第50話 は〜?俺の懸賞金、安すぎじゃん!
文字数 2,519文字
良かった、生きてる。
山にいるのが軍人だったらマズイと思ったけど、奴は1人で来たんだろう。
ただ、岩山でどうしているのか、視線を感じない。
嫌われたかな?とも思うけどさ、仕方ないだろ。これが現実だ。
結果オーライだ。
「ダンク、それでいい、迷うな。
殺そうとする奴は自分が死ぬことなんか考えてない。
まして、スナイパーなんてその極みだろ。
そこに隙があるのさ。
だが、まず取ろうと思うならあの場所だ。あいつもそれをわかっている。
だから同じ場所にいなかった腰抜けだ。
あいつらは捨て駒だ。
俺に殺させるのが目的なんだ。
そうして俺の居場所を奪い取ろうとしている。
なあ、雪、ごめんな。俺はリタイヤするつもりだったんだがなあ。
こうなったらよ、お前がただの美術品に成り下がるときまで、付き合ってくれよ、雪雷。」
森の先の道を見回す。一見何も無い。だが、
わかる。わかるぞ。そこにいるのが。7人と、その先かなり距離を置いて1人、きっと女だ。
自分は軍で、歩くレーダーと呼ばれていた。
意識で見て、目で見てない。
ほら、そこ、そこと、あの木の影もだ。生きてる奴の気配がわかる。殺気が見える。
光学迷彩か。本当にくだらねえ。
はした金でいい装備を受け取り、無敵になったような気分で殺しを請け負って、死ぬことなんか考えてねえ。
だからそんな場所に隠れていられる。
強盗だってそんな間抜けな隠れ方はしねえよ。
森を抜けて、森に隠れた機関銃の正面に出る。
馬鹿野郎!もっと上手に隠れやがれ!まる見えだ!
バッとナイフを1本放った。
銃口がこちらを向き、引き金を引く前に!雪でナイフを叩き!
カーーーン!! 「 殺る!! 」
ドスッ! 「ガッ!」
木の影に隠れ、銃口を向ける男が絶命し、手が痙攣して指がトリガーに触れた。
タタ……
一瞬のトリガーに反応して、2発の銃弾が走る。
「えー!マジか!?」 残念!幸先わりぃ〜くっそ!
「2発も出たかー、
サトミがガッカリして前方の道を見る。
ナイフさえも惜しくなってきた。
「ド素人がコソコソ隠れてるの、マジうぜぇ〜
そうだ、これだ!」
ごそごそ足のポーチから取り出したモノを指にはさんで見る。
それは!
クギだ!
家からいっぱい持ってきた奴、使うときが来たじゃん!!
地雷強盗撃退してから、俺には全然強盗来なくなってしまった。
いろいろ準備してたのに、使うときがなかなか来ない。
さびしい! 強盗カモン!
バッと右の宙に蒔いて、雪雷の背で叩く。
キキキキキンカカッ!!
それは弾丸のように一直線に右前方へ走り、一見何も無い離れた窪地が、いきなり歪んで盛り上がり、悲鳴を上げて男が飛び起きた。
「グアッ!ギャアアア!!痛えっ!痛えっ!!ギャアア!うぐああああ!!」
光学迷彩のシートを背中に釘付けにされて男がもんどり打って転げ回る。
俺は思わずグッと手を握った。
「死んでない!よしっ!!
元気じゃん!オッケーじゃん!
ちょっと長すぎるかもしれんけど。ハハッ!」
通り過ぎるとき、思わずそいつにニッコリ笑いかけ、親指を立てた。
死ななかったな!上出来だ!!
「よしっ!じゃんじゃん行くぜーーーー!!
死んだら運が悪かった!そう言うことだ!」
ガッとひとつかみクギを取り、腰を上げてバッと前方に放り投げた。
キキキキキンッ!!キキキカカカカンッ!!
ドドドドドドスッ!
「ぎゃあっ!」「な、なんだよ!これええああああ!!」
神速で雪の背で叩きまくり、撃つ前に動きを止める。
ベンが座った目で、悲鳴を上げ転げ回る男達を横目に通り過ぎた。
「ハハハ!死ぬな!死ぬな!死ぬなよ!!下界民っ!」
「なんだよ、なんだよこいつ!」
タタタタタタタンッ!!
キキキキキンッ!! ドドドドスッ! 「ぐがぁっ!ぎゃあああ!!」
「よし!」
バンッ!!
バックショットの弾が飛んでくる。
瞬時に背中に積んでた空の郵便袋を引き出し盾にした。
「キシシシシ!出たな、ショットガン!」
迷彩のシートかぶって木の影に潜んでいた馬がのっそり出てきた。
バンッ!バンッ!
思い切り右に身体を避け、ベンの首を叩いて頭を下げる。
「キシシシシ!」
バンッ!バンッ!
「10万ドルは俺がもらう!!」
通り過ぎる瞬間、男が叫んでまた撃ってきた。
避けながら、マジかよって思う。
「俺って10万ドルかあ、やっすいなあ。安すぎるぜ、エンプティ!」
あぶみから足を抜き、雪を口にくわえて足を上げ、ベンの背を蹴って軽く飛んだ。
バッ!!
「な!なにいいいい!!」
俺はその場で飛ぶだけで、追ってくる奴は自ら俺に迫ってくる。
追う男が焦って、反射的に銃を向け引き金を引く。
クルリとサトミが宙で一回転してバンと銃口を蹴り上げ、空へと発砲した。
バンッ!「うおおっ!」
「キヒヒヒヒ!!」
何だか楽しそうに笑って雪を手に馬の首に飛び降りる。
ガッと男の首に手を回し、顔を近づけニイッと笑った。
「こ、このや……ひっ」
「楽しいなあ、な、お前も楽しいだろ?」
ニイッと笑う眼前のサトミの顔が、あまりにも怖い。
普通じゃない。こいつ、こいつ狂ってる!殺しを楽しんでる!!
「は、離せっ!!」
「よう、悪いけどさ、殺す気満々な奴は死ね。」
ドカッドカッドカッドカッ
走り続ける男の馬の、更に先の木からも馬が出てきた。
「この野郎!!」
タタタタタタタタンッ!!
男はサトミの背に向けて銃を撃つ。
が、彼は瞬時に飛び上がり、弾を受けたのは追っていた男だった。
パッパパッパパッ 「ぐがあああ!!」
男が胸に銃弾を受け、苦悶の表情で胸を押さえる。
「この、ガキがらあぁぁぁ」
血を吐き馬からずり落ちながら、腰から銃を取り撃つ。
だが彼は回り込んで戻ってきたベンの背に降り立ち、その弾丸をサバイバルナイフで弾いた。
パンパンパンパン
キキキキン
「キシシシ!ベンよ、上出来じゃん!」
ベンが鼻高々と首を振り、落馬する男は、背後に転がっていく。
「行くぜ!ベン!」
視線の先の女へ向けて一直線に駆け抜ける。
最後に残った男が、その間も追いかけてきてアサルトライフルを撃ち続けていた。
タタタタタタタタンッ!!タタタンッ!
「クソッ!クソッ!当たれえええ!!」
疾走するベンの早さに、追いつかない。
カーーン!
その音は、サトミがナイフを叩く音。
男は最後にその音を聞いて絶命した。