第2章(9)強制査察、執行!
文字数 1,189文字
ナターシャが操縦する『ガルーダ』一番機は、大きな海賊船の甲板に据え付けられた光線砲に直上から垂直降下した。
甲板上に銃で武装した海賊の乗組員達が現れる。
「魔力変換機関拡散防止条約第三条第二項に基づき! 魔力に拠って生産・稼働を補助された物質、役務、設備、施設及び情報が軍事的目的を助長するような方法で利用されないことを確保するため! 世界連合魔力管理委員会の名において、ここに強制査察を執行する!」
揚力装置の音に負けない大声でナターシャは怒鳴り、制御把柄の射撃ボタンに指をかけた。
機首下部の6銃身回転式機関砲が猛然と火を噴き、近付いてきた海賊達の足元ぎりぎりに無数の弾痕を穿つ。
海賊達はくもの子を散らすように逃げて行った。
ナターシャは続けて光線砲を銃撃したが、ブリーフィングでディータが言った通り砲塔の装甲は頑丈で、近距離からでもかすり傷しか負わせられなかった。
「ならば!」
ナターシャは自機を着陸形態に変形させ光線砲に覆い被せると、制御把柄を注意深く操作して機体の胴体に収納されていた左右機械腕を展開した。
伸縮する一対の支持架の先端には、人間と同じ五本の指を持った『手』が備え付けられている。
ナターシャはその『手』を操って光線砲の動輪を掴み放射器を一八〇度後ろに向け、次に甲板に擲弾筒で鋼線のついた銛を二発撃ち込んで機体と光線砲とを固定し旋回を不可能にした。
「一番機、目標を制圧完了!」
〈二番機了解じゃ!〉
上空を旋回するシャンタニの二番機が、噴進弾筒から連合海軍に向けた信号弾を発射する。
〈しかし楽勝じゃな。この分なら昼にはのどかのヤマト料理にありつけそうじゃ〉
通信の向こうでシャンタニが舌なめずりしている。
「油断大敵だぞメルワ准尉! 予定通りこの船に威嚇射撃をして『エピメテウス』の待ち伏せポイントまで誘導するんだ」
〈むー、了解〉
シャンタニは面倒臭そうな返事をして、しかし迅速に行動した。
船体の右側面に回りこんで周囲の海面に威嚇射撃し、何発かは致命傷にならない程度に船体に当ててみせる。
銃撃を回避しようと、海賊船は針路を西へ向ける。
「いいぞメルワ准尉、そのまま船を西に……あっ!」
ナターシャの視界の隅、大型船に随伴する海賊のスループ船の一隻で何かが光った。
「下だ! 避けろ!」
ナターシャの警告に、シャンタニは反射的に操縦桿を横に倒した。
直後、今までシャンタニの機体があった空間を、白い煙を引いて何かが高速で飛んで行く。
〈噴進弾じゃと!〉
まだ終わらなかった。いったん上昇したそれは、空中でくるりと向きを変えてあたかも猟犬のようにシャンタニの機体に再び迫ってくる。
下で見つめるナターシャは顔をこわばらせた。
「これは、ただの噴進弾じゃない……!」
甲板上に銃で武装した海賊の乗組員達が現れる。
「魔力変換機関拡散防止条約第三条第二項に基づき! 魔力に拠って生産・稼働を補助された物質、役務、設備、施設及び情報が軍事的目的を助長するような方法で利用されないことを確保するため! 世界連合魔力管理委員会の名において、ここに強制査察を執行する!」
揚力装置の音に負けない大声でナターシャは怒鳴り、制御把柄の射撃ボタンに指をかけた。
機首下部の6銃身回転式機関砲が猛然と火を噴き、近付いてきた海賊達の足元ぎりぎりに無数の弾痕を穿つ。
海賊達はくもの子を散らすように逃げて行った。
ナターシャは続けて光線砲を銃撃したが、ブリーフィングでディータが言った通り砲塔の装甲は頑丈で、近距離からでもかすり傷しか負わせられなかった。
「ならば!」
ナターシャは自機を着陸形態に変形させ光線砲に覆い被せると、制御把柄を注意深く操作して機体の胴体に収納されていた左右機械腕を展開した。
伸縮する一対の支持架の先端には、人間と同じ五本の指を持った『手』が備え付けられている。
ナターシャはその『手』を操って光線砲の動輪を掴み放射器を一八〇度後ろに向け、次に甲板に擲弾筒で鋼線のついた銛を二発撃ち込んで機体と光線砲とを固定し旋回を不可能にした。
「一番機、目標を制圧完了!」
〈二番機了解じゃ!〉
上空を旋回するシャンタニの二番機が、噴進弾筒から連合海軍に向けた信号弾を発射する。
〈しかし楽勝じゃな。この分なら昼にはのどかのヤマト料理にありつけそうじゃ〉
通信の向こうでシャンタニが舌なめずりしている。
「油断大敵だぞメルワ准尉! 予定通りこの船に威嚇射撃をして『エピメテウス』の待ち伏せポイントまで誘導するんだ」
〈むー、了解〉
シャンタニは面倒臭そうな返事をして、しかし迅速に行動した。
船体の右側面に回りこんで周囲の海面に威嚇射撃し、何発かは致命傷にならない程度に船体に当ててみせる。
銃撃を回避しようと、海賊船は針路を西へ向ける。
「いいぞメルワ准尉、そのまま船を西に……あっ!」
ナターシャの視界の隅、大型船に随伴する海賊のスループ船の一隻で何かが光った。
「下だ! 避けろ!」
ナターシャの警告に、シャンタニは反射的に操縦桿を横に倒した。
直後、今までシャンタニの機体があった空間を、白い煙を引いて何かが高速で飛んで行く。
〈噴進弾じゃと!〉
まだ終わらなかった。いったん上昇したそれは、空中でくるりと向きを変えてあたかも猟犬のようにシャンタニの機体に再び迫ってくる。
下で見つめるナターシャは顔をこわばらせた。
「これは、ただの噴進弾じゃない……!」