第30話 兄と妹

文字数 407文字

 バイト先で話題の中心となったその日の内に、晴朗太はケーキを買って帰った。
ただいま

……それ何?

あと、お帰り

 妹は真っ先にケーキの袋に関心を示してから、兄を出迎えた。

土産。

食っていいぞ

わーい。でも、なんで? 

別に給料日でもないよね?

 妹は素直に喜びつつも、理由を求める。
(おまえのおかげで変われたからだ)
日頃の感謝の気持ちだよ
 面と向かって言うのは恥ずかしかったので、晴朗太はそう濁した。
じゃぁ、遠慮なくいただくね

 そこで一切の疑問を挟まず、当然の権利として受け取れるのはさすがと言うべきか。


(まぁ、そこが妹の可愛いところでもあるんだが)
 シスコン丸出しの思考で、晴朗太は許容する。

あぁ、好きな奴を選べ。

けど、全部は食うなよ?

純朗たちのぶんもあるんだから

あーい

 そうして、恋々子ちゃんの毒舌オシャレ教室は終わりを告げた。

 でも、これから先も晴朗太は事あるごとに頼ることだろう。


 その時は普通に仲の良い兄妹として――

 

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登場人物紹介

晴朗太《せいろうた》、染谷家長男で大学1年生。

ブライダルのバイトに勤しむ、真面目で優しい性格。

ただその一方で甘くもあり、妹の我儘を助長させる要因を作っている。

苦肉の策で妹に頭を下げ、現在はオシャレを勉強中。

恋々子(こここ)、染谷家長女で高校2年生。

私立高校を一芸入試で突破し、部活動はディベート部。

我儘で自由気ままであるものの、弟のことは溺愛している。

それでも、一番大好きなのは自分自身の模様。

純朗《すみあき》、染谷家次男で中学2年生。

思春期の少年の割には素直で大人しい。

姉の教えのおかげで、年齢にそぐわないオシャレを身に付けている。


空条 日菜子(くうじょうひなこ)、20歳

晴朗太の想い人で同じバイト先の先輩

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