第3章(10)翠色

文字数 339文字

 
 どくん

 ――目覚めなさい

 声が聞こえた。

 ――目覚めなさい

(え……?)

 ――目覚めるのです

(誰なの?)

 ――わたしはあなたの記憶の流れ あなたはわたしの記憶の形

 ――あなたがわたしを望む限り わたしはどこにでもいます

 その声は確かに、涼宮のどかの耳朶を打った。

 ――さあ 目覚めるのです ほしの子よ





〈私は、また罪を犯したのね〉

 無線機から、レーネの嗚咽が聞こえる。

「……そうやって、全部自分で背負おうとする。だから嫌いなんだ」

〈スミルノワさん?〉

 ナターシャ・スミルノワは海を凝視しながら、ゆっくり首を振った。

「見ろ。まだ終わっていない」

 直後、海面が再び、まばゆい翠色の輝きを取り戻す。
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