【審判の日5日前】柏木浩二

文字数 851文字

「3万だけど?」

その日の夜23:00、新宿駅周辺の狭い路地、柏木(かしわぎ)浩二(こうじ)は、赤いミニ丈ワンピースの、目の虚な20代中盤の女性から札束を受け取り、代わりに白い粉を渡した。

「毎度あり!
またね、里美(さとみ)ちゃん。ドラッグ尽きてまた欲しくなったらいつでもLINEしてね!」

柏木浩二は、里美と呼んだ目の虚な女性をその場に残し、夜の帰り道を歩いた。

柏木浩二は、新宿西口のバーに入ると、クラフトビールを2杯飲み、その後、歌舞伎町のお気に入りの女性店員が在籍する歌舞伎町のいつものガールズバーを目指して歩いた。

寄り道して西武新宿駅近くの通りを歩いていると、黒いローブを羽織った3人の人間が柏木浩二の前方から歩いてきた。3人の黒ローブ人間は、顔も黒頭巾で覆われており、性別年齢は不詳であった。

真夜中で人通りも少ない中、異様な雰囲気を3人は醸し出していた。

柏木浩二は、訝しげに3人を見たが、すぐに興味を失い、視線を元に戻すと、ガールズバーを目指し歩いた。

その柏木浩二を、3人の黒ローブは、行く手を阻むように取り囲んだ。

「何?あんたら、ちょっと通してよ」

黒ローブ達は、柏木浩二を取り囲んだまま動かなかった。

柏木浩二は、中央の黄金色の十字架のネックレスをした黒ローブ人間を指差しした。

「うはっ、何そのコスプレ、ダサ過ぎ!
ネックレスも、安物っぽいねぇ!
よくそんな恰好で新宿の街中歩けるね!」

柏木浩二が、いやらしい笑みで中央の黒ローブ人間を挑発すると、左右の黒ローブ人間2人は、突然柏木浩二の腕を掴んだ。

「ちょっと、何すんの!離してよ!」

柏木浩二は腕を振り解こうとした。

「・・・汚れし魂に神の浄化を・・・」

中央の1人の黒ローブ人間は、そう呟くと、黒いハンカチを取り出し、柏木浩二の口にそっと充てた。

「・・・あ?」

次の瞬間、柏木浩二は胃の中のものをオエッと全て吐き出し、大量の血をブーッと吐いた。

そのまま両目から血の涙を流し、絶命した。

黒ローブ人間達は、息を引き取った柏木浩二を近くのゴミ捨て場に放り込み、何事も無かったかのように立ち去った。
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