【審判の日4日前】美津島雄也
文字数 1,767文字
梨奈は、乱れたブラウスとスカートを急ぎ整え直すと、必死に三澤を追いかけた。
三澤の背中を見つけ、やっと追いつき、三澤の肩に手を置いた。
「た・・・助けてくれて、ありがとう。
歩くの早いね、おじさん」
肩に手を置かれた三澤が、振り向いて無表情に梨奈を見た。
「・・・こんにちわ。どちら様でしょうか?」
三澤は無表情のまま尋ねた。
「え?覚えてないの?平林梨奈。
一昨日 、ママと一緒に食事したでしょう?
新宿駅前デパート最上階のイタリアンレストランで」
梨奈はぷくっと頬を膨らませた。
「すみません、人の顔と名前を覚えるのが苦手です。今、覚えました。平林梨奈さん」
三澤は無表情に答えた。
話し方がロボットのように特徴的で、そのぎこちない独特の雰囲気に、梨奈は思わず笑いがこみあげた。
(やっぱり変わった人!でも、なんか面白い!)
梨奈は幾分三澤に興味が湧き、
「ねね、少し話そうよ!そこのカフェとかどう?」
と、三澤の右腕を取って強引に誘った。
「お誘いありがとうございます。平林梨奈さん。
この後用事があるので、申し訳ございません」
三澤は無表情のまま答えると、そのまま立ち去っていった。
(残念!やっぱり、ちょっと変わった人みたい。
でも、助けてくれたし、すごい強いし、もっと話してみたい!)
梨奈は、徐々に三澤に対して興味が湧いていくのを感じていた。
※
右腕を折られた杉浦と腹を殴られた痛みを堪える男は、以前雄也の教えてくれた、新宿地下通路の外れに連結された廃オフィスの中にいた。
以前は、犯罪まがいの探偵業の拠点となっていたコンクリート造りの廃オフィスだった。
廃オフィスの中には、水の流れない洗面台やトイレと、部屋の中央に剥き出しの木のテーブルだけがあった。木のテーブルの上にはウイスキーボトルや缶ビール、電子タバコが置いてあった。
二人は部屋の壁に背をつけて座っていた。
「くそ、腕が、痛ぇ、あの無表情男、次会った時は容赦しねぇ!絶対ぇ殺す!」
杉浦が折れた右腕を抱えながら痛みを堪えつつ悔しがった。そのまま、折れていない左手で無造作にテーブルの上の蓋のされていないウイスキー瓶を掴み、一気飲みに飲み干した。もう1人の男は殴られた腹の痛みが消えず蹲っている。
そこに、先ほど雄也と呼ばれた小柄男が現れた。
「あ、雄也さん!」
杉浦がウイスキー瓶をテーブルに置いて、左手で右腕を押さえつつ、雄也に駆け寄った。
「ひ・・・酷いっすよ、美津島 さん、どこ行っていたんですか!
俺たち仲間を置いて一人去るなんて・・・」
もう1人の男が、痛みの止まない腹を押さえながら、痛みを堪え引きつった顔を雄也に向けると、雄也を恨むように言った。
「すまんな、あんな無表情オヤジに、お前達二人がのされるなんて、俺も、思ってもみなかった」
美津島 雄也 は幾分軽蔑するような口調で二人に向かって言い放った。
「あいつ、ぶっ殺しましょう!俺、そこら辺探してきます!」
杉浦伸平が部屋から出ようとした。
その杉浦の肩を美津島雄也が掴んで止めた。
「いや、その必要はない」
「え?なんで?梨奈も探して連れてきますよ?
みんなでマワしましょうよ!」
美津島雄也はおもむろに懐から拳銃を取り出し、ポカンと開けている杉浦伸平の口の中に突っ込んだ。
「・・・?」
美津島雄也は、ためらいもなく引き金を引くと、パンッと甲高い爆発音がして、杉浦伸平は白目を向いてバタリと後ろに倒れた。
「う・・・うわっ!」
もう1人の男が驚いた。
「我々の救世主 は、お前達のような、卑しい上、無意味な暴力を振るう下衆な人間が、お嫌いだ。
・・・さらに言うならば、何の役にも立たない無能な人間は、もっとお嫌いだ」
美津島雄也は黒いハンカチをポケットから取り出した。
もう1人の男は、美津島雄也に銃殺されビクンビクンと死後硬直し始める杉浦伸平の遺体を見て、パニックに陥っている。
すると、美津島雄也は、男の目の前に座り込み、取り出した黒いハンカチを、パニックに陥って顔面蒼白の男の口にそっと当てがった。
突然、男は大量の血をオエっと吐き出し、目から血を流すと、ぐったりと倒れ込み、そのまま二度と起き上がらなかった。
美津島雄也は、しばらくそのまま、男が完全に絶命したのを確かめて、立ち上がった。
「・・・汚れし魂に神の浄化を・・・」
そう呟くと、息を引き取った二人を残したまま、コンクリート部屋を後にした。
三澤の背中を見つけ、やっと追いつき、三澤の肩に手を置いた。
「た・・・助けてくれて、ありがとう。
歩くの早いね、おじさん」
肩に手を置かれた三澤が、振り向いて無表情に梨奈を見た。
「・・・こんにちわ。どちら様でしょうか?」
三澤は無表情のまま尋ねた。
「え?覚えてないの?平林梨奈。
新宿駅前デパート最上階のイタリアンレストランで」
梨奈はぷくっと頬を膨らませた。
「すみません、人の顔と名前を覚えるのが苦手です。今、覚えました。平林梨奈さん」
三澤は無表情に答えた。
話し方がロボットのように特徴的で、そのぎこちない独特の雰囲気に、梨奈は思わず笑いがこみあげた。
(やっぱり変わった人!でも、なんか面白い!)
梨奈は幾分三澤に興味が湧き、
「ねね、少し話そうよ!そこのカフェとかどう?」
と、三澤の右腕を取って強引に誘った。
「お誘いありがとうございます。平林梨奈さん。
この後用事があるので、申し訳ございません」
三澤は無表情のまま答えると、そのまま立ち去っていった。
(残念!やっぱり、ちょっと変わった人みたい。
でも、助けてくれたし、すごい強いし、もっと話してみたい!)
梨奈は、徐々に三澤に対して興味が湧いていくのを感じていた。
※
右腕を折られた杉浦と腹を殴られた痛みを堪える男は、以前雄也の教えてくれた、新宿地下通路の外れに連結された廃オフィスの中にいた。
以前は、犯罪まがいの探偵業の拠点となっていたコンクリート造りの廃オフィスだった。
廃オフィスの中には、水の流れない洗面台やトイレと、部屋の中央に剥き出しの木のテーブルだけがあった。木のテーブルの上にはウイスキーボトルや缶ビール、電子タバコが置いてあった。
二人は部屋の壁に背をつけて座っていた。
「くそ、腕が、痛ぇ、あの無表情男、次会った時は容赦しねぇ!絶対ぇ殺す!」
杉浦が折れた右腕を抱えながら痛みを堪えつつ悔しがった。そのまま、折れていない左手で無造作にテーブルの上の蓋のされていないウイスキー瓶を掴み、一気飲みに飲み干した。もう1人の男は殴られた腹の痛みが消えず蹲っている。
そこに、先ほど雄也と呼ばれた小柄男が現れた。
「あ、雄也さん!」
杉浦がウイスキー瓶をテーブルに置いて、左手で右腕を押さえつつ、雄也に駆け寄った。
「ひ・・・酷いっすよ、
俺たち仲間を置いて一人去るなんて・・・」
もう1人の男が、痛みの止まない腹を押さえながら、痛みを堪え引きつった顔を雄也に向けると、雄也を恨むように言った。
「すまんな、あんな無表情オヤジに、お前達二人がのされるなんて、俺も、思ってもみなかった」
「あいつ、ぶっ殺しましょう!俺、そこら辺探してきます!」
杉浦伸平が部屋から出ようとした。
その杉浦の肩を美津島雄也が掴んで止めた。
「いや、その必要はない」
「え?なんで?梨奈も探して連れてきますよ?
みんなでマワしましょうよ!」
美津島雄也はおもむろに懐から拳銃を取り出し、ポカンと開けている杉浦伸平の口の中に突っ込んだ。
「・・・?」
美津島雄也は、ためらいもなく引き金を引くと、パンッと甲高い爆発音がして、杉浦伸平は白目を向いてバタリと後ろに倒れた。
「う・・・うわっ!」
もう1人の男が驚いた。
「我々の
・・・さらに言うならば、何の役にも立たない無能な人間は、もっとお嫌いだ」
美津島雄也は黒いハンカチをポケットから取り出した。
もう1人の男は、美津島雄也に銃殺されビクンビクンと死後硬直し始める杉浦伸平の遺体を見て、パニックに陥っている。
すると、美津島雄也は、男の目の前に座り込み、取り出した黒いハンカチを、パニックに陥って顔面蒼白の男の口にそっと当てがった。
突然、男は大量の血をオエっと吐き出し、目から血を流すと、ぐったりと倒れ込み、そのまま二度と起き上がらなかった。
美津島雄也は、しばらくそのまま、男が完全に絶命したのを確かめて、立ち上がった。
「・・・汚れし魂に神の浄化を・・・」
そう呟くと、息を引き取った二人を残したまま、コンクリート部屋を後にした。