第18話 砂糖砂糖砂糖シュガーーー!!

文字数 2,220文字

イライラがめっちゃキタッ!
砂糖だ、砂糖、砂糖が欲しい。砂糖砂糖砂糖砂糖砂糖砂糖砂糖っ!!

首のスカーフを上に上げ、顔を隠すサトミにキャミーが立ち上がる。

「気分、悪い?コーヒー入れるわ」

「気分は悪くないんだ。ちょっとごめん。」

立ち上がろうとするサトミに、めざといリッターがつぶやいた。

「ひでえ目つきだ。まるで殺し屋じゃん。」

ギクリとサトミが動揺した。
一般に出て、こんな事になるとは思わなかった。
こんな案件に鉢合わせるとは、想定外だ。

目を閉じて、うつむき片眼を隠す。
最近ふ抜けていたからまともに反動が来た。

「君、今、気持ちを表面に出さない、自分の過去を気取られないよう必死だ。
今、すっごいストレス感じてる。だろ?」

「うるさいな、お前らが質問攻めにするからだろ?」

「ククッ、そりゃ悪かったね。でも、今の君は、まるでヤマアラシだ。
そして、人をコントロールするのに慣れてる。
俺達が求めるのはチームワークなんだ、その自分一人ですべてを動かそうとする、そのクセを直さなきゃ、この普通の人々の中に溶け込めないよ。」

リッターが、ニッと笑って両足を抱え、サトミを小さく指差して言った。

この野郎、その透かした顔ブチ殴りてえっ!
そんなこと、言われなくてもわかってるさ、お前になにが出来たというんだ!
思わず口に出しそうになって飲み込んだ。

ストレスだ、こいつはさっきまで泣いてたくせに、半笑いでストレスかけて遊んでやがる。
クソッ、こらえろ、こいつ、こいつ、殴り飛ばしてえ!
砂糖、砂糖食わなきゃ殺っちまう!

「リッター、お前こそ悪いくせだ。人間観察はやめろ。」

この野郎、リーダーのくせに止めるのが遅いんだよっ!様子見てやがったな?
何だ、こいつらムカつく!限界だ!限界!

バッとサトミが立ち上がり、ズカズカ自分のロッカーに向かった。
バンッと開けて、中にみっちり積んだ砂糖とココアとアメの袋から、一番上の砂糖の袋を1つ取る。

「何このロッカーの中!え?お砂糖??」

2ポンド〈約900グラム〉入りの袋をひっくり返し、角に噛みつきバリッと破った。

ザアアアアアアアアアア

口開けて、袋から直で流し込む。

「えっ?!え?!ちょ、ちょっとおおお!!」

「ええええええ!!!」「ま、待てっ!こらっ!!」

口いっぱい砂糖を頬張ると、むしゅむしゅむしゅと口の中で何度か噛んで溶かして飲み込んだ。
すううううっと甘みが身体中を満たしていく。

ああああああ、いい……いいよ、これこれ〜〜〜

3人が俺を取り囲む中、ザアアアアアアッと流し込んで、むしゃむしゃ袋半分食べる。
はーーーー、一息ついて、残りをまたあとで食おうと丸めて直した。

「は〜〜、頭すっきりした。」

満面の笑みで振り返る。
さっきと雲泥の表情だ。

「何だ?こいつ、まるでビフォーアフターじゃねえ?」

リッターが不気味そうな顔でゲンナリして言った。

「お前な、砂糖一気食いなんて初めて見たぞ?」

「うん、気にしないでくれよ。これが俺の精神安定剤だから。」

「砂糖が??」

「砂糖とココアかな、俺が機嫌悪そうな時は甘い物くれ、それでだいたい治る。」

「お子様かよ……」

ヘッと馬鹿にするリッターに、ガッと指さした。

「お子様だよ!あんた!リッター?
あんた、その、人の気持ちえぐるような遊びはやめるんだな。
あんたこそ、自分の今のツラ見てみな!
一見キレイに見えて、見られたもんじゃネエほど醜悪だ!
何がチームワークだ、あんたのその態度はチームを壊す。
きれい事言いながら、あんたはまるでチームワークが何かわかってねえ!」

リッターが、キョロ見して顔を手で覆い、一歩引いた。

「悪い、悪かった。」

フンッ!と、サトミが息を吐き、踵を返す。
言いたいこと言って、清々した。

「じゃあ、今日は帰ってもいいよな。
ああ、そうだな、もう一つ思いつくこと教えてやらあ。
この犯人、敵をグチャグチャにしてやろうって素人の馬鹿野郎か、殺したいけど怖くて非力な奴のどっちかだ。じゃあな!」

「待て!明日ダンクと行くんだろう?明日、奴らに鉢合わせても手を出さないと約束しろ。
軍に要請している、掃討してくれるのを待とう。」

ガイドが慌ててサトミを止めた。

「ああ……うん、もちろんだよ!」

サトミがニッコリ笑って手を上げる。
ブンブンわざとらしく、顔を左右に振った。

「俺は今回見習いだぜ?ベアリング浴びたくないし、五体満足で帰りたいもん。
ダンクがこの場所回避するというなら従うよ。もちろん!」

「ああ、そうしてくれ。もう仲間から死人を出したくないんだ。
お前さんは軍で相当荒っぽくこき使われたんだろうが、もう一般人なんだ。
郵便を安全に、確実に宛先に届けるのが仕事だ。」

「わかってるよ、おっさん心配性だなあ。じゃあな!」

サトミが腕章をポンとたたき、アタッカーの装備一式を持ってドアを出る。

バタン、ガチャン!音を立てて、カギが閉まった。

「は〜〜〜」

大きく息を付き、肩をコキコキほぐす。
出ると同時にアメ玉を口に放り込んだ。

「うるせえ、クソ野郎。大人なんて、クソ野郎ばかりだ。」

サトミは、馬繋場へ向かいながら、なぜか暗い顔で笑っていた。

「外道の武器商人か。あのクソ野郎、在庫隠してやがったな。
商売から手を引くと、泣きながら言ってたくせによう。
やっぱり殺しておけば良かったんだ。ボスの知り合いなんてろくな奴はいない。」

そうすれば、少なくともあんな死に方はしなかった。

空はもう暗く、星がチラチラと瞬き始めている。
それでも、まだ空を見る気にならなかった。
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登場人物紹介

・サトミ・ブラッドリー

日系クォーター、15才。黒髪、ブラウンの瞳。短髪だがボサボサ。中肉低身長、禁句はちっこい、チビ。

使用武器、主に背の日本刀、鰐切(わにきり)雪雷(せつらい)

11才まで全盲。周囲にいる者を感知できる。

小柄でよくチビと言われるが、生まれつきか日本刀を振り回す為か人間離れした筋力を持つ。

入隊を条件に目の手術を受けたため、家族の顔を知らない。両親と妹がいた。


・ビッグベン

サトミの愛馬。栗毛くりげの馬。

ロバと間違えられるほど小型の馬だが、未知数の脚力を持つ。

盗賊の頭が乗っていたが、サトミに出会って彼を選ぶ。

なぜか人語をしゃべり、子供くらいの知恵がある。数字は100まで。

・ダンク・アンダーソン

18才、アタッカーの先輩。元少年兵。黒髪碧眼、一人暮らしも長く料理上手。

使用武器、ハンドガン2丁。馬の名はエリザベス。

・ガイド・レーン

30才。黒髪、無精ヒゲの最年長。妻子あり。

戦時中から最前線でポストアタッカーを続けた。

ロンド郵便局のポストアタッカー、リーダー。

使用武器、アサルトライフルM27。他国海兵隊仕様を横流しで手に入れて外観をカスタムしている。

・リッター・メイル

22才。金髪碧眼の白人。ポストアタッカー。

母親似で良く女に間違えられるのが悩み。

美麗な容姿と大きくかけ離れた粗野な性格で、大酒飲みでケンカっ早い。そして強い。

使用武器、ショットガンM590M ショックウェーブ。多様な弾を入れ換えて使用する。

・キャミー・ウィスコン

22才。赤毛のポニーテイル。

エクスプレスではガイドと二人、リーダー的存在。

人員不足からアタッカーをしていた。

・エジソン(カリン・ルー)

ロンド郵便局で配達局員専用に護身用武器を研究している。

メーカーに提供し、商品化で特許料を局の収入源の1つとしている。

元軍所属、嫌気が差して辞めた所を局長にスカウトされ、局の一部に部屋をもらった。

・カリヤ婆ちゃん

隣の婆ちゃん、一人暮らし。朗らか元気。

・ジン

21才。某隊長。死にたくない男。浅黒い肌に白髪と赤っぽいブラウンの瞳。

高身長、すらりとした体躯にモデルのような顔。だが、総隊長では無い。

・デッドエンド

23才。某副隊長。おかっぱ黒髪碧眼。中肉中背、爽やか青年。

趣味セックス。いつもニコニコ、微笑みにあふれた男。

・エンプティ

30代。本名 カラン・グレイル。白髪、ブルーの瞳。無表情。

サトミの強さに惹かれ、人生まで狂ってる男。

・地雷強盗の女

強盗を生業とする一団の、仲間の1人。アタッカーに仲間を殺され、逆恨みから生き残りの仲間と地雷強盗に見せかけたアタッカー殺しをもくろむ。

サトミの入局で、計画が大きく阻まれることになる。

・ジェイク

デリー本局のリーダー、古参アタッカー。戦中からアタッカーをやっている強者。面倒見のいい男。

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