第14話 母親が買った服はどうしてダサいのか
文字数 2,248文字
先輩にアドバイスを貰った翌日。
大学からの帰りに立ち寄ったドラッグストアで晴朗太は途方に暮れる。
曰く、女子は好きな人の目を見れない結果、口元に視線が落ちるらしい。そこで素敵な唇をしていればかなりのポイントになるとのこと。
試しに手の甲に塗ると、色がつき過ぎてビビるも――
そう言って、晴朗太は最近になって持ち歩くようになって小さな手鏡でもって確認。
でも、男の人って女のコと比べて色彩を見極める能力がないみたいだから。
色がついた気がしないからって、濃い色を使うのは止めたほうがいいよ
そう納得させ、晴朗太は歩き出す。
ただ僅かとはいえ、せっかくいつもと違うオシャレをしたのだからと寄り道をしてみた。
店員に声をかけられるのが怖くて、遠くから眺めて晴朗太は独り言ちる。
センスが変わったのか。
それとも、物の見方。
もしくは心構えが変化したのか、晴朗太にも格好いいと思える――欲しいな、と思う服がいくつかあった。
自分のセンスに自信が持てない為、二の足を踏んでしまう。
となれば、晴朗太が取るべき手段はひとつだった。
最近の晴朗太は帰るなり、妹を呼んでいた。
妹はベッドの上で寝転がってスマホを観ていた。
スマホから視線が外れたのが1秒足らず。
にもかかわらず、恋々子は言い放った。
少なくとも、高校に入ったばかりの頃は違ったはず。
同じ学校だったので校内で見かけることもあったが、同級生と比べて明らかに幼く見えた記憶がある。
晴朗太の感想に対して、恋々子はキレだす。
稀代のトラブルメーカー。
中学生の時、とある行動がネットで晒され全国ニュースにもなった男。
結果、警察と病院の常連となり――面倒な生徒が多い歴代一芸入試組の中でも、ぶっち切りにヤバい奴だと入学前から噂されていた。
その為、独立した校舎を持つ中高一貫組の晴朗太ですら名前を知っていた。
体育祭や文化祭を始め、様々なイベントにでしゃばっていたのは晴朗太も憶えている。
あの男は謎の創作競技を引っ提げて全校を巻き込んでいたので、嫌でも記憶に残っていた。
このままでは、ひたすら愚痴を聞かされそうだったので晴朗太は話題を戻す。
加え、噂だけでも嫌っていた藍生に美人の彼女がいるなんで聞きたくなかった。
恋々子にとっては先輩でも、晴朗太にとっては年下の後輩。
更に言えば、絶対に関わることがないタイプの男。
正直、お世話になんてなりたくない。
そんな兄の気持ちなど露知らず、恋々子は勝手に写真を撮って先輩に送るのであった。