【審判の日前日】VXガス
文字数 2,676文字
しばらくの間、三澤隼人は、そのまま黒ローブ人間2人に殴られ続けた。
十字架戦士 は、黒ローブ人間2人の攻撃を制すると、三澤の髪の毛を掴んで顔を上げさせた。
十字架戦士 は、気絶していた三澤を何度も平手打ちした。
「もう辞めてよ!何でそんな酷いことが出来るの!あんた達!」
梨奈が罵倒する。
「ふふふ、ただの自分勝手で何もできない愚かな小娘かと思っていたが、案外、他人思いで勇敢なお嬢さんだ」
梨奈に向かってそう言い放ち、構わず、十字架戦士 は、気絶している三澤を何度も平手打ちした。
すると、三澤は、突然パッと目を覚ました。
「気が付いたかね?
三澤隼人君、いや、ナンバー3。
さて、これ以上痛みを感じたくなければ、最後に、中央政府のことを教えなさい。
貴方の先生とは誰ですか?
誰が貴方の任務をサポートしているのですか?」
三澤は無表情に前を見たまま何も答えなかった。
十字架戦士 は持っていた拳銃の銃身で三澤の額をガンッと殴りつけた。
しかし、やはり三澤の表情には何の変化も無く、何も答えなかった。
「フン、よほど肝が据わっているのか、それとも痛みや恐怖の感覚がないだけなのか・・・」
そう言って十字架戦士 は、拳銃の銃口を三澤の眉間に突きつけた。
「さて、これでどうです?
喋らなければ、私は引き金を引きますよ?
貴方の知っていることを洗いざらい全て話しなさい」
三澤は十字架戦士 の顔部分の黒頭巾を見た。
「ようやく何か喋る気になりましたか?」
梨奈が固唾を飲んで目の前の光景を見つめている。何か出来ることはないか必死に考えた。
十字架戦士 が銃口を三澤の額に突き付けたまま、しばらく時間が経った。
「・・・VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤が十字架戦士 にいきなり問いかけた。
十字架戦士 がキョトンとした。
黒ローブ人間2人が顔を見合わせた。
「突然、貴方は何を言っているのですか?
この状況を見て分からないのでしょうか?
質問に答えなさい。
知っていることを全て喋らなければ、私は、引き金引きますよ?」
十字架戦士 が聞き返す。
「VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤は同じ言葉を繰り返した。
「は、隼人君、何喋ってるの?
こ・・・殺されちゃうよ?」
梨奈が三澤に問いかけた。
「僕は、あえて捕まりました。
VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
何度も同じような発言を三澤は繰り返した。
「VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に・・・」
・・・ガンッ!
うんざりした十字架戦士 は、三澤の額をもう一度銃身で打ちつけた。
「もういい、貴方のような機械仕掛けのお人形さんに質問したこと自体が間違いだったようです。
貴方は人生の最後まで、ただの中央政府の言いなりロボットでしたね。
かわいそうに、今、その悲しき運命の鎖を解き放ってあげましょう」
十字架戦士 が、再び銃口を三澤の眉間に押し付け、トリガーに指をかけた。
「・・・汚れし魂に神の浄化を・・・」
十字架戦士 がそう呟き、拳銃のトリガーを引いた。パンッと甲高い音がした。
だが、三澤はトリガーが引かれる瞬間、驚異的なスピードで顔を傾けて銃弾を交わし、大きく椅子を後ろに傾けた。
「・・・あ?」
事態を把握出来ず十字架戦士 が混乱した。
すると、三澤は、後ろに傾けた椅子を元に戻す反動で椅子ごと身体を一回転させて椅子の足で十字架戦士 の頭を打ちつけた。
「がっ!」
そのまま元の位置に戻る勢いで椅子を地面に叩きつけると、椅子は壊れて崩れた。
慌てた黒ローブ人間2人が三澤を取り押さえようと飛びかかった。
三澤は瞬間的に縄を解き、壊れ崩れた木製の椅子の脚を持って片方の黒ローブ人間を薙ぎ倒し、もう片方の黒ローブ人間の首を掴んで高く持ち上げた。
「が・・・あがが・・・」
「もう一度聞きますが、
VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤は、首を掴まれ、もがく、その黒ローブ人間に同じ口調で問いかけた。
殴られた頭を抑えつつ、十字架戦士 は、首を掴まれ持ち上げられている黒ローブ人間を助けようともせず、慌てて部屋の扉にかけ走った。扉の横のセキュリティロック解除コード入力パネルにパスコードを入力し、ドアのセキュリティロックを解除して部屋の外に飛び出した。
扉はすぐに閉まり、三澤達は部屋に閉じ込められた。
首を掴んで持ち上げた黒ローブ人間が失神してしまったのを確認し、三澤は手を離すと、黒ローブ人間はどさりと倒れた。
部屋の中には、三澤と、木製の椅子に括り付けられたままの梨奈と、失神して倒れた黒ローブ人間2人だけが残った。
三澤は木製の椅子に緊縛されている梨奈の縄をほどき、身体を自由にした。
梨奈はガタガタ震えながら、取り敢えず、一命をとりとめたことだけ分かった。
「ほ・・・本当に、すごいんだね、隼人君・・・」
梨奈は、助かった安心感と、目の前で敵を叩きのめした興奮で若干胸を弾ませた。
腰が抜けている梨奈の手を引き、三澤は十字架戦士 が使用したセキュリティロック解除コード入力パネルの前に立った。
鍛え上げられた三澤の肉体は、手榴弾の爆発と、黒ローブ達のリンチを受けたにも関わらず、その動作に全く支障をきたしていなかった。
「平林梨奈さん、このビルの1階出口までお送りします。
ビルを出たら、真っ直ぐ交番に向かってください。
絶対に、他の建物に入ったりしないように」
機械的に三澤は依然として恐怖に震え身体を震わす梨奈に指示した。
「う・・・うん・・・でも、それ以前に、私達、今、閉じ込められていて、このパネルにパスコード入力しないと、この扉、開かないんじゃないの?」
扉には取手もなく、手動では開きそうにない。
「さっきの十字架戦士 と名乗る男の指の動きを記憶しました」
三澤が、セキュリティロック解除コード入力パネルに、パスコードを入力すると、扉のセキュリティロックが外れ、自動で開いた。
「ひ・・・開いた・・・?
指の動きを記憶って・・・マ・・・マジで?」
梨奈は、三澤の脅威的な観察力や記憶力に、さらに驚きを隠せなかった。
二人は開いた扉から部屋の外に出た。梨奈の手を引いたまま、三澤は、ビルの1階出口まで梨奈を連れて行った。
「では、お逃げ下さい。
絶対に、他の建物に入ったりしないように」
「あ、あの、隼人君は?」
梨奈が、身体の表面だけ傷だらけの三澤に問いかけた。
「僕は、VXガスを探します。
このビルにあるはずなので」
そう言うと、梨奈の静止も聞かず、逃げた十字架戦士 を追ってビルの中に戻り、最上階を目指した。
「もう辞めてよ!何でそんな酷いことが出来るの!あんた達!」
梨奈が罵倒する。
「ふふふ、ただの自分勝手で何もできない愚かな小娘かと思っていたが、案外、他人思いで勇敢なお嬢さんだ」
梨奈に向かってそう言い放ち、構わず、
すると、三澤は、突然パッと目を覚ました。
「気が付いたかね?
三澤隼人君、いや、ナンバー3。
さて、これ以上痛みを感じたくなければ、最後に、中央政府のことを教えなさい。
貴方の先生とは誰ですか?
誰が貴方の任務をサポートしているのですか?」
三澤は無表情に前を見たまま何も答えなかった。
しかし、やはり三澤の表情には何の変化も無く、何も答えなかった。
「フン、よほど肝が据わっているのか、それとも痛みや恐怖の感覚がないだけなのか・・・」
そう言って
「さて、これでどうです?
喋らなければ、私は引き金を引きますよ?
貴方の知っていることを洗いざらい全て話しなさい」
三澤は
「ようやく何か喋る気になりましたか?」
梨奈が固唾を飲んで目の前の光景を見つめている。何か出来ることはないか必死に考えた。
「・・・VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤が
黒ローブ人間2人が顔を見合わせた。
「突然、貴方は何を言っているのですか?
この状況を見て分からないのでしょうか?
質問に答えなさい。
知っていることを全て喋らなければ、私は、引き金引きますよ?」
「VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤は同じ言葉を繰り返した。
「は、隼人君、何喋ってるの?
こ・・・殺されちゃうよ?」
梨奈が三澤に問いかけた。
「僕は、あえて捕まりました。
VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
何度も同じような発言を三澤は繰り返した。
「VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に・・・」
・・・ガンッ!
うんざりした
「もういい、貴方のような機械仕掛けのお人形さんに質問したこと自体が間違いだったようです。
貴方は人生の最後まで、ただの中央政府の言いなりロボットでしたね。
かわいそうに、今、その悲しき運命の鎖を解き放ってあげましょう」
「・・・汚れし魂に神の浄化を・・・」
だが、三澤はトリガーが引かれる瞬間、驚異的なスピードで顔を傾けて銃弾を交わし、大きく椅子を後ろに傾けた。
「・・・あ?」
事態を把握出来ず
すると、三澤は、後ろに傾けた椅子を元に戻す反動で椅子ごと身体を一回転させて椅子の足で
「がっ!」
そのまま元の位置に戻る勢いで椅子を地面に叩きつけると、椅子は壊れて崩れた。
慌てた黒ローブ人間2人が三澤を取り押さえようと飛びかかった。
三澤は瞬間的に縄を解き、壊れ崩れた木製の椅子の脚を持って片方の黒ローブ人間を薙ぎ倒し、もう片方の黒ローブ人間の首を掴んで高く持ち上げた。
「が・・・あがが・・・」
「もう一度聞きますが、
VXガスの在処を知っていますか?
貴方達が殺人に使っている猛毒の神経剤です」
三澤は、首を掴まれ、もがく、その黒ローブ人間に同じ口調で問いかけた。
殴られた頭を抑えつつ、
扉はすぐに閉まり、三澤達は部屋に閉じ込められた。
首を掴んで持ち上げた黒ローブ人間が失神してしまったのを確認し、三澤は手を離すと、黒ローブ人間はどさりと倒れた。
部屋の中には、三澤と、木製の椅子に括り付けられたままの梨奈と、失神して倒れた黒ローブ人間2人だけが残った。
三澤は木製の椅子に緊縛されている梨奈の縄をほどき、身体を自由にした。
梨奈はガタガタ震えながら、取り敢えず、一命をとりとめたことだけ分かった。
「ほ・・・本当に、すごいんだね、隼人君・・・」
梨奈は、助かった安心感と、目の前で敵を叩きのめした興奮で若干胸を弾ませた。
腰が抜けている梨奈の手を引き、三澤は
鍛え上げられた三澤の肉体は、手榴弾の爆発と、黒ローブ達のリンチを受けたにも関わらず、その動作に全く支障をきたしていなかった。
「平林梨奈さん、このビルの1階出口までお送りします。
ビルを出たら、真っ直ぐ交番に向かってください。
絶対に、他の建物に入ったりしないように」
機械的に三澤は依然として恐怖に震え身体を震わす梨奈に指示した。
「う・・・うん・・・でも、それ以前に、私達、今、閉じ込められていて、このパネルにパスコード入力しないと、この扉、開かないんじゃないの?」
扉には取手もなく、手動では開きそうにない。
「さっきの
三澤が、セキュリティロック解除コード入力パネルに、パスコードを入力すると、扉のセキュリティロックが外れ、自動で開いた。
「ひ・・・開いた・・・?
指の動きを記憶って・・・マ・・・マジで?」
梨奈は、三澤の脅威的な観察力や記憶力に、さらに驚きを隠せなかった。
二人は開いた扉から部屋の外に出た。梨奈の手を引いたまま、三澤は、ビルの1階出口まで梨奈を連れて行った。
「では、お逃げ下さい。
絶対に、他の建物に入ったりしないように」
「あ、あの、隼人君は?」
梨奈が、身体の表面だけ傷だらけの三澤に問いかけた。
「僕は、VXガスを探します。
このビルにあるはずなので」
そう言うと、梨奈の静止も聞かず、逃げた