第２２話　不協和音

　サンキン局長はリカード管理官に呼び出されていた。
「最近、取り調べのための逮捕者が多いようだな。噂はここまで聞こえている。」リカード管理官は言った。
「はい。例の忍者を捕まえるためとして、新しく赴任したペリー取締官が奮起しているようです。」サンキン局長は流れる汗をハンカチで拭った。
「そうか。成果は上がっているのか？」
「いえ、まだ。しかし少しずつでも奴らを追い詰めてはいると思います。」
「本当にそうか？　奴らは今までも尻尾を出したことはなかった。その取締官は何かあてでもあるのか？」リカード管理官の目が光った。
「ええ、いえ。そこまでは聞いておりませんが・・・」サンキン局長は言葉を濁した。
「いくら地球人とは言え、無理を押し通せば騒ぎが起こる。あまり反感を買わぬようにな。」リカード管理官は静かに言った。
「はっ。それはもう・・・」
「手柄を焦っているのか？　その取締官はペリーとか言ったな。確か最近、マコウから来た者だな。」
「はい。ドグマ副総督が以前おられたマコウ星の調査局からですが・・・」
「そうか。」それを聞いてリカード管理官は窓の方に顔を向けた。そのような時はリカード管理官が考えを巡らしているので、それを邪魔しないようにサンキン局長は頭を下げてそっと部屋を出た。


　笠取荘の隠し部屋に5人が集まっていた。
「調べましたが、町はずれの古いビルを取締局の第3部局として多くの人を閉じ込めているようです。」疾風が言った。
「こんなことが許されるのですか！」児雷也は机を叩いて言った。
「私も見ました。街の人たちが大勢、連れていかれるのを。」霞も言った。
「僕たちを探しているんだ。そのためにひどい目に合っているんだ。」佐助が言った。
「しかし我らが出て行くわけにいかぬ。」半蔵は重々しく言った。
「ただ今までと違うようです。新しく着任したペリーという取締官が捜査の指揮を執っているようです。」疾風が言った。
「周囲からいろいろ話を聞いて回りましたが、取締局の中でも問題になっているようです。」霞が言った。
「助け出しましょう。奴は地球人を奴隷としか見ていない。あんな奴に捕まっていたら、どれほど犠牲が出るか。」児雷也が言った。
「待て。それがどういうことかわかるか。いくら問題のある取締官でもそこに押しかけたら、取締局に正面から反抗することになるのだぞ。」半蔵が言った。
「わかっています。それは覚悟の上です。」児雷也は言った。それは疾風も霞も佐助も同じだった。半蔵は4人の顔を見渡しながら
「ふうっ。」と息を吐いた。


　総督府のドグマ副総督の部屋をノックする音が響いた。
「入れ。」
「ペリー取締官です。」ジガス秘書官がドアを開け、ペリー取締官を部屋に案内した。
「よく来た。ペリー君。君の活躍はここまで聞こえている。」ドグマ副総督は笑顔で迎えた。
「副総督のおかげです。存分に捜査を行えます。」ペリー取締官は頭を下げた。
「それでは例の忍者を捕まえる日も近いな。」
「はい。必ず捕まえて御覧に入れます。」ペリー取締官は自信満々に言った。
「期待しているぞ。リカードたちに任せていたらいつまでたっても成果が上がらん。君のような有能な者に来てもらってよかった。」
「恐れ入ります。」
「例の忍者を捕まえて手柄を挙げたら、次はマコウ星調査局第一部の次長に特進だ。私が約束しよう。しっかりやってくれたまえ。」ドグマ副総督は機嫌がよかった。

　ペリー取締官を送り出した後、ジガス秘書官は副総督室のドアを閉めた。
「どう思う？」ドグマ副総督が聞いてきた。
「並の人物でしょう。可もなく不可もなく。」ジガス秘書官は答えた。
「お前は手厳しいな。確かにそうだ。だから使い物になる。」
「またいろいろお考えで・・・」
「奴が忍者を捕まえるのもよし、失敗するのもよし。成功したらリカードたちの怠慢を指摘できるし、失敗しても取締局に非難が集まる。いずれにしてもリカードを何とかできよう。あのしたり顔の目の上のたん瘤をな。」ドグマ副総統はそう言った。
「そうなればめでたいことですな。」ジガス秘書官はただそう言って部屋を出て行った。