第33話 失敗した任務
文字数 1,954文字
救出した職員とともに小型機は墜落して地面で燃えていた。疾風は力なく膝をついて呆然としていた。児雷也も霞も驚いてそこを動けなかった。だがもう引き上げる時間は迫っていた。
「引き上げるぞ!」合流した半蔵が声をかけた。
「しかしお頭・・・」疾風が言いかけたが、
「あれでは助からぬ。それより追っ手が来る。我らはすぐに姿を消さねばならぬ。」半蔵は疾風の腕を取った。そして引きずるようにホバー機のところまで引っ張っていった。
半蔵たちはホバー機に乗り、予定通り岬に帰り着いた。そこでホバー機を海中に落として処分した。
疾風もなんとか帰り着いていた。だがその心はどこかに置き忘れてきたかのようだった。心ここにあらずといったようにふらふらと歩いていた。すでに夜が明け、日が昇ろうとしていた。
(蓮。すまなかった。約束を守ることができなかった・・・)
次の日、小型機の墜落は報道されていた。エンジントラブルが原因で乗客すべてが死亡となっていた。その死亡者は地球代表部の職員とはされていなかったが、その5名の名前が発表されていた。その中には峰山吾郎、蓮の父親の名前があった。
(きっと蓮は父親の死を知る・・・)翔はすぐに蓮の家に向かった。
蓮は家の前にたたずんでいた。体を塀にもたれかけてじっと下を向いていた。それは悲しみをこらえる姿だった。それは翔に幼い頃のことをまた思い出させた。
それは父が帰ってくると知らされた日だった。その日も星を見ながら父を待っていた。だが父は帰ってこなかった。朝になっても・・・
代わりに祖母から父の死が知らされた。急に使いの者が来てそれを祖母に告げたのだという・・・。翔はそれが信じられず、受け入れることができなかった。彼はいつまでも外で父を待ち続けた・・・
「蓮。」翔は声をかけた。蓮は翔を見るや否や、すぐに駆け寄ってきた。
「嘘つき! お父さんは帰ってこない・・・」蓮はこらえていた涙を流していた。その手を握り締めて翔を叩いていた。
「ごめんよ。俺のせいで・・・。お父さんを助けられなくてごめんよ。」翔はそう謝っていた。蓮の悲しみを直に受けて、彼の心の痛みを感じた翔にはそう言うしかなかった。
「嫌いだ・・・みんな嫌いだ!」そう言い残して蓮は家に入って行った。翔は深く頭を下げるしかなかった。
「翔。」彼を呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこに正介が立っていた。
「おか、いえ、正介さん。」翔は正介がそこにいるのに驚いていた。
「こういう事だったのか。」正介は言った。
「すいません。あの子は死んだ峰山吾郎の息子です。ふとしたことから知り合って・・・」
「それであの子に自分の過去の姿を見ていたわけか。」
「そうだったのかもしれません。」翔は下を向いた。
「お前のことは先代から聞いて知っている。だが我らは情に流されてはならぬ。我らはなすべきことをせねばならぬ。」正介はきっぱりと言った。
「今回のことは残念です。しかし・・・」翔が言うのを正介が手を挙げて制した。
「私もおかしいと思っている。いきなり小型機が爆発するとは・・・。これは調べてみる必要がありそうだ。」正介は言った。
地球代表部は今夜も慌ただしかった。事故で死亡したのは公式にはここの職員ではないとされているが、調査課という影の部署の職員には違いなかった。
やっと一段落終わって、大山参事が執務室に戻ってきた。
「半蔵でもダメだったか・・・」そうため息をついていた。すると
「いや、まだ終わっておらぬ。」と声が聞こえてきた。
「終わっていないとは?」大山参事が聞いた。すると半蔵が姿を現した。
「離陸したばかりの小型機がいきなり爆発した。」
「そうだ。調査課が秘密裏に機体を回収して調べたら、エンジンの不調による爆発だったということだ。」大山参事が言った。
「いや、違う。そうには見えなかった。あれは仕掛けられた爆弾が爆発したのだ。」半蔵が首を横に振った。
「しかし・・・」
「これには何か陰謀が隠されている。この地球代表部を巻き込んだ・・・」
「何が言いたい?」
「まず調査課の5人が行方不明になったところからしておかしい気がする。彼らの本当の仕事は何なのだ?」半蔵は聞いた。大山参事は答えようかどうか迷っていたが、
「仕方がない。本当のことを言おう。彼らは第4係の者たちだ。その仕事は内部監査にある。」と言った。
「内部監査? 代表部の不正を見つける部署か?」
「そうだ。だから特殊な調査課の中でも第4係だけは独立している。」
「ということは彼らは何かを知って計画的に消された?」
「まさか・・・」
「いや、今度のことは誰かのシナリオの書いたままに進行しているような気がする。」半蔵は言った。
「すると・・・」
「心当たりがあるのか?」半蔵が尋ねた。
「あるにはあるが・・・」大山参事は言葉を濁した。
「引き上げるぞ!」合流した半蔵が声をかけた。
「しかしお頭・・・」疾風が言いかけたが、
「あれでは助からぬ。それより追っ手が来る。我らはすぐに姿を消さねばならぬ。」半蔵は疾風の腕を取った。そして引きずるようにホバー機のところまで引っ張っていった。
半蔵たちはホバー機に乗り、予定通り岬に帰り着いた。そこでホバー機を海中に落として処分した。
疾風もなんとか帰り着いていた。だがその心はどこかに置き忘れてきたかのようだった。心ここにあらずといったようにふらふらと歩いていた。すでに夜が明け、日が昇ろうとしていた。
(蓮。すまなかった。約束を守ることができなかった・・・)
次の日、小型機の墜落は報道されていた。エンジントラブルが原因で乗客すべてが死亡となっていた。その死亡者は地球代表部の職員とはされていなかったが、その5名の名前が発表されていた。その中には峰山吾郎、蓮の父親の名前があった。
(きっと蓮は父親の死を知る・・・)翔はすぐに蓮の家に向かった。
蓮は家の前にたたずんでいた。体を塀にもたれかけてじっと下を向いていた。それは悲しみをこらえる姿だった。それは翔に幼い頃のことをまた思い出させた。
それは父が帰ってくると知らされた日だった。その日も星を見ながら父を待っていた。だが父は帰ってこなかった。朝になっても・・・
代わりに祖母から父の死が知らされた。急に使いの者が来てそれを祖母に告げたのだという・・・。翔はそれが信じられず、受け入れることができなかった。彼はいつまでも外で父を待ち続けた・・・
「蓮。」翔は声をかけた。蓮は翔を見るや否や、すぐに駆け寄ってきた。
「嘘つき! お父さんは帰ってこない・・・」蓮はこらえていた涙を流していた。その手を握り締めて翔を叩いていた。
「ごめんよ。俺のせいで・・・。お父さんを助けられなくてごめんよ。」翔はそう謝っていた。蓮の悲しみを直に受けて、彼の心の痛みを感じた翔にはそう言うしかなかった。
「嫌いだ・・・みんな嫌いだ!」そう言い残して蓮は家に入って行った。翔は深く頭を下げるしかなかった。
「翔。」彼を呼ぶ声が聞こえた。振り返るとそこに正介が立っていた。
「おか、いえ、正介さん。」翔は正介がそこにいるのに驚いていた。
「こういう事だったのか。」正介は言った。
「すいません。あの子は死んだ峰山吾郎の息子です。ふとしたことから知り合って・・・」
「それであの子に自分の過去の姿を見ていたわけか。」
「そうだったのかもしれません。」翔は下を向いた。
「お前のことは先代から聞いて知っている。だが我らは情に流されてはならぬ。我らはなすべきことをせねばならぬ。」正介はきっぱりと言った。
「今回のことは残念です。しかし・・・」翔が言うのを正介が手を挙げて制した。
「私もおかしいと思っている。いきなり小型機が爆発するとは・・・。これは調べてみる必要がありそうだ。」正介は言った。
地球代表部は今夜も慌ただしかった。事故で死亡したのは公式にはここの職員ではないとされているが、調査課という影の部署の職員には違いなかった。
やっと一段落終わって、大山参事が執務室に戻ってきた。
「半蔵でもダメだったか・・・」そうため息をついていた。すると
「いや、まだ終わっておらぬ。」と声が聞こえてきた。
「終わっていないとは?」大山参事が聞いた。すると半蔵が姿を現した。
「離陸したばかりの小型機がいきなり爆発した。」
「そうだ。調査課が秘密裏に機体を回収して調べたら、エンジンの不調による爆発だったということだ。」大山参事が言った。
「いや、違う。そうには見えなかった。あれは仕掛けられた爆弾が爆発したのだ。」半蔵が首を横に振った。
「しかし・・・」
「これには何か陰謀が隠されている。この地球代表部を巻き込んだ・・・」
「何が言いたい?」
「まず調査課の5人が行方不明になったところからしておかしい気がする。彼らの本当の仕事は何なのだ?」半蔵は聞いた。大山参事は答えようかどうか迷っていたが、
「仕方がない。本当のことを言おう。彼らは第4係の者たちだ。その仕事は内部監査にある。」と言った。
「内部監査? 代表部の不正を見つける部署か?」
「そうだ。だから特殊な調査課の中でも第4係だけは独立している。」
「ということは彼らは何かを知って計画的に消された?」
「まさか・・・」
「いや、今度のことは誰かのシナリオの書いたままに進行しているような気がする。」半蔵は言った。
「すると・・・」
「心当たりがあるのか?」半蔵が尋ねた。
「あるにはあるが・・・」大山参事は言葉を濁した。