第32話 作戦決行

文字数 2,005文字

 次の日の夜、半蔵たちはある岬に集まった。そこにステルスホバー機が用意されているはずだった。
月は雲に隠れ、暗い夜だった。その中で5人は集まった。確かに岬に5機のホバー機が置いてあり、そのそばに一人の男が立っていた。
「地球代表部の方か?」半蔵が尋ねた。
「調査課の課長、山根です。大山参事から命じられてホバー機を用意しました。そしてこれが現地の地図と衛星写真です。」
「確かに受け取った。」
「向こうの空港には黒色の小型機を用意してあります。調査課の機体で自動操縦で動きます。後はよろしくお願いします。」山根は言った。
「わかった。」
「では私はこれで・・・」山根はそう言って姿を消した。
「そっけないな。自分の部下が捕まっているというのに・・・」児雷也がつぶやいた。
「調査課は諜報活動が主だから、あまり他人と接触したくないんでしょう。それは私たちも同じだけど。」霞が言った。
「ステルスホバー機か。うまく操縦できるかな?」佐助はホバー機を触っていた。
「多分、大丈夫だ。コンピューターが飛行を安定させてくれている。とにかく落ちないようにしていれば大丈夫だ。」児雷也もホバー機を調べていた。
 疾風はその後ろでじっと夜空を見ていた。その顔には並々ならぬ覚悟の色が浮かんでいた。半蔵は衛星写真をチェックしながら疾風の様子が気にかかっていた。

 5機のステルスホバー機が岬を出発していった。その様子を岩陰に隠れていた山根はじっと見ていた。彼は帰ったふりをして忍者たちを監視していたのだった。
「これでうまくいく・・・」山根はそう言ってサングラスをかけてその場を離れた。

 5人が乗るステルスホバー機は低空を滑空し、誰にも見つからぬようにアハマの空港の近くに着いた。
「救出用の小型機は?」半蔵が尋ねた。
「来ております。」電子望遠鏡で児雷也が確認した。
そこから倉庫はすぐだった。5人は暗視ゴーグルをつけて身を隠しながら倉庫に接近した。
半蔵がいきなり手で制した。その動きに4人が身を低くした。前をそっと見るとその倉庫をバイオノイドが警備していた。
「バイオノイドだけか? 首謀者は中か?」半蔵はつぶやいた。この程度ならすぐに実行できそうだった。
「行くぞ!」半蔵が手で合図すると、疾風と霞、児雷也が横に回った。そして頃合いを見て半蔵と佐助が前から飛び出した。夜間センサーをつけているバイオノイドはすぐにそれに気づいた。剣を抜こうとするところに、
「バシッ!」と電子手裏剣を投げつけた。するとそれは胸に突き刺さり、そのバイオノイドは倒れて姿を消した。その後ろから別のバイオノイドが剣を振り上げて迫ってきていた。
 半蔵はレーザー刀を抜くと、そのバイオノイドを一刀のもとに斬り捨てた。その音に反応して周りからバイオノイドが剣を抜いて集まってきた。半蔵は刀を振り回して次々に斬っていった。
佐助も電子手裏剣を投げつけながら、逆手で刀を構えた。そして向かってくる剣を避けながらバイオノイドを斬り倒していった。
 その間に疾風たちは倉庫に飛び込んだ。そこには2体のバイオノイドがいたが、疾風と霞が刀を抜いてすぐに斬り倒した。
「助けに来ました。地球代表部調査課の方ですね。」疾風が声をかけると奥にいた5人の職員が立ち上がった。
「そうです。調査課の職員です。私は係長の峰山です。」職員の一人が言った。
(この人が蓮の父親か・・・蓮。もうすぐお父さんに会わせてやるぞ。)疾風はそう思いながら、
「近くの空港に脱出用の小型機を用意してあります。」と言った。
「これで助かる。」
「よかった。よかった。」
職員たちは喜び合った。
「早く脱出しよう。次々にバイオノイドが集まってきている。」外を見張っていた児雷也が言った。
「さあ、こちらへ。」霞が職員を案内して出ていった。児雷也が周囲を警戒しながら、最後に疾風が出た。そして戦っている半蔵に右手を挙げて合図を送った。
「では引き上げるぞ!」半蔵が佐助に言った。半蔵は煙玉を懐から取り出すと、それを地面に叩きつけた。
「ボン!」音がして辺りが煙に包まれた。その煙はバイオノイドのセンサーを狂わし、半蔵たちの追尾を不可能にした。煙が晴れた後には半蔵たちの姿はなかった。

 職員5人が小型機に乗り込んだ。あとはスイッチさえ入れれば、コンピューターの自動操縦で、このまま新東京空港の小型機用の滑走路までたどり着けるはずだった。
「では、お元気で。」疾風は声をかけた。
「ありがとう。皆さんのことは忘れないよ。」峰山主任は右手を出した。疾風も右手を出して握手した。

 小型機は無事に飛び立った。その様子を疾風は見つめていた。
(これで蓮のもとに父が帰る。よかった・・・)ホッとしながら息を吐いた。だが・・・

「ドカーン!」小型機は爆発して火に包まれた。

「どうしてだ!」疾風は思わず叫んだ。彼は目を見開いて火だるまの小型機が落ちていくのを呆然として見ているしかなかった。

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登場人物紹介

半蔵 (井上正介) 闇のお頭 笠取荘という旅館で番頭として働いている。

疾風 (佐藤 翔) 闇の者  普段はフリーの雑誌記者

児雷也 (田中 令二) 闇の者 メカ担当 普段は田中運送社の社長

霞 (渡辺 飛鳥)  闇の者のくノ一 普段は雑誌モデル

佐助 (山本 健)   闇の者  普段は地球大学新東京校の大学生。笠取荘でアルバイトをしている。

リカード管理官  マコウ人 総督府のナンバー3  地球取締局を統括している。

大山 文明 参事  地球代表部のトップ 

サンキン マコウ人 地球取締局 局長

ジャコー 地球取締局 取締官

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