第23話 待っている人

文字数 1,272文字

総督府のドグマ副総督の部屋をノックする音が響いた。
「入れ。」
「ペリー取締官です。」ジガス秘書官がドアを開け、ペリー取締官を部屋に案内した。
「よく来た。ペリー君。君の活躍はここまで聞こえている。」ドグマ副総督は笑顔で迎えた。
「副総督のおかげです。存分に捜査を行えます。」ペリー取締官は頭を下げた。
「それでは例の忍者を捕まえる日も近いな。」
「はい。必ず捕まえて御覧に入れます。」ペリー取締官は自信満々に言った。
「期待しているぞ。リカードたちに任せていたらいつまでたっても成果が上がらん。君のような有能な者に来てもらってよかった。」
「恐れ入ります。」
「例の忍者を捕まえて手柄を挙げたら、次はマコウ星調査局第一部の次長に特進だ。私が約束しよう。しっかりやってくれたまえ。」ドグマ副総督は機嫌がよかった。

ペリー取締官を送り出した後、ジガス秘書官は副総督室のドアを閉めた。
「どう思う?」ドグマ副総督が聞いてきた。
「並の人物でしょう。可もなく不可もなく。」ジガス秘書官は答えた。
「お前は手厳しいな。確かにそうだ。だから使い物になる。」
「またいろいろお考えで・・・」
「奴が忍者を捕まえるのもよし、失敗するのもよし。成功したらリカードたちの怠慢を指摘できるし、失敗しても取締局に非難が集まる。いずれにしてもリカードを何とかできよう。あのしたり顔の目の上のたん瘤をな。」ドグマ副総統はそう言った。
「そうなればめでたいことですな。」ジガス秘書官はただそう言って部屋を出て行った。


(早く忍者を捕まえてやる。そうしたら出世だ。もう誰にも何も言わせはしない!)ペリー取締官は首にかけているロケットを開いた。そこには3次元画像でマコウ人の若い女性が微笑みかけていた。
「もうすぐだ。もうすぐなんだ・・・」彼の心の中には恋人のマーサの思い出で満たされていた。マーサはマコウ首脳部の大物の一人娘だった。結婚の約束をマーサとしたが、一介のただの公務員が結婚できる相手ではなかった。彼女の両親はもちろん、その周囲の者から大反対を受けた。
「私ならいいのよ。あなたのためならすべてを捨てる・・・」マーサは言ってくれた。しかし愛するマーサにそんなことはさせられなかった。
「俺は出世して偉くなる。それなら誰も反対しはしない。だから待っていてくれ。」
ペリーはそのために地球に来た。ドグマ副総督という遠い縁故をたどって・・・。
彼はロケットを操作して、送られてきたマーサからのメッセージを開いた。

「地球でのご公務は大変でしょう。優しいあなたのことだからマコウの方はもちろん地球の人にも慕われていると思います・・・私はいつまでも待っています・・・」

ペリー取締官はぐっとロケットを握り締めた。彼女は自分がここでマコウにいた時と同じように、人々に寄り添って仕事をしていると思い込んでいる。こんなひどいことをしているとも知らずに・・・。
「これもすべて2人のためだ。幸いにもドグマ副総督は自分を引き立ててくれようとしている。出世して帰れば何もかもうまくいく。必ずやり遂げる!」ペリー取締官はぐっと口を結んだ。
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登場人物紹介

半蔵 (井上正介) 闇のお頭 笠取荘という旅館で番頭として働いている。

疾風 (佐藤 翔) 闇の者  普段はフリーの雑誌記者

児雷也 (田中 令二) 闇の者 メカ担当 普段は田中運送社の社長

霞 (渡辺 飛鳥)  闇の者のくノ一 普段は雑誌モデル

佐助 (山本 健)   闇の者  普段は地球大学新東京校の大学生。笠取荘でアルバイトをしている。

リカード管理官  マコウ人 総督府のナンバー3  地球取締局を統括している。

大山 文明 参事  地球代表部のトップ 

サンキン マコウ人 地球取締局 局長

ジャコー 地球取締局 取締官

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