【審判の日】追跡者
文字数 1,365文字
「で、これから、どうします?救世主 」
いままで平林梨奈に銃口を突きつけたまま押し黙っていた小田和成が、自由になった両手を屈伸させながら、五代恵子に問いかけた。
「後は、この澁谷誠一さんの化学工業コンサルティング事務所から奪ったVXガスを、先程礼拝堂で毒殺した信者達に用意させた、芝浦埠頭に用意してある海上拡散装置に仕込んで、そのまま東京湾に打ち流すだけ。
そうすれば、東京中の大気は、蒸発した大量のVXガスに汚染されて、東京中の、ほぼ全ての人間達を一気に死滅させる事ができるでしょう。
小田さん、ヘリコプターの準備をして下さい」
「へいへい」
小田和成は地下大礼拝堂の巨大な悪魔の像の奥にある小部屋に入った。
「ナンバー3、あなたはここで待機です。そのうちVXガスがこの辺りにも充満するだろうから、これで、お別れですね。さようなら、共に最後までSJプロジェクトで生き残った同級生よ」
五代恵子は、そう言って三澤隼人にその場で待機するよう命じると、小田を追って小部屋に入った。
三澤はボーッと無表情のまま、その場に立ち尽くしていた。
三澤に黒いハンカチを充てられ、その場に倒れた梨奈は、そのままぐったりとして動かなかった。
※
五代恵子のプロテスタント教会から、五代恵子と小田を乗せて、ヘリコプターが上空へと飛び立った。新宿中心部から、東京湾に面する芝浦埠頭へと向かって。
小田の隣席に座り、五代恵子はアタッシュケースを開けると、VXガスが注入されている緑色の液体が入った小瓶群の中から一つを取り出して目の前に持っていき、透き通る緑色を確認した。
「感無量ですか?
それとも、こう、何もかも上手くいくと、なんか、逆にやりがいを感じ無いものですかねぇ!」
ヘリコプターを操縦しながら小田が五代恵子に聞いた。
「あなたの願いも叶ってよかったですね。浄化の絆、最後のクルセイダーよ。結局、私を理解できる、本当に有能なクルセイダーは、小田和成さん、貴方だけでしたね」
五代恵子は緑色の小瓶を確認しながら小田に言った。
小田はヘリコプターを操縦しながら、服の内側に入れていた黄金色の十字架のネックレスを取り出して見つめた。
「そいつぁ照れるねぇ、救世主 。俺は40数年警官一筋でやって来て、得られたもんは、結局、何も無かった。さらに、もうすぐ胃ガンで朽ち行く身体。もうこの世に未練なんかねぇよ!
あんたには、警察の動きの牽制と、武器の横流しくらいしか出来なくて申し訳無かったな!
だが、人生最期に一発デカいことさせてもらえて光栄だぜ!」
小田はそう言うと、芝浦埠頭方面にヘリコプターを進めた。
「ええ、共に成し遂げましょう。
永遠なる絶対神サタン様がための地上の浄化、東京浄化計画を!」
そう言って五代恵子はVXガスの小瓶をアタッシュケースの元の位置に戻すと、アタッシュケースを閉めて、鍵を閉めた。
すると、ヘリコプターを操縦しつつ地上を確認していた小田が驚いて声をあげた。
「・・・な!
救世主 !あ・・・あれを!」
小田和成に言われて五代恵子がヘリコプターの窓から地上を見る。
バイクに乗った三澤隼人と、その後部座席には、毒殺されたはずの平林梨奈が三澤の背中に抱きついて、五代恵子と小田の乗るヘリコプターを追跡している。
「どういうこと?」
三澤が、バイクを運転しながら、小型マシンガンを取り出すのが見えた。
いままで平林梨奈に銃口を突きつけたまま押し黙っていた小田和成が、自由になった両手を屈伸させながら、五代恵子に問いかけた。
「後は、この澁谷誠一さんの化学工業コンサルティング事務所から奪ったVXガスを、先程礼拝堂で毒殺した信者達に用意させた、芝浦埠頭に用意してある海上拡散装置に仕込んで、そのまま東京湾に打ち流すだけ。
そうすれば、東京中の大気は、蒸発した大量のVXガスに汚染されて、東京中の、ほぼ全ての人間達を一気に死滅させる事ができるでしょう。
小田さん、ヘリコプターの準備をして下さい」
「へいへい」
小田和成は地下大礼拝堂の巨大な悪魔の像の奥にある小部屋に入った。
「ナンバー3、あなたはここで待機です。そのうちVXガスがこの辺りにも充満するだろうから、これで、お別れですね。さようなら、共に最後までSJプロジェクトで生き残った同級生よ」
五代恵子は、そう言って三澤隼人にその場で待機するよう命じると、小田を追って小部屋に入った。
三澤はボーッと無表情のまま、その場に立ち尽くしていた。
三澤に黒いハンカチを充てられ、その場に倒れた梨奈は、そのままぐったりとして動かなかった。
※
五代恵子のプロテスタント教会から、五代恵子と小田を乗せて、ヘリコプターが上空へと飛び立った。新宿中心部から、東京湾に面する芝浦埠頭へと向かって。
小田の隣席に座り、五代恵子はアタッシュケースを開けると、VXガスが注入されている緑色の液体が入った小瓶群の中から一つを取り出して目の前に持っていき、透き通る緑色を確認した。
「感無量ですか?
それとも、こう、何もかも上手くいくと、なんか、逆にやりがいを感じ無いものですかねぇ!」
ヘリコプターを操縦しながら小田が五代恵子に聞いた。
「あなたの願いも叶ってよかったですね。浄化の絆、最後のクルセイダーよ。結局、私を理解できる、本当に有能なクルセイダーは、小田和成さん、貴方だけでしたね」
五代恵子は緑色の小瓶を確認しながら小田に言った。
小田はヘリコプターを操縦しながら、服の内側に入れていた黄金色の十字架のネックレスを取り出して見つめた。
「そいつぁ照れるねぇ、
あんたには、警察の動きの牽制と、武器の横流しくらいしか出来なくて申し訳無かったな!
だが、人生最期に一発デカいことさせてもらえて光栄だぜ!」
小田はそう言うと、芝浦埠頭方面にヘリコプターを進めた。
「ええ、共に成し遂げましょう。
永遠なる絶対神サタン様がための地上の浄化、東京浄化計画を!」
そう言って五代恵子はVXガスの小瓶をアタッシュケースの元の位置に戻すと、アタッシュケースを閉めて、鍵を閉めた。
すると、ヘリコプターを操縦しつつ地上を確認していた小田が驚いて声をあげた。
「・・・な!
小田和成に言われて五代恵子がヘリコプターの窓から地上を見る。
バイクに乗った三澤隼人と、その後部座席には、毒殺されたはずの平林梨奈が三澤の背中に抱きついて、五代恵子と小田の乗るヘリコプターを追跡している。
「どういうこと?」
三澤が、バイクを運転しながら、小型マシンガンを取り出すのが見えた。