第2話 染谷家の子供たち
文字数 1,237文字
この春から、大学生になる。
とはいえ、エスカレート式に進学したので見知った友人は多い。
それでも、初めての出会いもあるのだから晴朗太は珍しくオシャレを試みていた。
洗面台の前で髪を触っていると、妹の
兄の目から見ても可愛いものの、高校2年生にしては色々と足りない容姿。
背も胸もミニマムサイズ。それでいて髪の毛を染めたり巻いたり、兄から見れば不必要なオシャレをしていた。
晴朗太は怒鳴り散らしたい気持ちを必死で抑え込む。
もう大学生になるのだ。
いちいち、妹のやることに腹を立ててはいられない。
髪の毛のセットを終え、調子に乗っていた晴朗太は眉毛に手を付けてみる。
はみ出したムダ毛の処理ではなく、形そのものを変えようと……
それでも、じーと見てくる。
兄には理解できない洗顔をし、純朗は顔をタオルで包み込むように拭う。
その後も化粧水などを付け、晴朗太の癪に障る。
いったいどういう髪質をしているのか、ゆるふわである。
目もパッチり二重で涙袋も大きく、兄の目から見ても可愛らしい。
いつも、このパターンだった。
この家において妹は何をしてもいいと勘違いしているのか、平気で父や兄の悪口を言う。
そして、弟は男でありながらも母や妹側の人間。彼女たちのメッセンジャーとなり、いちいち小言を伝えてくるのだった。
自分に言いきかせ、晴朗太は自制する。
ここで恋々子を怒ったら、それこそいつものパターンになってしまう。
吐き捨て、晴朗太は新しい世界へと飛び出していく。
――そう、この時には微塵も思っていなかったのだ。
まさか大学生にもなって、今まで以上に妹弟と関わる羽目になるなんて……。