第19話 踏み込む

文字数 2,010文字

「はっはっは。ここまで来たらもう大丈夫だ。」
 そこは宇宙港の倉庫だった。もうすぐポイズ星人たちはシャトルで地球を離れることができる。
「地球取締局の連中は地団太踏んでいるだろうよ。」
「ああ。我らにはマコウの協力者がいる。我らが脅せばちょろいもんよ。」
「この液体の威力は証明された。残りを持って帰って別の星にばらまいてみるか。」彼らの傍らには液体の入った容器が無造作に置かれていた。
「そうだな。もう少し別の野蛮な星で試すか。サンプルは多い方がいいからな。」
ポイズ人たちは愉快そうに話していた。そこに別のポイズ人に連れられて一人の老人が入ってきた。その老人は白髪に白いひげを生やしており、腰が曲がってよぼよぼ歩いていた。
「そいつは誰だ?」
「貨物船の船長だ。我らを秘密裏に運んでくれる。」そのポイズ人は言った。
「じいさん。頼むよ。」
「え?」その老人は耳を向けた。
「このじいさん。耳が遠いんだ。まあ、一人船長だけの宇宙貨物船だが、コンピューターが操るんだから大丈夫だろう。」
「まあ、いいか。じゃあ、よろしくな。じいさん。近くの星まで乗せていってくれ。」ポイズ星人は老人の耳に向かって大きな声で言った。
「えっ?あんたらお尋ね者だって?」老人はとぼけたように言った。
「とんでもないことを言いだす奴だ。耄碌しているのか?」ポイズ星人は眉間にしわを寄せて老人を見た。するとその時、倉庫の電灯が消えた。
「な、なんだ!」ポイズ星人が騒いだ。
「お前たちは多くの地球人をだまして、危険な薬を与えて精神に障害を負わせた。このまま逃げられると思うのか?」その声は低く倉庫に響き渡った。
「何だと! 貴様! 何者だ!」ポイズ星人たちは小型ライトをつけて辺りを見渡した。しかしそれらしい人影は見えなかった。
「我らはお前たちを逃さぬ。」声はまたしても響いてきた。ポイズ星人たちは姿を見せぬ相手に半ばパニックになっていた。だが彼らの一人が老人の口が少し動いているのに気付いた。
「貴様だな! 何のつもりだ!」ポイズ星人が老人の体をつかもうとした。だが彼がつかんだのは服だけでその中身はなかった。服を脱ぎ捨てて消えてしまったようだった。
「どこだ!」ポイズ星人が叫んだ。すると暗がりに人影が浮かんだ。それは老人の姿ではなかった。忍び装束の半蔵だった。
「ふふふ・・・」今度は笑い声が響いた。
「貴様! ただのじじいではないな。」
「お前たちが必ずここから逃走すると思って、密輸貨物船の船長に変装して待っていた。」半蔵は言った。
「取締局の犬か?」
「いいや。我らは闇。闇に生まれ闇に生きし者。この世の悪を正しに参上した。」するとその背後に霞、疾風、児雷也、佐助も姿を現した。
「お前たちは皮膚に触れればビーロンになるオーデコロンを広め、多くの人たちの精神を崩壊させた。」半蔵は言った。
「その中には将来に夢と希望を持つ若い女性もいたのよ。それを踏みにじったあなたたちを決して許さない!」霞が声を上げた。
「何を! 地球人のくせに!」ポイズ星人は叫んだ。
「たとえ天が許しても我らが許さぬ。貴様らを地獄に案内仕る。」そう言うと半蔵たちはポイズ星人に近づいてきた。
「な、何を。貴様らこそここで死ね!」ポイズ星人たちはカプセルからバイオノイドを取り出すと半蔵たちに立ち向かわせた。
「ズバッ!」半蔵は刀を抜くや否や、向かってくるバイオノイドを斬り捨てた。そして刀を振り上げさらに近づいてきた。
「ひ、ひるむな! 奴らを殺せ!」ポイズ星人たちは恐怖にかられながらもバイオノイドに命令した。暗がりの中で刀と剣を交えて斬り合いが始まった。霞は逆手斬りでバイオノイド剣を受けると、押し込まれたものの蹴り上げて後ろに下がったところを斬り倒した。他のバイオノイドも忍者たちに次々に斬られて消えていった。
「お、おのれ!」ポイズ星人たちはその隙にそこから逃げようとした。だがその前に霞が立ちはだかった。
「ここからは逃がさない! 報いを受けなさい!」霞は電子鎖で液体の入った容器をひっかけた。それをぐっと引き寄せると、ポイズ星人たちの真上の天井にぶつけて破壊した。すると中の液体がポイズ星人たちに振りかかった。辺り一面、甘い匂いが漂った。
「き、貴様・・・」ポイズ星人たちは慌てて体についた液体をぬぐっていた。彼らにはそんなに多量に浴びればどうなるかがわかっていた。もはやビーロンの精神安定作用をこえる恐怖が彼らを覆いつくしていた。そして・・・
「う、うわあ・・・」すぐにポイズ星人たちに精神の崩壊が始まった。
「自分たちの作った薬を存分に味あうがいい。」半蔵は冷ややかに言った。5人の忍者はのたうち回るポイズ星人を遠巻きにして見ていた。
 外はにわかに騒がしくなってきた。大きな音を聞いて多くの者がここに向かってきているようだった。半蔵は引き上げを目で合図した。霞は最後までポイズ星人をにらみながらそこから出て行った。
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登場人物紹介

半蔵 (井上正介) 闇のお頭 笠取荘という旅館で番頭として働いている。

疾風 (佐藤 翔) 闇の者  普段はフリーの雑誌記者

児雷也 (田中 令二) 闇の者 メカ担当 普段は田中運送社の社長

霞 (渡辺 飛鳥)  闇の者のくノ一 普段は雑誌モデル

佐助 (山本 健)   闇の者  普段は地球大学新東京校の大学生。笠取荘でアルバイトをしている。

リカード管理官  マコウ人 総督府のナンバー3  地球取締局を統括している。

大山 文明 参事  地球代表部のトップ 

サンキン マコウ人 地球取締局 局長

ジャコー 地球取締局 取締官

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