第17話 シチュエーションを意識せよ

文字数 886文字

クラシック?

スーツ?

 肩っ苦しくて、晴朗太は嫌になる。
もちろん、スーツ一式を普段着にしろってわけじゃないよ
そりゃよかった

それにクラシックって大枠だから。

その中にフォーマルやらトラッドやらドレスにコンサバってのがあって……

いや、そういうのはいいから……

もっと具体的なアドバイスをくれ

たとえば、今のカジュアルだとジャケットを羽織るとか。

靴をローファーやブーツにするとかーーロングじゃないやつね

ジャケットねぇ……
ダサいのは駄目だかんね

わかってるって。

けど、ダサいダサくないも主観だろ?

わお、先輩の予想通りの反論
……
やっぱ、ミスター凡庸なんだ
 腹立つ感想を添えてから、
場面を意識しろってさ
 恋々子は話を戻す。
女子は皆やってるんだけど、男子って服を買う時に場面を決めてないんだって?

そんなことはないぞ。

ちゃんと大学に行く時用に買った服とかあるし

どの授業用?
は?
帰りに何処か寄る予定がある時は?
……そんなの決めてねーよ

うん。

普段着とか、遊びに行く時用くらいしか考えてない

だから、駄目なの。

女子はちゃんと決めてるもん。あのカフェに行く時はこれ、オシャレな雑貨屋さんに行く時はこれってね

その結果、沢山服を持っているのに――着る服がないって困るわけ

あぁ……

(ココがよく言ってる奴か)

あぁ……

(お姉ちゃんがよく言うやつだ)

まっ、それを兄ちゃんに求めても無駄だってのはわかってる

まぁ、な

(とてもじゃないが、決められん)

いわゆる、ドレスコードを守るように――オシャレなレストランやカフェ、雑貨屋に入るのを躊躇わない服装を心がけるといいってさ
難しいな

うん、そう言うと思った。

なんで、先にお店を決めておこう

 そう言って、恋々子はスマホを見せてくる。

服を買ったら着替えて、このカフェに行く

 絶対に、自分ひとりでは入らない外装。

 というか、今どき回転ドアなんて存在するのかと晴朗太は驚く。

ようはこんな風に、突然誘われても躊躇わない格好を選ぶといいってわけ

やけに高いけど、まさか俺の奢りか?

もち。

それともなに、妹弟にお金を出させる気?

……わかったよ。

奢ればいんだろ

やりぃ
その代わり、服を選ぶの手伝えよ
あーい
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登場人物紹介

晴朗太《せいろうた》、染谷家長男で大学1年生。

ブライダルのバイトに勤しむ、真面目で優しい性格。

ただその一方で甘くもあり、妹の我儘を助長させる要因を作っている。

苦肉の策で妹に頭を下げ、現在はオシャレを勉強中。

恋々子(こここ)、染谷家長女で高校2年生。

私立高校を一芸入試で突破し、部活動はディベート部。

我儘で自由気ままであるものの、弟のことは溺愛している。

それでも、一番大好きなのは自分自身の模様。

純朗《すみあき》、染谷家次男で中学2年生。

思春期の少年の割には素直で大人しい。

姉の教えのおかげで、年齢にそぐわないオシャレを身に付けている。


空条 日菜子(くうじょうひなこ)、20歳

晴朗太の想い人で同じバイト先の先輩

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