第20話 目覚め

文字数 1,310文字

「地球取締局だ! おとなしくしろ!」ジャコー取締官たちが倉庫に踏み込んだ。だが中の光景を見て茫然とした。ポイズ星人たちは精神を崩壊させていた。暴れてそこらを破壊する者、お互いを傷つけあっている者、動けなくなって横たわる者・・・それは異様な状況だった。甘い匂いが倉庫の中に充満していた。
「一体、何が起こったんだ・・・」ジャコー取締官がつぶやいた。

 
美亜は意識を取り戻さず、眠ったままだった。時間があれば、飛鳥は美亜のそばに付き添っていた。病室に来る医師は相変わらず厳しい顔で診察をしていた。
(目を覚まして・・・)飛鳥は心の中で美亜に呼びかけていた。だがもう数日も同じ状態だった。
(もう美亜ちゃんは元に戻れないかもしれない。意識のないまま・・・)最悪の事態が彼女の心をよぎり、目から涙をこぼれさせた。それは美亜の頬を濡らしていた。
すると美亜がかすかに目を開けた。それにはっと気づいた飛鳥は、
「美亜ちゃん。わかる? 飛鳥よ。」と声をかけた。
「お、お姉さん・・・」美亜はかすかに声を出した。彼女の目はまぶしそうに小さく揺れていた。
「そうよ! しっかりして!」飛鳥は美亜の手を握り締めた。するとその手を握り返してきた。美亜の意識はさらにはっきりしてきているようだった。
「お姉さん。なにかずっと悪夢を見ていた・・・。」美亜がつぶやいた。
「ええ、そうよ。悪い夢を見ていたの・・・。でも、もう大丈夫よ・・・」飛鳥は涙で声を詰まらせていた。

 総督府にサンキン局長が報告に来ていた。
「ポイズ星人の仕業でした。巧妙な方法でオーデコロンの液体にビーロンを隠し、地球人を使って実験をしていたようです。」サンキン局長はリカード管理官に報告書を渡した。
「するとポイズ星人はこれを使ってよその星の侵略のために使おうというのか?」リカード管理官が尋ねた。
「多分、それを考えていたでしょう。でもやめるかもしれません。」
「そうなのか?」
「はい。我々がポイズ人が隠れている宇宙港に踏み込んだところ、奴ら自らその液体を浴びたようで精神が病んだ状態でした。自分の星の者があのようになったものをまた使うとは考えられません。」
「そうだな。そういう事であればポイズ星政府に通告しておく。それならその液体のことが表に出てポイズ星自体が禁止するだろう。」リカード管理官は報告書をデスクに置いた。
「しかしポイズ星人はどうしてそんな状態で見つかったんだ。危険がわかっているのに好きでその液体を浴びたりしないだろう。」リカード管理官はキラッと目を光らせて言った。
「ええ、・・・それは不明で。ポイズ星人全員がおかしくなっていましたので・・・ただ・・・」
「ただ、何かね?」
「忍者が・・・とつぶやいていた者がいましたのでもしかしたら例の者たちが・・・」サンキン局長は答えにくそうに言った。
「そうか。わかった。君はもういい。行きたまえ。」リカード管理官はそう言って窓の方を向いた。サンキン局長は冷や汗を流しながら管理官室を出て行った。
リカード管理官は椅子から立つとまた窓の外を見た。そこからはいつもと同じひっそりした町が見えていた。
「地球人め・・・」リカード管理官はそう言って息を吐いた。
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登場人物紹介

半蔵 (井上正介) 闇のお頭 笠取荘という旅館で番頭として働いている。

疾風 (佐藤 翔) 闇の者  普段はフリーの雑誌記者

児雷也 (田中 令二) 闇の者 メカ担当 普段は田中運送社の社長

霞 (渡辺 飛鳥)  闇の者のくノ一 普段は雑誌モデル

佐助 (山本 健)   闇の者  普段は地球大学新東京校の大学生。笠取荘でアルバイトをしている。

リカード管理官  マコウ人 総督府のナンバー3  地球取締局を統括している。

大山 文明 参事  地球代表部のトップ 

サンキン マコウ人 地球取締局 局長

ジャコー 地球取締局 取締官

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