【審判の日6日前】石川健二
文字数 2,282文字
4時59分50秒
三澤隼人は深く眠っていた。
57秒・・・58秒・・・59秒・・・
5時00分00秒
電源を入れたロボットのように三澤隼人は目を開けた。やはり何のタイマーもかけていなかった。
5時10分00秒から5時20分00秒まで、マンション近くを軽く散歩した。
それから6時00分00秒まで、筋肉トレーニングをした。
その後いつもの朝食をとり、パソコンの電源を付けると、先生から仕事が来ていないか確認した。
今日は仕事があったので、準備に取り掛かった。
1Kの三澤隼人の部屋にあるキャビネ棚を開けると、中には、片手で扱える小型機関銃 、30発分のマシンガン用弾倉が2つ、そして、銀色の、柄の無い短剣が2本入っていた。この短剣は、スティレットと呼ばれる突刺攻撃に特化した短剣だ。
三澤隼人は、マシンガンは必要無いと判断し、その2本のスティレットをキャビネ棚から取り出すと、ベルトの両側に取り付けた専用の革製の鞘にそれぞれしまった。
外に出て目標地点に徒歩で向かった。
歌舞伎町に建っている雑居ビルの前に着くと、その外観を見渡した。
雑居ビルの中に入り、階段で4階に上がると、その中の一室の扉を開けた。
部屋の中で、1人の筋肉質な大男が、ベッドに横たわる1人の全裸の女に、何かの注射を打っていた。
その筋肉質大男が、扉を開けられた音を聞いて振り向いた。
筋肉質大男は、上半身裸に下半身はジーンズで、黄金色の十字架のネックレスを首からかけていた。
筋肉質大男は、怪訝な顔をして、扉を開けた三澤を見ると、次に怒りの表情を浮かべた。
「おい!
兄ちゃん、何勝手に部屋に入ってんだ?
ここが誰の部屋か分かってんのか?」
筋肉質大男が、そのまま、ずかずかと三澤に近づいてくる。三澤は向かってくる筋肉質大男を躱し、無視して、注射を打たれベッドに横たわる全裸の女の前に立った。
「おい!何見てんだよ!!」
筋肉質大男は三澤の肩を掴む。
すると、三澤はゆっくり振り向いた。
三澤は次に、無表情に筋肉質大男の顔の輪郭を確認した。
そして筋肉質大男から目を逸らすと、胸ポケットからA4用紙を出すと、用紙に印刷されている名前と顔写真の一覧リストを目視確認した。
筋肉質大男は、黙々とA4用紙のリストを目視確認している三澤をしばらく観察していたが、苛立って蹴り飛ばした。
三澤がどさりと倒れた。
だが、三澤は何事も無かったかのように倒れた体制から床に座り直すと、メガネの眉間を右手の中指で軽く押さえてかけ直し、再びA4用紙のリストを目視確認し直した。
「さっきからテメェは何やってんだ!
ぶっ殺すぞ!とっとと出てけや!!」
三澤はスッと立ち上がり、A4用紙を胸ポケットにしまった。
「間違いありません、貴方は、麻薬密売人の、石川 健二 さんですね。貴方は、先生のターゲットリストに指定されています」
「あん?」
石川健二と呼ばれた大男は立ち上がった三澤の胸ぐらを左手で掴んだ。
「なんだテメェは。
何で俺が麻薬密売人だって知ってんだ?
テメェもサツの仲間か?
俺はテメェを知らねぇ。
さらに、テメェが俺を知ってるかもどうでもいい」
石川健二はそのまま左手で三澤を後ろに押した。
「もういいわ、俺、お前を今から殴り殺すわ!」
石川健二は右拳を三澤の顔面に叩き込もうとした。
勢いよく三澤の顔面に向かった石川健二の拳は、バシッと音がして、三澤の左手の平に無造作の掴まれた。
そして三澤は石川健二の右手を、掴んだ自身の左手で握りしめた。
「うっ・・・」
石川健二の右拳を握る三澤隼人の左手に徐々に握力が加わっていく。
「ぎ・・・いぎ・・・」
石川健二はその三澤の左手の上から左手で掴んだ。
三澤隼人の左手の握力がどんどん強くなっていく。
「い・・・いぎゃあああ!痛ぇ!痛ぇ!は・・・離せ!離せえぇぇぇ!」
凄まじい握力が石川健二の右拳に加えられた。細身に見える三澤の身体からは信じられない握力だった。
そのまま三澤は石川健二の右腕を膝蹴りした。
ベキッと鈍い音がして、石川健二の右腕が変な方向に曲がった。
「ぎゃあああああ!」
石川健二は叫ぶと、うずくまってうめいた。
石川健二は顔を真っ赤にして、折れた腕の痛みを堪えて、左手でジーンズのベルトから拳銃を取り出すと、三澤に向けた。
「く・・・くたばれ!!」
石川健二が引き金に指をかけた。
パンッっと石川健二の構えた拳銃から弾丸が飛び出たが、三澤はその弾道をあらかじめ分かっていたかのように弾丸を躱した。
「あ?」
さらに二撃の弾丸が石川健二の拳銃から放たれた。しかし、難なく三澤は弾丸を躱した。弾丸は三澤の身体を掠りもせずに壁に埋め込まれた。
「あ・・・当たらねぇ?この至近距離で?」
石川健二が再度引き金を引いたが、カチッカチッと、弾丸を打ち尽くした空の拳銃が乾いた音を立てるだけだった。
現実が理解できず石川健二が狼狽した。
次の瞬間、石川健二の脳天に三澤が放ったスティレットが深々と突き刺さった。
「・・・がっ!」
石川健二は奇声をあげて白目を剥くと、どさりと仰向けに倒れた。
三澤隼人は倒れた石川健二から、脳天に突き刺したスティレットを抜いて血を払うと、ベルトにしまった。そして、スマートフォンを取り出し、先生に連絡を取った。そのまま、全裸の女を部屋に残し、部屋から立ち去った。
ビルを出るとまだ朝日が眩しかった。
歌舞伎町のゴジラロードを歩いていると、三澤隼人のスマートフォンにLINEの通知が来た。
突然ですけど、今夜19時に娘と食事します。もしご予定が無ければ、三澤君も一緒にいかがでしょうか?
との平林桜子からのメッセージだった。
分かりました。行きます。
と返信し、帰路についた。
三澤隼人は深く眠っていた。
57秒・・・58秒・・・59秒・・・
5時00分00秒
電源を入れたロボットのように三澤隼人は目を開けた。やはり何のタイマーもかけていなかった。
5時10分00秒から5時20分00秒まで、マンション近くを軽く散歩した。
それから6時00分00秒まで、筋肉トレーニングをした。
その後いつもの朝食をとり、パソコンの電源を付けると、先生から仕事が来ていないか確認した。
今日は仕事があったので、準備に取り掛かった。
1Kの三澤隼人の部屋にあるキャビネ棚を開けると、中には、片手で扱える小型
三澤隼人は、マシンガンは必要無いと判断し、その2本のスティレットをキャビネ棚から取り出すと、ベルトの両側に取り付けた専用の革製の鞘にそれぞれしまった。
外に出て目標地点に徒歩で向かった。
歌舞伎町に建っている雑居ビルの前に着くと、その外観を見渡した。
雑居ビルの中に入り、階段で4階に上がると、その中の一室の扉を開けた。
部屋の中で、1人の筋肉質な大男が、ベッドに横たわる1人の全裸の女に、何かの注射を打っていた。
その筋肉質大男が、扉を開けられた音を聞いて振り向いた。
筋肉質大男は、上半身裸に下半身はジーンズで、黄金色の十字架のネックレスを首からかけていた。
筋肉質大男は、怪訝な顔をして、扉を開けた三澤を見ると、次に怒りの表情を浮かべた。
「おい!
兄ちゃん、何勝手に部屋に入ってんだ?
ここが誰の部屋か分かってんのか?」
筋肉質大男が、そのまま、ずかずかと三澤に近づいてくる。三澤は向かってくる筋肉質大男を躱し、無視して、注射を打たれベッドに横たわる全裸の女の前に立った。
「おい!何見てんだよ!!」
筋肉質大男は三澤の肩を掴む。
すると、三澤はゆっくり振り向いた。
三澤は次に、無表情に筋肉質大男の顔の輪郭を確認した。
そして筋肉質大男から目を逸らすと、胸ポケットからA4用紙を出すと、用紙に印刷されている名前と顔写真の一覧リストを目視確認した。
筋肉質大男は、黙々とA4用紙のリストを目視確認している三澤をしばらく観察していたが、苛立って蹴り飛ばした。
三澤がどさりと倒れた。
だが、三澤は何事も無かったかのように倒れた体制から床に座り直すと、メガネの眉間を右手の中指で軽く押さえてかけ直し、再びA4用紙のリストを目視確認し直した。
「さっきからテメェは何やってんだ!
ぶっ殺すぞ!とっとと出てけや!!」
三澤はスッと立ち上がり、A4用紙を胸ポケットにしまった。
「間違いありません、貴方は、麻薬密売人の、
「あん?」
石川健二と呼ばれた大男は立ち上がった三澤の胸ぐらを左手で掴んだ。
「なんだテメェは。
何で俺が麻薬密売人だって知ってんだ?
テメェもサツの仲間か?
俺はテメェを知らねぇ。
さらに、テメェが俺を知ってるかもどうでもいい」
石川健二はそのまま左手で三澤を後ろに押した。
「もういいわ、俺、お前を今から殴り殺すわ!」
石川健二は右拳を三澤の顔面に叩き込もうとした。
勢いよく三澤の顔面に向かった石川健二の拳は、バシッと音がして、三澤の左手の平に無造作の掴まれた。
そして三澤は石川健二の右手を、掴んだ自身の左手で握りしめた。
「うっ・・・」
石川健二の右拳を握る三澤隼人の左手に徐々に握力が加わっていく。
「ぎ・・・いぎ・・・」
石川健二はその三澤の左手の上から左手で掴んだ。
三澤隼人の左手の握力がどんどん強くなっていく。
「い・・・いぎゃあああ!痛ぇ!痛ぇ!は・・・離せ!離せえぇぇぇ!」
凄まじい握力が石川健二の右拳に加えられた。細身に見える三澤の身体からは信じられない握力だった。
そのまま三澤は石川健二の右腕を膝蹴りした。
ベキッと鈍い音がして、石川健二の右腕が変な方向に曲がった。
「ぎゃあああああ!」
石川健二は叫ぶと、うずくまってうめいた。
石川健二は顔を真っ赤にして、折れた腕の痛みを堪えて、左手でジーンズのベルトから拳銃を取り出すと、三澤に向けた。
「く・・・くたばれ!!」
石川健二が引き金に指をかけた。
パンッっと石川健二の構えた拳銃から弾丸が飛び出たが、三澤はその弾道をあらかじめ分かっていたかのように弾丸を躱した。
「あ?」
さらに二撃の弾丸が石川健二の拳銃から放たれた。しかし、難なく三澤は弾丸を躱した。弾丸は三澤の身体を掠りもせずに壁に埋め込まれた。
「あ・・・当たらねぇ?この至近距離で?」
石川健二が再度引き金を引いたが、カチッカチッと、弾丸を打ち尽くした空の拳銃が乾いた音を立てるだけだった。
現実が理解できず石川健二が狼狽した。
次の瞬間、石川健二の脳天に三澤が放ったスティレットが深々と突き刺さった。
「・・・がっ!」
石川健二は奇声をあげて白目を剥くと、どさりと仰向けに倒れた。
三澤隼人は倒れた石川健二から、脳天に突き刺したスティレットを抜いて血を払うと、ベルトにしまった。そして、スマートフォンを取り出し、先生に連絡を取った。そのまま、全裸の女を部屋に残し、部屋から立ち去った。
ビルを出るとまだ朝日が眩しかった。
歌舞伎町のゴジラロードを歩いていると、三澤隼人のスマートフォンにLINEの通知が来た。
突然ですけど、今夜19時に娘と食事します。もしご予定が無ければ、三澤君も一緒にいかがでしょうか?
との平林桜子からのメッセージだった。
分かりました。行きます。
と返信し、帰路についた。