【審判の日】銃撃戦

文字数 1,356文字

三澤隼人はバイクを運転しながら、取り出した小型マシンガンを上空に構えると、ヘリコプターに狙いを定めて正確に銃撃した。

「うわっ!危ねぇ!」

小田和成が叫ぶ。
ヘリコプターのボディにチュンチュンと銃弾が撃ち込まれた。

「なぜ?なぜ奴に洗脳が効かなかった!?
なぜ平林梨奈は生きている!?」

狼狽しながら五代恵子は拳銃を構えると、地上のバイクに向かって撃った。その10倍くらいの銃弾から地上から放たれ、五代恵子は慌てて顔を引っ込めた。

救世主(メシア)!顔を窓から出したら危険です!」

「この私が、あんな小娘の抹殺を失敗しただと?
バカな、こんな事が・・・、
くっ!なぜ!
私は、最も有能で、全てにおいて完璧な存在のはずなのに!」



梨奈は、自身の裸体を無造作に頼りなく巻き付けている黒い薄布が、突風に吹き飛ばされ、はだけてしまわないかを心配しつつ、バイクから振り落とされないよう、三澤の腰に手を回し、必死にしがみついていた。

「ねぇ!隼人君!これから、どうするの!」

後部座席から大声で梨奈が三澤に問いかけた。

「ヘリコプターを撃ち落として、海上拡散装置によるVXガスの東京湾への流出を止めます」

バイクのハンドルから一時的に両手を離し、素早くマシンガンの弾倉を入れ替えながら、三澤は相変わらずの口調で平然と言った。

「飛んでいるヘリコプターを撃ち落とすったって、いくら貴方でも、地上からじゃ無理でしょ?」

「僕に考えがあります。それよりしっかり掴まってください」

三澤はバイクのハンドルを持ち直すと、スピードを上げた。梨奈は振り落とされないようにしっかりと三澤の背中に捕まった。



深夜3:30、東京湾周辺、芝浦埠頭。

「どうします!救世主(メシア)!もう芝浦埠頭上空です!奴からの銃撃で、これじゃあ着陸出来ませんよ!」

小田和成が五代恵子に向かって叫んだ。

「もっと高度を下げてください!
ナンバー3のバイクに近づいて!
私がこの手で奴らを撃ち殺します!」

「無茶ですって!
相手はマシンガン持ってるんですよ?」

「いいから早く!」

小田は仕方なく限界までヘリコプターの高度を下げた。



バイクに並行してヘリコプターは飛んだ。
五代恵子はバイクに向かって拳銃を数発撃ち、返すように三澤はマシンガンをヘリコプターに撃ち込んだ。

「おわあっ!」

目の前を三澤の放ったマシンガンの弾が通過し、小田がヘリコプターのハンドルを慌ててきった。ヘリコプターがバイクから離れた。

「もっと近づいて!離れてはだめです!!」

五代恵子が小田に指示した。

「マジかよ、ちくしょう!」

小田は再度バイクにヘリコプターを並行して飛ばした。五代恵子は拳銃をバイクに向かって撃つが、揺れるヘリコプターの影響で狙いが定まらなかった。

芝浦埠頭まで周辺まで、お互いに撃ち合いながら、そのままバイクとヘリコプターは並走した。

芝浦埠頭は、大型建造物を建設中らしく、多数のクレーンと、中途半端に工事中の建設物が建っていた。

バイクと並走していたヘリコプターは、建設中建造物やクレーンへの衝突を避けて大きく上昇した。



三澤は、梨奈を後部座席に乗せたまま、ヘリコプターの視覚から消えるように、バイクを建設中建造物とクレーンの間に止めた。

そしてバイクから梨奈を降ろすと、バイクの座席の上に新宿第一病院の保管庫から持って来たニトログリセリンの瓶を置いた。
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