第12話 友人

文字数 1,904文字

 令二はある場所をじっと見張っていた。その夜も月が隠れていた。時刻はもう真夜中になっており、全く人の姿はなかった。
「カチャッ。」静かにドアを開けて外に出てくる人影があった。その人影は周囲を警戒して、誰にも見られていないのを確認してから静かに歩き始めた。手にはカバンを持っていた。
(行くか・・・)令二は音を立てずにそのそばに寄った。
「こんな時間にどこに行く?」令二は声をかけた。その人影は一瞬、ビクッとして振り返ったが、相手が令二だと分かり、ホッとしているようだった。
「ちょっと気晴らしだ。夜に歩いているんだ。」それは圭吾だった。
「そうか?じゃあ、これを何と説明する。」令二は金属片を差し出した。それを見て圭吾は一瞬、顔色を変えたが、すぐに平然として、
「何だ? わからないなあ。何の部品だ?」と言った。
「これは爆破された取締局の事務所の現場に落ちていた。これはお前が作った物だ! 一体、どうしてこんなことを!」令二は問い詰めるように言った。
「し、知らない!」圭吾はそう言ってカバンを抱えて逃げようとした。しかしその前に令二は圭吾の腕をしっかり捕まえた。
「言うんだ! お前の爆弾のためにどれほどの人が苦しめられていると思うんだ! どうしてだ!」令二は圭吾の胸ぐらをつかんだ。
「俺じゃない! 知らない!」圭吾は頭を振って否定した。だが彼は令二を真っすぐ見ることはできなかった。
「俺にまで嘘を言うのか! お前はこんなことをする奴じゃなかった! 言ってくれ。 俺はお前の力になりたいんだ!」令二の目には涙が浮かんでいた。それを見て圭吾は胸を打たれたようだった。
「どうしようもなかったんだ・・・どこからか、俺の腕を知って仕事を依頼してきたんだ。探査機にかからない爆弾を作って、指示した取締局の事務所の近くに持ってこいと。俺はそんな恐ろしいこと、すぐに断ったさ。だが奴ら、脅迫してきやがった。俺の身どころか、家族も危害を与えると言ってきやがった。だから言うことを聞くしかなかった・・・しかし俺の目の前で爆弾が爆発して多くの人が死んだ。俺のせいで・・・。もうやりたくないと言っても奴ら許してくれなかった。お前は共犯だ。もうやめることはできないと。」圭吾は目をぐっと閉じて言った。彼は良心の呵責で震えていた。
「一体、誰に頼まれた?」令二が訊いた。
「それは言えない。奴ら、見張っているんだ。人に話したらどんなことになるか・・・」圭吾は不安そうに辺りを見渡した。
「大丈夫だ。俺がお前を守る。だから言うんだ。」令二は圭吾の方を捕まえてそう言った。
「無理だ。相手が悪すぎる。」
「何だって?」
「そいつだけじゃない。その背後にはさる大物がついているんだそうだ。俺たちのような地球人には手も足も出ない。」圭吾が首を横に振った。
「圭吾!思い出すんだ。お前は筋を通す男だった。だから研究室でも人とぶつかってばかりいたんだろ。でもお前の正しさは俺が知っている。そんなお前ならどんな相手でも立ち向かって行けるはずだ。だからお前を脅した奴を白日の下にさらすんだ! そうなればいくら大物がついていようともそんな奴らを一掃できる。お前しかできないんだ!」
「しかし・・・」
「これ以上、犠牲者を増やしたくないだろう。お前が手を貸さなくてもそいつらは他の者を使ってでも爆破を続けるはずだ。お前が決心したらこんなことは終わるんだ!」令二は必死になって言った。その令二の姿に圭吾は決意した。
「令二・・・わかった。言うとおりにしよう。これが爆弾だ。何もかも言おう。」圭吾は言った。右手のカバンを上にあげた。
「わかってくれたか。」令二が言った。
「ああ、そいつは・・・」圭吾が言いかけた時、ナイフが飛んできた。
「うっ!」そのナイフは圭吾の胸に深く刺さった。圭吾はカバンを落として、その場に倒れた。そこに黒い人影が現れてカバンを奪った。
「何者だ!」令二が叫んだ。その人影は何も言わず、ナイフを投げてきた。令二は慌てて後ろに下がって避けたが、その人影はなおもナイフを手に取って投げつけようとしていた。
「待て!」そこに忍び装束の佐助が現れた。そしてレーザー刀を逆手に構えた。それを見て人影はカバンを持って逃げて行った。佐助は令二に目で合図すると、その後を追っていった。
「圭吾!しっかりしろ!」倒れた圭吾を令二が抱き起した。
「俺はもうダメだ・・・仇を取ってくれ・・・そいつの名は・・・」圭吾の声は小さくなっていった。令二は耳を寄せて最期の言葉を聞いた。そして言い終わると圭吾はこと切れた。
令二はゆっくり圭吾を下ろした。そして立ち上がった。
「許さん!」令二の両手の拳が震えていた。
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登場人物紹介

半蔵 (井上正介) 闇のお頭 笠取荘という旅館で番頭として働いている。

疾風 (佐藤 翔) 闇の者  普段はフリーの雑誌記者

児雷也 (田中 令二) 闇の者 メカ担当 普段は田中運送社の社長

霞 (渡辺 飛鳥)  闇の者のくノ一 普段は雑誌モデル

佐助 (山本 健)   闇の者  普段は地球大学新東京校の大学生。笠取荘でアルバイトをしている。

リカード管理官  マコウ人 総督府のナンバー3  地球取締局を統括している。

大山 文明 参事  地球代表部のトップ 

サンキン マコウ人 地球取締局 局長

ジャコー 地球取締局 取締官

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