第33話 友達の声って、いいよなあ
文字数 2,690文字
ロンドへの帰り、ポリスが機銃を回収しているのと出くわした。
ダンクが少し話して、死んでいたのは2人で地雷は見つからなかったらしい。
「もう一人いなかった?」
サトミが聞くと、ポリスがそう言えばと遺留品の袋から女物の時計を取り出す。
血だらけで、ベルトが壊れていた。
「女がいたのかもしれませんねえ。男が死んで逃げたんでしょう。
機銃もこれでダメになったし、これでこの件は落ち着くんじゃないんですかね?」
チラリとバレルの吹き飛んだ機銃見て、サトミがククッと笑う。
「だといいがな。誰が主犯か考えれば、終わってねえと思うぜ。」
「はあ?」
「サトミ!こっち来て協力しろ!事情聴取だってよ!」
「おう!」
サトミが手を上げてダンクの所に行く。
話していたポリスが袋を車に戻し、死体袋に目をやり舌打ちした。
毎回死体の片付けばかりでイヤになる。
「ガキが、テキトーなこと言いやがって。」
ダンクがデリーのリーダー、ジェイクにも説明しながら、ポリスの事情聴取にこたえる。
デリーのアタッカーはみんな尻込みして、結局ジェイクが来た。
こう言う強盗事件は、さして珍しくもないので聴取は簡単だ。
ポリスは現場検証と記録、死体回収が主な仕事で、被疑者死亡でだいたい片を付けたがる。
現場の状況とポストアタッカーの話に相違があると面倒だから、聞く内容は非常に簡単だ。
現場は危険地域がほとんどだし、遺体はだいたい仲間が回収し終わって、無いことが多い。
ダンクが話しながら、通った場所を指差して説明する。
3人がかりでトラックに運ぶ機関銃の残骸を見て、ダンクとジェイクが顔を合わせて話している。
ばつが悪くて目をそらしていると、二人が来てそれぞれポンと肩を叩いて馬へ戻った。
「まったく、すげえラッキーボーイだぜ、お前ってさ。
なんか、スコーンと入っちまったのかな?お前なんか打ち返してなかったっけ?」
「さあな、不具合だろ?」
簡単に返して、ベンに乗った。
ジェイクはひょいと肩を上げて、首を振り馬に乗る。
「ははっ!とんだ不具合だぜ、ざまあ。
ま、ロンドに行って話そうぜ!
えーっと、ちっこいのじゃなくて〜なんだっけ?」
「サトミだ!ちっこいの言うな!」
「ちっこいの?!お前デリーで、ちっこいのって呼ばれてんの?ギャハハハハ!」
馬鹿笑いして、ダンクが先を行く。
ジェイクが親指を立てたので、サトミはムスッとして親指を下に向けた。
ロンドに着くと、心配するみんなが出迎えてくれた。
ケガが無かったのでホッとして、ダンクがガイドやキャミー、局長たちに何があったかを報告する。
サトミが荷物を降ろすと、待っていたリッターが局分け3局分の配送に出た。
「めっちゃ遅れた、ごめん!」
「何言ってる!生きててよかったぜ!行ってくる!」
サトミの肩をポンとたたいて、凄い飛ばしていく。
午後の速達の個別配送は、話し合いするからと一般局員が出てくれることになった。
「サトミー!昼食べて話し合いするから!ジェイクもいるしね!」
「イエス!」
うっかり敬礼した。
あー、気持ちがワクワクしてるから。ヤバい。
「あはは!サトミ、軍人みたい。」
キャミーは気にせず、手を上げて奥に消えた。
俺は平和だった日常に命のやりとり再開して、ワクワクしている。
めっちゃマズい。俺は平和に暮らしたいんだけどなあ。
昼食食べたあと、局周りのリッター除く皆で話し合った。
ボロのソファーに並んで座り、ガイドが意見を聞く。
「俺はとにかく1日2便は死守したい。みんなどう思う?」
「ヤー」「ヤー、ヤー」「もちろん」
「よし、これが総意だ。ジェイクとさっき話した。
機銃は消えたが、まだ油断するのは早いってのが俺達の答えだ。
これからしばらく2人組で行く。
デリー側はアタッカーの人数多いから問題は?」
「ない、俺が説得する。」
「よし、こっちは人数少ないから、1日おきになる。
馬に無理のないスピードで頼む。
個別配送は一般が協力してくれる。」
「異議なし」「オッケー」
「よしっ!決まった!
明日からポストアタッカーは、早馬専門だ!
ダンク達は二人でも襲われた。気を抜かず、油断せずよろしく頼む。」
ガイドとジェイクが握手する。
ジェイクはその後、日が暮れる前に着きたいからと荷物積んで早々にデリーへと帰っていった。
「じゃあ、俺とリッター、ダンクとサトミで組んでオッケー?」
「いいぜ、な、サトミ。」
「うん、俺は構わない。」
「じゃ、明日から1日おきだ、体調万全によろしく頼む。」
「ケガがないようにお願いします!」
「おー!」
ガイドとキャミーの言葉に、ダンクが元気に拳を上げる。
どうしていいのかボーッと見てたら、右手つかまれて一緒に手を上げさせられた。
話し合い終わって、馬の世話終わると、デリーでちょろまかしたお菓子食う。
白いコーヒー作ってると、パーティションのドアが開いた。
「サトミー!荷物来てるよ!取りに来て、重いのー!」
「荷物??お母ちゃん……じゃないよなあ。」
「ないない、軍第一師団って。」
「は〜〜〜」
おええええ、なんだよ、やっぱりバレちまったじゃん。
まさかボスからじゃねえだろうなあ。
俺は受け取り断固拒否る!
荷受所に行くと、ポンと見た事のある箱が置いてある。
あれ?これ俺が注文してたスローイングナイフじゃん。あーこの字はあいつだ。
めっちゃクセのある字。あいつも文字は書けるか読めるか怪しい方だ。
「なんだ、あいつ送ってくれたのか……って、やっぱバレてるじゃん。」
「友達?商品代込みの着払いだから払ってよね!」
「げえ、あの野郎!このくらい払ってやれよ!くっそ、ケチくせえな!」
金払って、庭に出て箱を開ける。
よし、爆発物や毒物は無いようだ。
「あ、レコーダーじゃん!キシシシ、あいつがレコーダー??おもしれー」
レコーダー取って、ジャラジャラとナイフを全部出して確かめる。
キョロキョロ周り見て、誰もいない倉庫の角に行って地面に座り、いつも使ってたパスワード入れて再生押した。
ピッ
『 …… 』
「あれ?なんも入ってねえ?」
『 ……あ、あー、あれだ。なんだ、俺だ。』
「ぷーーーーーーっっ」
1人で腹抱えて笑った。
あいつがどんな顔で録音したんだ?
『 ……んー、見逃した業者、消えた。つか、消したし!
あと、ガキが地雷1つ残ってるってよ。何のことか俺知らねえけど。
あーー、そうそう、返事とかいらねえし。
下界に興味ねえ。じゃあな 』
ピー
「えー、たったこれだけかよ。もうちょっとなんか喋ろよ。ケチ。」
レコーダーの、デリートボタンに指を置く。
あいつの、これは初めての心遣いだと思う。
友達の声ってさ、やっぱいいよな。
「サンキュー、ジン。」
笑って、俺はデリートボタンを押した。