている。


空条 日菜子(くうじょうひなこ)、20歳

晴朗太の想い人で同じバイト先の先輩

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